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孤独から考えるポストコロナの社会問題

安部敏樹『巻き込み型の事件が最近、増えているんじゃないか。例えば大阪の放火事件の話があったり大学入試の時に中部地方の進学校の学生がそのまま事件を起こしてしまったり。こうした事件の背景には心の孤独、不安があるのかもしれないし、今までやっている枠組みの中で捉えられていない部分があると思う。ただ、こういうテーマは成功者の方々にとっては具体像が中々、掴めない。まずは具体像が掴みやすい話からしていきたい』
川口加奈『私は大阪でホームレス支援をしてるんですけど、とはいえ皆さんが想像するような年配のおっちゃんというよりは今、平均年齢が48歳ということもあり20代30代が多いという現状があります。特徴としては、ほぼ児童養護施設か虐待を受けて育った家庭の子たちが大人になった時に虐待を受けていたが故に精神疾患があったり仕事が長続きしない。中卒高卒という中でずっと非正規雇用を転々とされている。その切れ目の中で特にコロナで相談者数が1.5倍に増えたんですけど、コロナで新しい層が貧困状態に陥ったというより貧困の裾野が広がったイメージを持っていて、その裾野が広がった中で困窮状態に陥った若者が増えています。多いケースは母子家庭で虐待を受けて10代で児童養護施設に入りました。正直、勉強したってどうなるかも分からないし高卒で働くことを選んだ。児童養護施設からの紹介で働くようになった1社目ですぐに上手くいかないとかブラック企業だったとかで半年で辞めてしまう。そこからひたすら転々と職を変え続けてネットカフェ生活を送っている。若しくは寮付き派遣に行っている。そういう中でどこかの切れ目で仕事を失った時に頼れる家族はいないし、特に困窮者支援って子どもたちの世代はまだ色んな支援があったり小中学校の目がある訳です。ただ、大人になった時にそれらはバッサリ無くなる。日本って家族という世帯を中心とした制度が基本で、家族からの支えが前提として制度があるという部分と申請主義。でも、その子たちはどうすれば生活保護を申請できるかを知らないし、役所の窓口に行ったとしても「君はまだ若いんだから働けるでしょ」と言われてしまう。でも、うつ病を患っているから働くことが難しいみたいな方が多い印象です』
安部敏樹『非正規雇用の方はたくさんいらっしゃる訳です。つまり幼少期の経験を除くと大人になってから非正規だったりとか会社が合わなかったということが多いと思うんですけど、とはいえ結局のところ最後の最後に川口さんの所に流れ着いてくる方々っていうのがどちらかと言うと社会的養護の庇護の下にあった。本来、そういうサポートが必要な人たちだったというのは何か理由があると思いますか?』
川口加奈『そこに理由があるかどうかというより私たちは結果的に困窮状態に陥ったという所からが支援のスタート。そして本人がどうにかしたいと思って来られてからがスタートなので、そこに共通項がどこかっていうのが出てこないぐらい皆さんのバックグラウンドが様々なんです。普通の20代30代が家も仕事も失った時、普通は家族に頼れるんです。実家に帰ることができるんです。私たちの所に来られる方々はそれができない。18歳20歳の所で支援が1回、切れてしまう。でも大人になったんだから大丈夫でしょ、と解き放たれてしまう。そこに難しさを感じています』
安部敏樹「なるほど。家族というバッファが基本的には、これまでの社会制度にしても制度以外の当たり前の部分においても何かあったら家族に頼るというのが最初の動きだという前提で色んなものが設計されている、と。しかし実際には、家族がいない、家族とのコミュニケーションが取れない人たちがかなりいて、彼らが川口さんの所にやって来たりすることが多いという話ですね。

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