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LJL2021春決勝 3つの見どころポイント

ということで今年も決勝まで来てしまったLJL、世界大会中止の昨年と違い「アイスランド」で世界の強豪と戦う機会が得られるこの決勝、いくつかのポイントや因縁もあったりするので、そこらへんを(自分が思い出すため)ざっとまとめていきたい。マッチアップとか真面目なのは他の人に任せます。

1.ラスト"Kazu"Dance(予定)

LJLを黎明期より支えてきた現DFMの名サポートKazu。DFMから一度出た後はScarz、V3といった「昇格チーム」に安定をもたらし、そして近年はDFMでコーチ業に専念、と思った中で2021春、緊急復活。その成績は数値だけ並べてみるとブランクを感じざるを得ない一方、数年ぶりのプロシーンでなんやかんやでチームを「リーグ優勝」に導くだけの腕はまだまだ健在だと知らしめた。ただ、大体の人間が分かっている通り、今期のKazuの復帰はあくまで「スクランブル復帰」になる。

LJLの規定で基本的に海外からの助っ人は「2名まで」となっているが、LJLに4年程度出場(※諸説あり)すると、「日本在住者扱い」となり助っ人枠を使わなくて済む。今期のKazuは、DFMが「韓国人助っ人Steal」の「在住者扱い」までの残り1シーズンを待ちながら、日本有数の助っ人韓国人「Geang」を手放さず、そしてこれまた日本有数の助っ人韓国人「Aria」のFAを取り逃さないために、半ば強引に復帰させた、と見ることが出来る。実際にDFMはLJLでは珍しい「韓国人3人体制」でレギュラーシーズンを戦い、そのほとんどで、Geangをベンチに置き、Kazuをスターターにしていた。

ただ、21夏、例年通りであればStealは「日本在住枠」を獲得できる。すると、助っ人Stealを使いながら助っ人Geangも助っ人Ariaも出場させることが可能になる。そうなるとKazuをわざわざ使うメリットは薄いわけで、彼はおそらくコーチに戻る、という可能性が非常に高い。そしてGeangも近い将来「日本人枠」を獲得することになる。となればなおのことKazuの出番はないだろう。つまり長年スターターを張り、引退や復帰を繰り返してきたKazuのプレイがプロシーンで見られる日本最後の試合が明日になると思われる。明日DFMが優勝した場合、アイルランドでのMSIがラストだと思われる。ぜひ優勝インタビューで
「かずーた、引退がのびたな」
「泣かすなよ、問題児の癖に」
といったやり取りが見たいところであったりもする。

2.真価が問われる”DFMのトッティ”Ceros

Kazuの引退はおそらく既定路線だと思われる。なんなら昨年までやっていたわけで元鞘に収まるだけなのだから。今DFMには非常に評価の高いYangコーチがいるが、DFMほどの財力ならば、Kazuひとり余計にコーチに置くくらい難しいことではないし、現にOnairコーチが韓国から来た時にもKazuを含めて2コーチ制で戦っていた。それにバックヤードの人間が増える分には決して悪いことではないだろう。世界大会を視野に入れているDFMなら特に。

で、Kazuのときに書いたDFMの「海外選手枠」問題。これが夏にStealが「日本人枠」となることで解消の目途が立っている一方、非常に不透明になっているのが”皇帝”Cerosの扱いになる。背も高くイケメン、筋トレを続けており締まった体に、マスコミ対応では(個人配信が噓のように)プロとして100点の受け答えが出来、そのうえモニターとの距離を定規で測ったりといった「eスポーツ選手っぽいイジリしろ」まであるeスポーツ業界では珍しい”各チームが喉から手が出るほど欲しい”人材。ファンからの人気も高く、つい最近始まったMeijiとのキャンペーンでも、試合は実質サブなのにほぼ中央に立っていたり、Youtubeでは「ソロキュー」がコンテンツにまでなっている「DFM、ひいてはDetonationの顔」そして「海外から見た日本の選手の代表」といった感のあるそのCerosのプロプレイヤーとしての今後、これが非常に不透明ではないか、と思われるといったところで。

サッカーや野球では1球団に殉じるプレイヤーというのはリスペクトされる感がある。例えばローマのトッティ、バロンドール候補に3回選ばれ、2006ワールドカップは怪我の影響がありながらも全試合出場し優勝に貢献、オールスターチームにも選ばれた”ローマの王子様”は1993から2017、プロデビューから引退までローマ一筋でプロ人生を全うした。日本プロ野球ではもっと珍しくもないわけで王長嶋、その他幾らでも例がある。ただ、この手の「チームの顔」ともいえる選手たちが毎度悩むのが「引き際」になる。スパッとやめれば「まだやれたのに」となるし、かといって引退を伸ばして「晩節を汚した」と言われる選手もいる。近年だとミスターヤクルト古田捕手がその例だろうか。昭和の時代に時々あったが、現代プロ野球では難しいとされた「選手権監督」で「代打!俺!」という珍しい場面で盛り上げたりはしたものの、晩年の成績は、監督業とのハードな二刀流のためか若いころの「打てるキャッチャー」の面影すら残っていない感があった。Jリーグなどでは「中村俊輔」のようにミスターマリノス、といった感のある立場を捨てて新天地を探したり、その他J3やそれくらいまでランクを落としてでも「死に場所」を探すかのようにサッカーを続ける元代表選手などもいる。要は「長すぎる在籍」は次の行動が非常に難しい、ということであり、それはeスポーツでも同じではないか、といった話で。

