『地域の創造性』読売新聞 文化欄連載コラム 2013年3月16日掲載


冬の間、主催するイベントも少なくなり、制作の仕事で家に籠る日が多くなる。
地域の人とも暫く会わなくなっていたので、「みんなで一品持ち寄って集まろう」と声をかけた。近くにある木造校舎に集まって、持ち寄ったこだわりの品を食べて飲んで、お喋りをして時間を共有する。そんな寄り合いに、農家、工芸作家、デザイナー等、いろいろな人が集まった。
私が持ってきた地産リンゴのワイン煮が、他の人が焼いてきたチーズケーキと合わせると絶妙な相性でとても美味しいと話が盛り上がった。楽しく過ごすうちに面白いアイデアや新商品のヒントが次々と生まれる。
地産ブランドの開発を仕事にしていることもあり、ヒット商品を作ることの難しさはよく知っている。険しい顔をつきあわせて会議室で話をしても良いアイデアはなかなか出てこない。でも、楽しくお喋りをしている時には、みんな積極的にアイデアを出す。地域のためにそんな場所を作りたいと考えていた。
数年前から言われている6次産業化(生産から加工、商品化、サービスを担うこと)は過疎高齢化が進む地方にとってはかなり難しい。ただ、最近はインフラ整備も整い、Uターン者も増えてきたので、地方にもクリエイティブ産業に携わってきた人材は少なくはない。こういう人材こそが、これからの地域づくりを担い、活力をあたえる貴重な存在となる。生産者と上手く繋ぐことが出来れば、魅力的な地域ブランドが生まれてくる。
特に地方には廃校や空き店舗が多く、行政の管理する施設にも活用されていないものが多い。このような場所を地域コミュニティやコワーキングスペースとして積極的に提供してもらうことで、地域を育てる手助けになる。もちろん素敵な場所だけではなく、そこには繋げる役目を担う人がいなければならない。その二つが揃ってこそ有意義なコミュニティが生まれるのだ。
今後の地域づくりにはクリエイティビティが大きな役目を担うだろう。

(読売新聞 2013年3月16日掲載) 文化欄連載エッセイ 山重徹夫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?