_企画メシ_公務の企画_ヤギワタルさんイラスト

目の前のだれかをちょっとだけ前向きに

企画メシの第三回は、公務の企画。国家公務員であり、よんなな会主催者の脇雅昭さんをゲスト講師にお迎えしました。

国家公務員として、神奈川県国際文化観光局観光部長と政策局知事室政策推進担当部長という非常になが〜い名称の役職を兼任しながらも、地方公務員が集まるよんなな会などを主催する脇さん。

自称ですが、日本で誰よりも飲みに行っている国家公務員。年に400回は飲みに行っているそうです。とてもパワフルで、いろんな人を巻き込むのが、とにかくうまい。それだけではなく、ないものではなく、あるものの価値の最大化を企てるために、いろんな課題を見つけ、把握し、解決するために、どの人たちをどう繋げればいいかをいつも考えている人でした。


後向きでも、前向きでも世の中は、なんとなく回っている。

ある県庁に行って、「これやろう!」と言うと、できない理由をA4用紙3枚ぐらいにまとめて、「できません!」と言われた経験をもつ、脇さん。「この時間あったらできただろうに!なんで前向きにやらないんだろう。」と思うことが何度もあったそうです。

しかし、ふとしたときに、「あれっ?こんな後ろ向きでも世の中はなんとなく回っている。だとしたら、目の前の人がちょっと前向きになったら、まだまだ世の中ってよくなるんじゃない?」と思える瞬間がやってきたんだそうです。そこから前向きな人でも、後ろ向きな人でも、みんなが愛おしくなってきたそうです。

そうすると、「なになに?できない理由3枚?じゃあそれを2枚にしようか!ちょっと前進した?」という風に捉え方を変えてみる。捉え方は、自分次第で変えることができて、世界の見え方も変わってくるという発見をしました。

最近では、課題を見つけると、「財産発見!これで、また仲間が増えるぞ!」と嬉しくなっちゃうんだそうです。なので課題を見たら、「いや、財産じゃん。」ってまず思っている。そうすると見えてくるなにかがあるという想いが脇さんの中にありました。


父「雅昭、俺は幼稚園に6,000円払う意味がわからないんだ。」

脇さんの話をするために、避けては通れない過去がありました。それは、幼稚園を中退したという事実。その幼少期の体験が、今の脇さんにつながるコアの部分を作っていました。

脇さんのお父さんは、商売人だったこともあり、「これにお金をかける価値があるのか?」と常に考える人でした。だから、脇さんの教育に関してもそう考えていたのです。5歳のある日、「オレは、幼稚園に6,000円払う価値がわからないんだ。それよりは、お前に6000円払ったほうがマシだと思っている。」といきなり宣告されたそうです。脇さんは、よく考えた結果、幼稚園をやめる決意を固め、実際にやめてしまいました。

そうすると、その日から世界が変わってくる。小学生も中学生もいない世界。突然、ひとりぼっちの世界がやってくる。そうすると、人を見たら、仲良くなろうといろんな人たちと話しに行き、「この人はこういうことに喜ぶんだ」とかここで合いの手打つんだとかをこのときに学び、それが今にも活きているんだそうです。人とのつながりかたとか、寂しさというエネルギーとかが全部プラスに変わってる原点になっているとのことでした。脇さんの前向きなパワーのコアな部分は、この原体験から生まれたのです。


行政の課題を元気玉の中心に据える

そんな脇さんは、公の課題は、もう絶対行政だけじゃ解決できないと言い切ります。そこには、こんな想いがありました。

昔の国家公務員の先輩たちも言葉を変え、やり方を変え、そのときの課題を解決しようとやってきました。今までは、行政だけでやってきたけど、せっかく人類史上最強に人と人が繋がりやすくなっている時代に生きてるからこそ、みんなで考えていきたいんです。

また、「助けてもらうことは、助けるのと同じくらい価値がある」という芳村嘉風さんの言葉を紹介してくれました。「助けて!」っていうといろんな人たちが集まってきてくれて、そこからみんなのやり甲斐も生まれてくる。特に、「誰かのための課題」には、たくさんの人のパワーを集められる可能性を持っている。公の課題をみんなのパワーを集めた元気玉で、解決していく。そんな仲間が各課題ごとに増えていったら、最高だと脇さんは語っていました。


最前線の声を聞けているか

その行政で働く公務員の人たちが普段どんな仕事をしているのかを教えてもらいました。国家公務員は、法律、条例、ルールなどをつくる仕事を担当しています。各府省庁で行政事務を担当しながら、その時代に合った仕組みを作ろうとしているのです。

その仕組みを作るときに、頭だけで考えるといいルールは作れない。なぜなら、ルールの良さは、実際にやっているプレーヤーが一番よくわかるものだから。国家公務員は、霞が関の色が付く前に地方に行って、地方から国を見るキャリアステップになっています。そのルールを実際に使うプレーヤを経験してから、ルールを作るようになるのです。

脇さんは、最初のキャリアとして熊本県庁へ。忙しかった中でも、現場のプレーヤーの人たちに無理やりにでも、会いに行き、一緒にご飯を食べて呑んでを繰り返したんだそうです。それが総務省に戻って、ルールをつくる立場になったときに、「今度こういう法律をつくろうとしてるんだけど、どう思う?」と聞ける関係になっている。組織だとすごくカチコチしちゃうけど、人と人とでつながっていれば、いい等身大の意見がでてくる。それこそが一番大事な部分だと感じたそうです。


目の前のひとりを笑顔にするために、できたよんなな会

脇さんご自身は、国から地方へ行き、最前線のプレイヤーたちとつながれた。では、その逆のパターンである地方から国へ来ている地方公務員の若手たちはどうなんだろう?とふと考えたそうです。