ファンにもDFMにも梅崎オーナーにも本人にも一番「丸い」選択肢は、「Ariaと対の存在」としてサブながら存在感を出してもらう、といったところだろうか。もちろん「実力でAriaの位置を奪う」というのもアリだが、日本助っ人史上最強の可能性まであるAriaから、というのは基本的に難しい話で。幸い独自のプールを持ち、それが国際大会で刺さりまくって今までも国際大会で活躍してきたCerosなのだから「左の代打」や「ワンポイントのアンダースロー」的な、スーパーサブ的な位置に収まってくれるのがきっと恐らく考え得る限りでのベストチョイスだと思われる。ただそのためには「代打」としての結果も求められる。サブから今季初出場の試合ではブランクのためか存在感を示せず、次に出た2試合では上々の動きを披露してきた。派手さはないもののCerosの近年のDFMのスタイルはMIDガンプッシュでEviとYutaponが火力を出す、といった感じであり、Cerosの数字がそこまで伸びていないのは問題ではなかったりする。ただ結果としては贔屓目に見て「上々」といったところで、Ariaを降ろしてまで、というほどの結果は出なかった感がある。このプレーオフ決勝、そして国際戦、契約が残ってると思われる夏くらいまではDFMCerosが見られるかもしれないが、貰えるチャンスはおそらく多くないと思われる。俺が監督ならこの決勝、1試合はCerosを試したいと思う。できれば1-0か2-0、2-1でもいい。なぜか、「MSI」で使う理由を作りたいから。国際戦で強いといえ、レギュラーシーズン3試合の選手を数少ない国際戦で使ったらアレかもしれない。できればAriaが頑張って2勝、そこで疲れて1敗、くらいのところで出せればベストかなと。

Detonationは梅崎氏も元プレイヤーで、色々順調だしでなんやかんや仲間に優しいところがある気がする。どこぞのボンボンが流行りに乗ってみました、とは一線を画すというか。そういう意味でCerosの今後も「きっと悪いようにはしないだろう」という安心感がある一方、そのおかげで難しい部分もあると思われる。ともあれ今後、DFMに残るか、あるいは死に場所求めて移籍を考えるのかは定かではないが、日本のLOLシーンを牽引してきたCerosのプレーが見られる残り少ない機会かもしれないわけで、ファンのみんなはディスプレイの前で「Ceros出せ~」と念でも送りましょう。

3.因縁のDragonコーチ、因縁の”決勝”で。

昨年までのV3と今期のV3の違い、もちろんスターターなどいくらかあるが、ここで注目したいのがV3のDragonコーチになる。オールドLJLファンなら記憶にあるかもしれない。このDragonコーチ、以前DFMに在籍していたことがある。2016から2017春までの3期。そしてそのころDFMはリーグ戦で我が世の春といった具合に優勝し続けた。一方、2016春は勝ったものの、2016夏、そして2017春とリーグ2位のRanpageに決勝で連続敗戦し、契約の都合があったのかは定かではないものの、決勝敗北という最後の記録を残して一度LJLから去っている。

そのDragonコーチ、その後BattleComicsというチームをLCK2部から1部に上げ(一部では名称変更しSBに)、その後約1年のブランクを経てV3に舞い戻った、という経緯になる。コーチとしてはなかなかえぐい経歴と言ってもいいのではないだろうか。

ただ当時、決勝でRanpageによりにもよって0-3負けし、そのRanpageがその後のMSIでボロ負けし、そしてコーチの変わったリフトライバルズでDFMが好調だったことから、当時Dragon株は日本では不当に落とされていた感がある。そんなコーチが4年の時を経て、兵役前の最後の忘れ物として「打倒DFM」と立ちはだかるというのは、なんともドラマチックではないだろうか。今期のV3はプレーオフ苦しみながらも徐々に調子を上げていき、前評判の高かったRJも倒してのこの決勝進出。特に今回のRJ戦、序盤のトリッキーなJGの仕掛けにもちろんDragonコーチが一枚嚙んでいると思われるし、今回RJに3-0で勝ったのも「策士」としてかなりの力添えがあったと思われる。

シーンから不当な評価を受け日本を去ったコーチが、本場LCKで2部から1部へ駆け上がり、そしてかつてのチームの前に決勝で立ちはだかる。もちろん今日のRJ戦での「仕掛け」は対DFM戦の「布石」も兼ねているはず。おそらくDragonコーチにとって普段より「負けたくない」試合なのは確かだろう。

そんなプライドファイトが水面下で行われている、「2017春決勝0-3」が明日の試合に繋がっている、と見るとまた少し深みが出てくるのではないだろうか。ちなみに余談だが、その2017春決勝、自分はRPG側最前列で見ていました。あまりに早く終わってしまい「この後オフ会しよー」的な観客の皆さんを尻目に、ぼっちの自分は半泣きで自転車を漕いで御徒町に帰ったのを覚えています。

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