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中之条ビエンナーレ2011開幕 上毛新聞 オピニオン視点 2011年8月11日連載

 いよいよ二年に一度のアートイベント「中之条ビエンナーレ」が始まる。
四万温泉でひとあし早く始まったプレオープンも順調なスタートで、作家の公開制作や一般参加企画など中之条ビエンナーレが出来る過程を見ることが出来る。
そんな準備の真っ只中に一番気にかけていること、それはこのイベントが終わった後のことだ。
まだ始まってもいないのに気が早いと思われるかもしれない。
イベントが終了してしまえば、インスタレーションなど殆どの作品は撤去され見ることも出来なくなる。その時にしか見れない作品のために、作家はなぜ仕事をするのだろう?アートイベントに関わる地域住民が一番不思議に思うことである。
お金にもならないことを汗水流してやる変わり者と、そう思っている人も少なくない。その中で、よくわからないけど面白そうだと好奇心を持って関わった人だけが、その精神性に触れ本質を知ることが出来る。
中之条ビエンナーレに足を運んだ際は、好奇心と想像力を持って作品と向き合ってみて欲しい。
わからないと思えばわからないし、知りたいと思えば知ることが出来る。
タイミングが合えば作品のそばに作家が居るかもしれない。そんなときは感じたことなど何でも話しかけてみてもらいたい。
作家は作品と対話し、鑑賞者と対話し、作家と鑑賞者の2者がいるから作品が成り立つ。作家が求めているものは「対話」なのだと思う。
前回と比べ、イベントを取り巻く環境として大きく変わった点は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が爆発的に普及したことだろう。単なる口コミメディアとしてではなく、作家や来場者同士が手軽に繫がることができ、リアルタイムにコミュニティが作れてしまう。私はアートイベントで「つながり」を作ることを最も大切にしているため、このSNSの普及には大きな可能性を感じている。
イベントをきっかけに住民や来場者、または作家同士が対話し、このイベントが終わった後に、どれだけの繋がりが残るのかが大切だ。イベントの規模や成果として来場者数が発表されるのが普通だが、このSNSの普及により繫がった数が成果として発表出来る日が来るかもしれない。
私はディレクターとして作家と築いてきた信頼関係をとても大切にしている。そしてこの仕事を始めて繋がった人数は計り知れない。全てが終わった後、この繋がりこそが最後に残るものだと考える。
イベントが大きくなるにつれ、多くの人が関わるようになり様々な思惑が混じり、目的を見失いそうになることがある。
そんなとき、私はいつもサンテグジュペリの「本当に大切なものは、目に見えない」という言葉を思い出すのだ。

(上毛新聞 2011年8月11日掲載予定) コラム視点 山重徹夫

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