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ショートショート 宇宙戦艦

「ビッグバン砲、発射!!」

ドーン

我が戦艦、スペースダイアモンドは並の船ではない。
なんせ宇宙戦艦だ。
なんでも、地球が宇宙人によって支配された為、安住の地を探すために造られたとか、なんとか…。
詳しい事は覚えていない。
何しろ、私は自分が艦長に指名されてからというものの、興奮のあまり会議の時の記憶が途切れ途切れになってしまったからだ。

「艦長!一体なぜ!」
「どうしてビッグバン砲を撃ったんですか!」

「……」
ギロリ

「う…。」
「艦長の事だ、何か深いお考えがあってのことだろう。」

そして、この船にはビッグバン砲なるものが搭載されている。
簡単に説明すると、デカいビームが出せるよという事だ。
コイツがなぁ、便利でな。

「そうだ、艦長って航海歴長いんだよな?
…多分、長年の勘か何かでこの先に障害物がある事がわかったんだよ!」
「なるほど!それがとても大きいから、やむなく撃ったのか!」
「そうか、なるほど!」

「……」

正直な話をすると、私は別に航海歴が特に長い訳でもない。
3ヶ月…長くても半年くらいしか宇宙で過ごした経験はない。
障害物とかあったのかな?
そこまで気が回らなかった。多分撃たなくても大丈夫だっただろう、きっと。

「……」

私がビッグバン砲を撃つ理由。
それは、艦長としての威厳を保つためだ。

「…いえ、私の調査によりますと、この先100kmは障害物に遭遇する可能性は低いかと」
「なんだって?」
「じゃあどうしてビッグバン砲を」
「…これは私の考えですが、おそらく今のは艦長のミスではないか」

「ビッグバン砲、発射!!」

ドーン

「うわ!」
「ま、またかよ!」
「…一体なんですか…ちょっと、艦長!
か、艦長…」

「……」
ギロリ

「ヒ、ヒィッ!!
…ごほん、私の考えは浅はかだったようですね。
艦長がミスなどする訳ない」

ふぅー。
あぶないあぶない、黙らせてやった。
艦長は舐められたら終わりなんだ。
ましてや航海キャリアのない艦長だってバレたら、それこそ不味い。
宇宙空間に放り出されるかもしれん、それこそ本当に終わりだ。
ビッグバン砲を発射できるのは艦長だけだ。
だからたまにこうやって発射して、艦長の存在感を示している。
なぁ?ビッグバン砲、便利だろ。

「ちょっと、これどういう事よ」
「いや、誤解なんだって…たまたま連絡してただけでさ」
「ねぇアンタさぁ、浮気してるでしょ?
何か私に隠してるわよね」
「いやだから違くて…」

最近、あの2人付き合い始めたんだよなぁ。
あぁ〜、この狭い空間で喧嘩とかまじやめろよ。
聞いてるこっちがストレス溜まるよ〜。

「ちゃんと話を聞けって!いい加減にしろ!」
「もう無理!アンタとはやっていけない!」

あぁー、もう限界。

「ビッグバン砲、発射!!」

ドーン

「うわ!」
「きゃっ!」
「いきなりなんだよ…艦長、どうしたん…」

「……」
ギロリ

「な、何でもありません!」

「職務に戻りたまえ」
「は、はい!」

スタスタスタスタ
「さっきはごめんね…」
「いえ、私の方こそ貴方の話を聞かず、ごめんなさい…」


あぁ〜、これ、ビッグバン砲便利だなぁ。

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