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腰痛の原因が足にあった症例、施術の考え方、実際の施術部位

腰痛の症例紹介

少し前になりますが「The 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉」というトレイルランニングレースを走ってきたクライアントの施術を行いました。余談ですが、昔同じ野沢温泉エリアのトレイルランニングレースに出た時にスタート前に温泉に入ってから走ったらカラダがリラックスし過ぎて走りづらかったのを覚えています。温泉入るなら走った後がおすすめです。(当たり前ですが)

このクライアントは長く通っていただいているのもあってよほどじゃない限りケガ(急性疼痛のことを指す)や痛み(慢性疼痛)が出ることはほぼありません。ですが今回は珍しく腰痛が出たとのこと。
許可をいただいたので施術例として紹介します。

原因を探る

今回の症状は右腰の硬さ・違和感。施術前に以下の確認をします。

  • どんな動作で痛みや違和感があるのか

  • 痛みで動けないのか、違和感程度なのか

  • 関節の可動域。前後左右対象か?正常の可動域で動いているか?

  • 筋緊張や硬結(こり)の有無

  • レース前後含めた食生活、睡眠、仕事やストレス、練習量

  • なぜ右だけに症状があり、左には問題がないのか?

こんな感じ。大事なのは症状だけを追うのではなく生活全体を見ること。初めての方なら過去の怪我や病気など既往歴についても詳しくお尋ねします。過去起きた心身の問題は慢性症状に強く関連するからです。

今回、特に重要なのは「なんで右の腰だけダメージがあって左は大丈夫なのか?」という点。左右差があるということはカラダのどこかでその差を生じる問題が必ず起きているということ。偶然右だけ痛くなる、ということはありません。コンタクトスポーツなどで相手がぶつかってきて怪我をしたなどの理由があれば別ですが今回はそういった症例ではないのでしっかりと左右差が出た原因を探る必要があります。

腰が痛い時は腰が悪い?

腰痛の原因はどこにある?

右の腰に痛みがある=右腰の硬さがある

確かに間違いではないです。実際右の腰方形筋の筋緊張がありました。
ですが、じゃあ「なんで右腰の筋肉が硬くなるの?」という問いが出てきます。

何もしていない状態で急に右腰だけ硬くなる?そんなわけありません。他に原因があってその結果として右腰方形筋に負荷がかかり筋緊張が高まった、と考えるのが改善の第一歩です。

右腰の硬さは結果であって原因ではない

人間の構造上、不調のある部位の近くに何かしらの問題があることが多いです。近い部位ほど強く影響を与え合い補い合うからです。これを専門用語で『代償』と言います。

代償動作を改善していく有名なものが「リハビリ」

そうすることで一箇所問題が起きても近くの部位が代わりに筋緊張を高めることで姿勢や日常生活が送れるように「とりあえず」やり過ごすことができます。

「とりあえず」と書いたのはこの代償はあくまで応急処置だから。この応急処置の状態を放置すると段々と代償した部位にも負荷がかかり続け、次の部位に負担がかかってきます。
筋肉だけではなく、内臓や精神も含めた慢性的な不調の原因はほとんど「過度かつ長期的な代償」によるところが大きいです。

で、右腰の硬さからその上下を確認。肋骨の下部と骨盤です。

腰を挟んだ骨盤と下位肋骨の動きを確認
  • 肋骨下部の動きや骨盤の動きは正常か?

  • それぞれに付着する筋肉の緊張は正常か?

