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春のメス猪のこと。

これまでレシピブログとして書いてきましたが、今月からは時々、お肉のことや日々考えていることも書いていこうかとおもいます。

1.春のメス猪がおいしいわけ

少しジビエを知っている方なら、猪肉の旬は冬、と思われている方が大半だと思います。脂ののった個体がたくさん獲れる、という意味ではその通りです。でも肉質で見ると、春のメス猪もしっかり脂がのって、格別のおいしさです。これ↓は先日入荷したバラと外モモのスライス。こういう状態のがだいたい6月までとれます。

ではなぜ「メス」なのでしょうか。

猪は、年末あたりから繁殖期に入ります。その後オスは、メスを探すのに必死になって痩せていきます。一方メスは交尾の後、初夏の出産に備えて栄養を蓄えていきます。魚でも、産卵する直前のメスは脂がのっておいしいですよね。春のメス猪に脂がのるのもそういう事情です。

2.被害があるから駆除がある

一方この時期、人間社会は、趣味の猟師さんや、昔から季節の味として獲物を販売してきた職業猟師さんによる「狩猟」の季節が終わり、農林業被害に対する「駆除」のシーズンに切り替わります。この担い手は被害を受けている農家さんや、駆除に協力する猟師さんです。3月下旬から初秋までの9か月ほどの間の猪の捕獲はすべて駆除によるものですが、駆除は、被害がなければされることがありません。

「何も妊娠中のメスを殺めなくても」と思われる方があるかもしれません。でも猪は、一回の出産で4~5頭も産みます。家畜と違い、野生動物は去勢することができません。被害を防ぐためには、生まれてしまって増えた後より、生まれる前の捕獲が大切なのです。

甘くて深い味の春のメス。被害がなければ味わえることもなかった味。当店としては、いつか駆除する必要がなくなる日までご提供しつづけられればと思っています。

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