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友人と、楽しく過ごし、大喧嘩。

お友達の大木君(仮名)と夕方に会う約束をした。この後大喧嘩することになるとも知らずに・・・

午前10時起床。仕事の疲れが両足首にキているのを感じた。毎日12時間の立ち仕事。それに加えて両足に出ている痛風。痛風の薬(フェブリク錠)を飲んだ。最後の一粒だ。明日病院に行かなきゃ(行かない)。

午前11時、都営深木線に乗り縦粕周縁駅へ。乗車時間は1時間半の予定だ。特急がきた。電車は空いていた。なぜ空いているのか。それは都営地下鉄の運賃が高いからである。広々とした座席の端っこに腰掛け、リュックを抱え、顎を置いた。ノールックでリュックのファスナーを開け、持ってきていた小説を取り出した。長塚節(ながつかたかし)の長編小説、「土」だ。この小説は序文が夏目漱石によって書かれていることが大きなポイントである。ぼくは「土」を読もうとした。しかしその瞬間あまりの文字の多さに脳が情報をシャットアウトし、すぐ寝た。

12時半、縦粕周縁駅に到着した。まず目に入ったのはミスドだ。食べ放題1900円と書いてあった。心が躍った。心のハッピーキャットも音楽に合わせて踊っていた。入り口には行列ができていた。6秒後、冷静になった。1個150円のドーナッツを13個以上食べれなければ元が取れないではないか。それは無理だ。ぼくの胃は宇宙ではない。ミスドなんていつでも食える。ご当地の何かを食べねば。サブウェイやマクドなどのチェーン店しかない駅前を離れ、港を目指して歩いた。名物を求めて。

午後1時、広い敷地の中にある「港市場」という名前の倉庫風建物に着いた。海が見える。灰色の船も見えた。建物の中に入り、市場の中を一周した。四浦半島の鮮魚を使った寿司、陸軍ハンバーガー、ステーキ屋、スムージー屋、お土産屋などがあった。「カレーパン、揚げたてです!」の声に惹かれて、パン屋さんでカレーパンを購入した。外は暑いのでエアコンの効いたフードコートの席に座った。ジャズが流れていた。クロード・ウィリアムソンの「サボイでストンプ」だ。ビッグバンドの定番曲で、ぼくも演奏したことがある。サクサクの揚げたてカレーパンを食べた。持参した紅茶を飲んだ。屋外には誰も座っていないイスとテーブルがたくさん置かれていた。トンビかカモメか、大きい鳥たちが飛んでいた。

午後2時、はま寿司に入店した(なんでや)。ポテトフライを注文した。数分後、ポテトフライの到着に気が付かず、流れていってしまった。店員さんを呼び、ポテトフライを取り損ねてしまったことを謝罪した。流れていってしまったポテトフライを持ってきてくれることを期待していたが、店員さんは忙しく、持ってきてくれなかった。もう一度ポテトフライを注文し、今度は流れていかないようにちゃんとお皿を掴んだ。そのとき店員さんが来て、さっきのポテトフライを持ってきてくれた。テーブルの上にポテトフライが二皿並んだ。1時間半かけて寿司8皿とポテトフライ2皿を食べた。腹はギッチギチになった。会計は1650円だった(安すぎる)。外には学生や外国人の集団がいた。

午後3時半、血糖値スパイクの眠気、耳鳴りが来た。糖をたっぷり含んだあまーいあまーい血がドコドコドコドコ!と鼓膜を打つのを感じた。仮眠(ドカ食い気絶)しようと駅前のカラオケ屋に入店した。しかし、満席で断られてしまった。下の階のパチンコ屋の休憩所に行った。そこには、自販機、喫煙室、イス、机、コインロッカーそしてATMと、パチンコ中毒者に必要なものが露骨に一か所に集められていて面白かった。イスには白髪、土のような皮膚、曲がった骨を持つ中毒者たちがみんな一様にうなだれて座っていた。その人たちの間に割って入り、ぼくも座った。リュックを抱え「土」を読もうとして、速攻で寝た(30分間)。突然ハッとなり目が覚めた。目の前にトゲトゲ付き肩パッド&レガースを装着した覆面男性が立っており、ゆっくりと去っていった。世紀も末だなと思った。かなりドキドキした。ぼくは貴重品を確認した。貴重品は無事だった。

