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MDGsとSDGs

新たな千年紀が幕開けした2001年、リオデジャネイロでの地球サミットから、ニューヨークでの国連ミレニアムサミットまでに採択された、主要な国際開発目標を統合した世界共通の枠組みとして「ミレニアム開発目標MDGs:Millennium Development Goals」がまとめられました。
ここでは2015年までに達成すべき8つのゴールと21のターゲット項目が掲げられ、193の国連加盟国すべてと23の国際機関がそれらの目標を達成することに合意しています。
 
目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
目標2:初等教育の完全普及の達成
目標3:ジェンダー平等推進と女性の地位向上
目標4:乳幼児死亡率の削減
目標5:妊産婦の健康の改善
目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
目標7:環境の持続可能性確保
目標8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
 
MDGsの達成期限を迎えた2015年、パン・ギムン国連事務総長は『The Millennium Development Goals Report 2015』を発表し、「極度の貧困をあと一世代でこの世からなくせるところまで来た」「MDGsは歴史上最も成功した貧困撲滅運動になった」とその成果を強調しました。
この報告書では、1990年時点では地球総人口の47%を占めていた、1日1.25ドル未満で生活する貧困者が、主に2000年以降に減少し、2015年には14%にまで減ったとしています。
一方においては、アフリカ・サハラ以南の地域では人口の41%が未だに極度の貧困状態にあり、また目標1以外についてはゴール未達成のものも多く、課題に十分対応できていないという評価もされました。
 
MDGsでは主に途上国の経済的開発に目が向けられており、環境汚染や気候変動についての対応が不十分であったため、結果的に地球的な環境問題に関しては、深刻さが増大することになりました。
また国単位でのマクロ指標をもとに評価しているため、それぞれの国内においての所得階層の動きについては省みられず、この15年間でむしろ経済格差は拡大しています。
そして何よりも国際機関や政府主導の取り組みであったため、個人としての参入がほとんどなされず、民間企業や市民一人ひとりの意識が変わることがなかったことが一番の問題点でした。
 
こうした問題点を踏まえた上で、ミレニアム開発目標が達成できなかったものを全うすることを目指し、その後の15年間の目標として立てられた行動計画が、
2015年9月ニューヨーク国連本部の「国連持続可能な開発サミット」で採択されました。
「Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development 我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。
この新アジェンダの前文では、「我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに決意している。我々はこの共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを誓う。」と力強く述べています。
そして全91項目にわたる宣言のなかで、17の持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)と169のターゲットを示しました。
 
目標1:あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
目標2:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標4:すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
目標5ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
目標6すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標7すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
目標8:包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標9:強靱なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
目標10:各国内及び各国間の不平等を是正する
目標11:包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市及び人間居住を実現する
目標12:持続可能な生産消費形態を確保する
目標13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
目標14:持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15:陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標16:持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17:持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
 
SDGsの目標はMDGsより包括的で、17の目標と169のターゲットは統合され不可分なものであるとされ、持続可能な開発の「社会」「経済」「環境」という三側面を調和させるものとして示されています。
策定プロセスも国連の専門家によるトップダウンではなく、各国の交渉によるボトムアップで挙げられたものです。
気候変動や環境保護に対して重点が置かれ、社会内部の不平等についての課題にも焦点が当てられており、公的機関だけでなく企業や個人に対しても行動を求めています。
わたしたち一人ひとりが自分ごととしてそれぞれの取り組みを行える、「誰一人取り残されない」社会的健康に向けた共通の目標が誕生したのです。

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