「国で修行して来い!」と送り出された地方公務員のエースたちは、現状だと言われた仕事を根性と気合いでやるしかない状況なんだそうです。だから、4月に来た人たちが希望に満ち溢れて笑顔だったのが、5月には忙殺されて笑顔がなくなってしまう。脇さんは、地方に行って、最前線の感覚を持って帰ってこれたけど、逆が全然できていないと実感しました。

戻ったら地方の中枢にいく地方公務員のエースたちがこのままではいけない。彼らに必要な力とは、「課題を見つける力」と「行政とそれ以外の人たちを巻き込んでいく力」がこれからの時代に、必要だと脇さんは考えました。国で修行しているだけでは、忙殺されるだけ。でも、東京という場所は、いろんな出会いがあるから、そういう力をつけようと思った時にやりやすい環境。「だったら、やろう。目の前のひとりを笑顔にしよう。」とはじめたのがよんなな会だったのです。


よんなな会は、ぼくたちのあそびば

よんなな会というのは、「だれかひとりがこれがいい!」と1万のパワーで動くより、1万人が1の力で、その周りの人の幸せを考えられる社会のほうががいいことができていく。だから、全国47都道府県の地方公務員の人たちの志と能力が1%上がったら、世の中むちゃくちゃよくなる。という考えのもと企画運営されています。だから、ただ単に参加するのではなく、みんながプレーヤーになる仕掛けを凝らしています。

たとえば、よんなな会で出す食事は、「一人一品地元のもので、みんなに食べて欲しいものを持ってきてください。」という参加ルールになっており、各参加者が持ってきたものを提供しています。会費を受け取って、ケータリングにするのは、簡単。しかし、そうではなく、よんなな会に来てくれた人全員にプレーヤーになってもらいたいからこそ、こういう仕掛けを作っているんだそうです。当日じぶんが持ってきたものには、特に愛着があるので、持ってきたものが食べられてないと一生懸命宣伝をしたり、その過程を通して地方から来てることを改めて体感してもらったり、単純に場があったまるなど、いい効果しかないそうです

また、よんなな会では、毎回新しい仕掛けを試しているんだそうです。例えば、ある会ではステージをいっぱい作って、いろんな人を登壇させてみる。人は30秒でも主役になると考え方が変わってくるので、スポットライトが当たると、「よんなな会に参加しました!」じゃなくて、「じぶんがそこでこれを話しました。」というプレーヤーになってくれる。

あとは、子育て中の人も来れるようにキッズスペースを用意したり、前泊できる合宿所つくったり、継続的に会える公務員というさまざまな企画を実行し、より多くの人を巻き込んで、周りの笑顔を増やせる仕掛けをあそびばのように自由に試しているんだそうです。


じぶん一人では、手の届かないところに、どう届けるか。

「熱量の高いコミュニティを持続させていくために、意識的に、心がけていることってありますか?」と脇さんに聞いたところ、「想いをずっと言う。」と「自分ひとりじゃやれないから、任せる。」だと教えてくれました。この答えにたどり着くために、こんな経験をしてきていました。

仕事がめちゃくちゃ忙しくなったときに、僕が「やる!」と言っていた企画を断念したことがあったんです。でも、そのときに、ぼくが「やる!」って言ったらやって、「やらない」って言ったらやらないというのは、ほんとに価値あるものかなと考えました。世の中に求められている価値あるものなら、ぼくがいなくてもやれないとダメだという結論にたどりついたんですよ。そこから、じぶん一人でやらなくなって、人に任せていきました。自分だけでは届かないところに、どう届けられる組織にするかを考え始めたんですよ。

それまで、よんなな会というブランドを一人で大事にしていたけど、世の中をほんとによくしたいなら、このよんなな会を使い倒してもらおう。と思った脇さんは、よんなな会を解放しました。その結果、よんななお坊さん会やよんなな医療会、よんなな家業会など様々な切り口のコミュニティができてきました。今後は、よんななフェスというできてきた様々なコミュニティをより一層巻き込んで、フェスを実施する予定とのことでした。以上、公務の企画でした。

この講義の中で、脇さんがポロっとおっしゃっていた「やるって重要なんですよ。とにかくやった人間が一番強い。」と言う言葉がとても印象に残っています。なにかをはじめる時は、たいていの人が反対をします。ラム肉専門店をはじめるときもそうでした。でも、とにかくやりはじめてみたら、徐々に見える世界が変わってきました。そんな自分の背中を押してもらえた気がします。引き続き、とにかく前向きに、やってみようと思います!


今回の表紙のイラストも、毎度お馴染みイラストレーターのヤギワタルさんです。今回は、ヤギさんが感じとった公務の企画のイメージをイラストにしてくれました。ヤギさんの作品はこちらから、ぜひ見てみてください↓↓↓
https://www.instagram.com/yagiwataru/


また、最近発売になった『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ふろむだ / ダイヤモンド社)にヤギさんのイラストがびっしり詰まっています。こちらもぜひ!僕も読みましたが、非常に面白かったし、タメになりそうです。成功する人は、この錯覚資産をうまく使って、さらに複利を効かせる。そして、実力を後から追いつかせる環境も、この錯覚資産があることで手に入ることができるんだそうです。錯覚資産をうまく使いたい。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!企画メシで、阿部さんや脇さん、企画メシ仲間たちからもらった熱量を、少しでもおすそ分けできてたら、嬉しいです。

いただいたサポートは、羊のロッヂメンバーやカレーのジュクでお世話になっているシェフたちに差し入れ代として大切に使わせていただきます!