午後4時、友達の大木君から連絡が来た。会うのは7カ月ぶりだ。二人で会うのは初めてだ。待ち合わせの場所に向かおうとしたら雨が降ってきた。大木君は嵐を呼ぶ男だ。長身痩軀の大木君はさらに痩せていた。大木君は連れていきたい店があるといった。ぼくは嬉しかった。「でもその店5時からなんですよ~」と大木君は言った。ほなら、なぜ4時に待ち合わせなん?僕たちはカラオケ屋に行くことにした。

午後4時半から5時半ごろまで、ぼくと大木君はフタカラをした。大木君がバンプを歌う。ぼくもバンプを歌う。大木君が長渕を歌う。ぼくは「はいよろこんで」を歌う。大木君がシロップ16gを歌う。ぼくはサンボマスターを歌う。大木君はぼくの声は尾崎豊だという。ぼくは大木君の声はミスチルだという。お互いに褒め合う。ぼくたちは二人とも「陰鬱な俺カッケー」のマインドでここまでやってきたので、気が合う。

午後6時ごろ、大木君の行きつけの居酒屋へ行く。生ビールは売り切れだった。大木君はホッピー、ぼくはハイボールで乾杯した。今が旬まさに旬小栗旬として知られる茶豆、稚鮎の天ぷらと、旬とは関係ない定番のこんにゃくのから揚げ、クロソイ刺、水ナスと生ハムのやーつ、牛のやーつ、マグロのカマ、明太じゃがいもなどを食べつつ、赤ワイン、月山(島根のお酒)、夜明け前(長野のお酒)を少しづつ飲んだ。茶髪ロン毛のマスターはタバコを吸いながら料理をしていた。大木君は好きな人の話をした。大木君はいつも一人だから、ここの料理のすばらしさを他人と共有出来るのが嬉しいと喜んでいた。ぼくは季節の食材の茶豆、稚鮎が食べられて良かったなぁと思った。ちなみにぼくは下戸で大木君は酒豪だ。ぼくの飲み残しを飲み干し、ホッピーのナカを3回おかわりし、さらにウーロンハイを3杯飲んでいた。3時間滞在して、1万2千円だった(激安)。大木君がお花を摘みに行った隙にぼくが全額支払っていたので、戻った大木君はあわててお金を出そうとしたが、ぼくは「貧乏なんだから奢られとけや」と言った。マスターが笑いながら「ぼくもカツカツですよ~。自転車操業ですよ」と言った。

午後9時ごろ、再びカラオケに行った。ぼくたちはカラオケと居酒屋以外に娯楽を知らない。しかしカラオケ、居酒屋、カラオケという順番で遊ぶのは初めてだ。お互い、好きに歌うことにした。ミスチルの喉を持つ大木君がヒーローを歌っていた。歌い終わり「ぼくも誰かのヒーローになりたいよ」とつぶやいていた。ぼくはミックスナッツをキーを3つ下げて歌ったが、それでも高すぎて喉が持たなかった。3つ下げのオケは原曲の雰囲気を損なっており、仮に歌えてても微妙だろうと思った。「ぼくはもう、絶対ミックスナッツを歌えないんだ」と思うと悲しくなった。寿司づくりは才能が無くても鍛錬すれば向上するが、音楽は寿司と違って才能がなければ鍛錬しても向上しない。一時間半歌い、最後は歌うたいのバラッドを二人で歌った。大木君は「今度はぼくが払います」と言って、奢ってくれた。二人で写真を撮った。二人ともニコニコしていた。

午後11時、僕たちは解散した。別れ際握手をし、ぼくは「頑張ろうぜ」と言い、「あ、エレカシの俺たちの明日を歌っていない」と言った。大木君は「それエレカシじゃないですよ」と言った。ぼくは歌い足りなかった。また一緒にカラオケに行きたいと思った。大木君は歩いて帰るといった。ぼくは終電に乗り込んだ。「土」を少し読み、寝た。降りる駅の数駅手前で都合よく目が覚めた。スマホの充電は6%だった。楽しかったなぁ。そんな思いに浸りながら、家についた。大木君がツイキャスをしていた。「ぎゅってしてくれる?@酔い」というタイトルで。

深夜0時、泥酔した大木君は「だって好きなんだもん」「そういうこと」を連呼していた。1時間配信していた内容はよく覚えていないが、ざっくりいうとその大木君の好きな人(以後エビちゃんとする)からメッセージが来ていて、その返信をどうしようかというものだった。大木君、キミはぼくとお食事をしている時、スマホを確認したりしていてずっとそのことで浮かれていたんだね?

