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そんなこと言い出したら...

僕の通っている大学は山の中にあり、たどり着くには長く険しい坂を上らなければならない。歩きは勿論のこと、自転車の方がなお辛い。坂あるある。

ある雨の日、僕は歩いて大学へ向かいその坂を上っていた。後ろからチャリで上ってくる人がいたが、坂が急で徐々に減速し、そのまま彼は徒歩の僕と並走する状況になった。

彼はペダルをこぎ続けている。ふと目をやると彼の太ももはパンパンだった。まるで贈答品のハムのよう。パンだかハムだか。そもそも、太ももの話である。ハムはもも肉。じゃあパンパンの太ももじゃなくてハムハムの太ももか。なんだこれ。頭がパンパンだよ。ほんまに弟子やったらパンパンやで。

頭の中をパンパンにしていると彼と目が合った。目が合っているものの、徒歩の僕と減速した自転車の彼が同じくらいのスピードのため、見つめ合う形となった。これは気まずい。見つめ合うと素直におしゃべりできない。あの桑田佳祐も言っている。何か話さなければ。

とりあえず「もうチャリ押して歩いたほうが楽じゃないですか?」と聞いた。
とりあえずの割には本題である。ハリウッドもビックリ、いきなりクライマックスかと思われた。

「そんなこと言い出したらキリないじゃないですか」と彼。
キリないってなんだ、押して歩くか漕ぎ続けるかの二択じゃないのか。キリあるだろ。キリはあっても答える義理(ギリ)はないってか!ハハッ(笑)

「キリないとかそういうことじゃなくない?チャリギャン漕ぎして歩きと同じスピードなの効率悪くない?」と僕。しょうもないダジャレに流されるところだったが何とか持ちこたえた。まだいける。

「効率とか言い出したら終わりよ、何が正しいかだけじゃないのよ、そんなこと言い出したら武田鉄矢の漢字の話とか、本当に正しいかどうかは怪しくない?」と彼。

そんなこと言い出すなよ。きっと正しいんだよ。なんか違うってなったときの方がこわいし。



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