Time is Journey(2)

ミルクレープを頭に思い描くと思い出すのは、年縞である。年縞とは、福井県若狭町にある水月湖の湖底に眠る、縞模様に積層した湖底堆積物のことだ。その保存状態の良さから地質時代の時代特定の際のものさしとして世界的に有名である。地質時代のグリニッジ天文台という呼称からも、その重大さが伝わってくる。

年縞はミルクレープの一枚一枚よりも薄いだろう0.7mmである。堆積物の中には花粉、黄砂、落ち葉が含まれ、春夏秋冬が0.7mmの中におさまっている。それが10万年以上繰り返され、積み重なっている。

いっぽう、我々の人生の寿命はだいたい80年、年縞はたったの5.6mmしか積み重ならない、1cmにも満たないのだ。年縞の中に、自分が存在することはないが、自分にとって年縞は今、生きている今と過去をつなぐものだ。

実際に年縞博物館に足を運ぶと、歴史が年縞というフィジカルな物質に転換され、掘り起こされた数十メートルの年縞の長さとして時代を感じることができる。思い出すのは、『時間の言語学』だ。時間は抽象的であり、ほとんどがメタファーで表現される。年縞の長さで歴史という時間が表現されるのも、その一つなんだろう。

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