深夜1時、今度はぼくが30分配信をした。大木君とエビちゃんの関係は要約すると以下のとおりである。

・大木君はエビちゃんの著作物の3年来の大ファンである。
・3年前からファンレター(DM、コメント)を送っており、丁寧な返信がある。
・エビちゃんはファンのコメントには全て丁寧に返信する。
・大木君はネット上にあるエビちゃんの700近い著作には全て目を通している。
・お互い顔を知らないし、会ったことはない。
・大木君は関東、エビちゃんは九州に住んでいる。

ぼくは「酔った勢いで早まった返信をするな」と言った。リスナーの鉄肛門(仮名)さんは「まず早くLINEを聞いた方がいい」とコメントした。リスナーの周縁一撃(仮名)さんの「1人で盛り上がりすぎると失敗しますよ」のコメントに大木君が憤慨し「そんなもんしってるわ」と書き残し、離席した。数分後に戻った大木君は「(エビちゃんが自分のことを)そこまで好きになってくれるなんてありえない」などと投稿、周縁一撃さんは「じゃあやめとけ」とコメントした。

深夜2時、鉄肛門さんがスペースを開いた。ぼくはそのスペースに参加した。「最近奥さんとどうですか」など他愛もない話をした。鉄肛門さんはコロナ後遺症で喉が枯れていた。ほどなくして「ぼくは諦めなきゃいけないんですか!」とブチギレた大木君が入ってきた。「可能性が低いなら諦めなきゃいけないんですか!可能性が低いからって頑張っちゃいけないんですか!」怒鳴る大木君。ぼくたちは、自分を好きになってくれるなんてありえないと言いつつ女性を口説こうとするのはおかしいことを指摘した。大木君は「だってぼくは37年間、家でも学校でもずっとお前は馬鹿だって言われ続けてきたんですよ!自信が持てる訳ないじゃないですか!」と反論した。これに鉄肛門さんは激怒、大木君は大卒だろう、俺は高卒だ。大卒で馬鹿なら俺はどうなる。と。
どうやら大木君は少年時代から青年時代の長期間にわたり人からバカにされ続けたトラウマがあるため、最近になってネット上で容姿や性格を褒められても全く信用できず、自信が無いとのことだった。
自分だけが被害者と言わんばかりの論調にぼくはイライラしてしまい、秘密にしていた過去エピソードを話した。ぼくは今は髪は全部剃っているが、かなり強い天然パーマである。アフロと言ってもいい。ちなみに両親は二人とも直毛である。幼少期は無駄にイジメられた。チンゲと呼ばれるのが嫌で中高は坊主にした。大学時代は縮毛矯正をした。縮毛矯正をした髪の根元がうねってきたとき、抜け毛を拾った友達に「ステッキみたい笑」と馬鹿にされた。ぼくはみんなのことを直毛日本人共と心の中で呼び、差別した。友だちやお世話になった人に対しても「まあでもお前らは直毛日本人だからなぁ!」と平気で裏切ってきた。この話を聞いて鉄肛門さんの声のトーンが落ちた。「チンゲはかわいそう」「山科さんの方がチンゲだからキツイ」と言いはじめた。おいやめろ、チンゲを連呼するな。イジメられた過去の嫌な感情が噴き出した。もう3時になる。大木君は仕事があると言って落ちた。ぼくと鉄肛門も解散した。

朝8時、大木君から謝罪メールが来た。しばらくツイッターからは離れるそうだ。

自分ではどうしようもないことでイジメられるというのは全く無駄な経験だ。なんの糧にもならない。

でも男はみな多かれ少なかれ似たようなイジメの経験を持ち、どうにか克服して生きているのではないだろうか。

あんなに楽しく過ごしたのに最後に喧嘩になるとは。長い一日だった。



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