『村のマルシェ』読売新聞 文化欄連載コラム 2013年5月25日掲載
5月の連休に群馬県高山村にあるロックハート城で小さな野外フェスを開催した。
山間に作られたステージでは利根沼田に住む6歳から80歳までの述べ130名によるハワイアンフラが行われ、周りには連休を通して50店舗あまりのマルシェバザールが出店し、地域の農家による農産物直売や、作家による手作り品の販売も行われて賑わいを見せた。
群馬北部では過疎化などが問題視されているが、実際関わっていると地域に住む人達はそんな問題を感じさえないくらい元気だ。今回はとりわけ人気のあるハワイアンフラのステージを用意したが、他にもヒップホップ、フラメンコなどダンスを楽しむ人達が多い。
私は里山を背景にフラダンスを見ていると、古く農村地域で行われていた囃子田(お囃子にのせて行う田植行事)を思いだす。土地や水など自然に対する敬意や神様にささげるものとして、受け継がれた土地は違えども同じ存在なのかもしれない。この土地の人達には昔からそういう血が流れているのだろう。
この連休のイベントではフラの先生が企画段階からスタッフとなり、またマルシェに出店する花屋さんがステージに花を飾り付けるなど、多くの地域の人達に支えられ開催することが出来た。
お金をかけて業者に委託し、場所に関わりのないイベントをするよりは、地域の人達が自分たちの場所を作るという形が、自然と主催者と観客の境目を無くし、一体感のある継続的な場所をつくる要素になり得るのだと思う。
大型スーパーがないこの村に、大きなマルシェを定期開催しようと思う。それはどこでも買える量産品ではなく、ここに来ないと出会えない地域のものが並ぶ場所。他にも、この土地でしか学べないワークショップや、自然に包まれた里山体験など、山間地域で取り組めることは無数にある。
それを続けることが、今まで都会に向かっていた均一の価値観から、それぞれの風土が育んだ価値観に移り変わり、地域の自信が蘇るのだ。
(読売新聞 2013年5月25日掲載) 文化欄連載エッセイ 山重徹夫
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