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逃亡

分かってた。
ただ、君が羨ましかった、いっそ妬ましく思っていた。
強く、強く憧れていた。
君は暗闇に光るただ一点の、この身を引き裂くような、それはそれは強い光だった。

君の身にナイフを突き立てて心臓と脳みそでも喰らえば少しは君に近付けるのだろうかと、いつも君を殺す夢を見た。
君の根幹を奪って私のものにしたかった。
私は君になりたかった。
絶望を知りながら、絶望を知るからこそ光り続けられる君が、君

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自分の心を抱きしめる

自分の心を抱きしめる

私が、心を壊さないために、崩れかけた心を優しくすくい上げて大切に抱きしめるために、ただそれだけのために書いたもの達。
歌をイメージしたり、祈るような気持ちだったり、ただ眠るような心地だったり、色んな感覚の中で書いているから、統一性は無いと思う。

自分とは関連性がない創作の話ばかりだけど、確かに自分を大切にするために、自分の心を抱きしめるために書いたもの。
こういうのはベッターに置くようにしている

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ホットミルク

牛乳をマグに半分、電子レンジで50度
ティースプーンに蜂蜜を絡めて白色へ沈める。
カラカラと軽い音、優しい香りがゆっくり肺を満たしていく。
テーブルにはスマホスタンド、イヤホンが絡まないように設置してコール画面をタップした。
「おはよう」と言っても返事が無く、珍しいなと思っていれば何やらパタパタと音がして、「こんばんは、ごめんトースト取ってくるからちょっと待って」と言うとまた音が離れていった。

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夏の日

人が倒れていたらしい。
対岸で本を読んでいたくせに目だけそっちを見て、なんだか人が集まっているな、程度の認識だった。
うるさいサイレンの音でやっと本を閉じて見れば救急隊員が道具鞄や担架を抱えて通るので、どうやら人が倒れているらしいと分かった。
人が集まりだしたのはもうしばらく前だったと思うが、その間もその人はずっと倒れていたんだろうか、

野次馬のつもりで救急隊員の後ろについて橋へ上がり、隊員が先

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雪に、焦がれている。
音を吸い込み、世界を静寂に包む。
空気から気温と埃を吸い取って消えていく。
雪が降る世界は静寂と美しさを作り出す。
そこは私にとって、世界で唯一の居場所のように思った。

世界が停止する、そんな世界でのみ、私の存在は許される気がする。
それはただ一つ、呼吸がしやすいというそれだけでしかないが、たったそれだけが世界という巨大なものにこのちっぽけな存在を許されたかのように錯覚する

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彼岸花の下

美しい桜の下には死体が埋まっているらしい。
美しい君は美しい桜の下を選ばないで、彼岸花の下で醜く息絶えることを選んだ。

君は彼岸花の毒だけで死ぬのは無理だと知っていたんだろう、すぐ傍に「毒!!」と付箋が貼られたガラス容器があった。
君は毒を持つ植物を知るのが大好きだったので自作したのかもしれない。

そしてその毒の後に彼岸花を食べた。
きっと食べきれずに苦しんで死んだのだろう、口から零れ、力無く

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