などと正常な状態から逸脱しているものを探します。「不自然を探す」と言っても良いですね。

カラダ(自然)の中の不自然を探す

今回は骨盤に付着する筋肉の一つ、梨状筋と中臀筋の硬さがありました。どちらも姿勢を支える重要なインナーマッスルです。

”WHY?”を繰り返す


このうち梨状筋と中臀筋の硬さがあった

実際、筋緊張があったのと股関節の内旋の可動域低下がありました。梨状筋の過緊張は内旋可動域の低下を招きます。

そしてもう一度。「梨状筋と中臀筋が硬くなる原因は?」

不調の原因究明とは”WHY(なぜ?)”を繰り返すことです。「なぜ?」を何度も繰り返してその「なぜ?」が出なくなるところ。そこが『原因』です。正確にいうとライフスタイルまで行き着いてしまうんですがその手前の身体のアンバランスという原因である程度は改善できます。
※アスリートの不調は筋肉や関節へのアプローチだけでほぼ改善できます。運動不足の方ほどライフスタイルの問題が潜んでいます。

WHY?を繰り返すことで原因が浮き彫りになってくる

骨盤から次の部位は下にいきます。骨盤から下の部位を分けるとこんな感じ。

  • 大腿(太もも)

  • 下腿(スネ、ふくらはぎ)

  • 足首

それぞれの可動域や筋緊張を確認していきます。以下略。

このクライアントの場合、最終的に足に行き着きました。結果はこう。

足の内側、土踏まず側の緊張から荷重が外側にずれており、外側縦アーチの低下が腰痛の大きな原因


足から腰へのダメージの流れ

土台である足のアンバランスがそのまま身体の上部の過緊張につながったパターンです。

足からくる問題いろいろ

足の外側荷重による問題はいろいろあります。

  • ランナー膝(腸脛靭帯炎)

  • 変形性膝関節症

  • O脚、X脚

  • 股関節の不安定感

  • 腰痛

  • 猫背

  • 首肩の不調(肩こり含む)

足だけを治せば全て治る!という訳でもありませんが上記の症状をお持ちの方で足の外側荷重になっている方は多いです。

足の詳しい話は拙著「ハダシのチカラ」をお読みください。

実際の施術

  1. 足裏、特に外側縦アーチをほぐす(原因)

  2. 中臀筋・梨状筋の硬結をほぐす(原因からくる影響)

  3. 腰方形筋をほぐす(主訴)

原因から順番にほぐしていく。それだけ。とてもシンプルです。

すごく単純なことなんですが、原因から一つ一つ積み上げるように改善していくと予後がいいんですよね。痛みの再発率がかなり低い。だって原因が解決されているんですからそこから悪くなりようがないんです。
もちろん日々の生活習慣にもよるので100%ではありません。

これを患部である右腰だけほぐしていたらどうなるか?一時的にはもちろん改善します。だって実際に痛みを引き起こしている腰方形筋が緩むのだから。しかし、その後はどうか?原因である足のアンバランスが改善していないので右腰への局所負担がかかり再発します。

当院でいわゆるクイックマッサージ的なことをしない理由はここ。
患部だけやっても本当の意味での「治る」には近づかないのを知っているのでやらないんです。僕自身がそういったクイックマッサージを求めていないですし。
やったところで本当の意味での健康に寄与すると思えないし、社会に絶対必要とも思わないのでやりません。(クイックなマッサージを求めている方は他院へどうぞ、多分当院だとご希望に添えないと思います)
唯一『フットケア』だけが例外。足はとにかくほぐせば調子が良くなる部位なのでどんな方でも対応できます。

木も見て森も見る

痛みや不調の改善をその場しのぎで行うことも時には重要です。スポーツの試合中の怪我や痛みに関してはその場で応急処置だけして強行で試合に出場させることもケースバイケースであります。

しかし、当院に来院される方はそんな急を要する症状の方は少なく、根本から解決が必要な方がほとんど。

今回は筋肉や関節など運動器へのアプローチだけで改善しましたが、人によっては栄養や生活習慣などライフスタイルへのアプローチが必要だったりします。(現代人の慢性不調はほとんどここに当てはまる)
※近日中、ライフスタイルへのアプローチをするサービスを始めます。乞うご期待。

症状という木を見て、その原因はどこかと森を見る。

どっちかではなくどっちも、です。

当たり前のようで意外とできていないことです。

症状も見て、人も見ること


今後もより良質な発信をしていくためのサポートをできる範囲でお願いします!