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セピア色の思い出 1

「セピア色の思い出」

遠い遠い昔、幼いころの話。
微かな記憶だけのセピア色の思い出。
ただぼんやりと綴る。

そこは港の近くの東峰寮という名の家族寮。
その2階の一角の部屋に家族4人で住んで居た。


「窓下の路地」
昭和39年 日曜の朝。
小学生の私は 2階の窓から外をぼんやりと眺めていた。窓下の路地には居酒屋が並ぶ。昨夜の喧騒から、今朝は蝉の声に変わっている。スタンド京子という店の2階の窓、スリップ姿にくわえ煙草の女性と目が会った。その人は「チッ」っと唾を吐き捨て窓を閉めた。
木製のガラス窓は「カタンッ」と音がする。私はニコリともせずにその窓を見ていた。

「銭湯」
居酒屋街には港の船乗りが来る。私が通う銭湯にも、日焼けして頑丈そうな大人達がガヤガヤとやって来る。刺青姿の人もよく見かけた。その夜も風呂上がりにフルーツ牛乳を飲んだ。私はこの味が今でも忘れられない。

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