書評『きみの声をとどけたい』は心に響く!青春と成長が詰まった物語の魅力とは?

なぜ『きみの声をとどけたい』はおすすめ?

石川学の『きみの声をとどけたい』は、海辺の小さな町を舞台にした感動的な青春物語です。
物語の中心にあるのは、ミニFMというラジオ局を通じて友情や成長を描く高校生たちの物語。
誰もが持つ「自分の声を届けたい」という願望に共感でき、登場人物たちの成長や絆に心を動かされることでしょう。

この物語の魅力は、多くの青春小説と同様に、友情や自分探しといったテーマに焦点を当てている点です。
しかし、本書が特別なのは、ラジオという少し古風で温かみのあるメディアを通じて、それを描いているところです。
ラジオは、現代の若者にとって馴染みが薄いかもしれませんが、その一方で、言葉や声が持つ力を改めて考えさせてくれます。
声だけで思いを伝えることの難しさ、逆に声だからこそ伝わる微妙な感情。読者は、主人公たちがラジオを通じて成長していく過程を追うことで、自分自身のコミュニケーションの在り方についても考えさせられるでしょう


物語のあらすじは?

物語は、海辺の町・日ノ坂町を舞台にしています。
主人公のなぎさは、ある日、偶然にも閉店した喫茶店「アクアマリン」の中で見つけたミニFMラジオ局の機材を発見します。
なぎさはその機材を使って、友人たちとともにラジオ番組を始めることに決めます。
このミニFM局「アクアマリン」は、彼女たちにとっての「声を届ける」手段であり、同時に自分たちの存在や思いを表現する場でもあります。

なぎさの仲間には、幼なじみでスポーツ万能なかえでや、お菓子つくりが得意な雫といった個性豊かなキャラクターたちが登場します。
それぞれが悩みや葛藤を抱えつつ、ラジオを通じて自分たちの思いを発信し、聴いている人々との心の交流を築いていきます。
ラジオという手段を通じて、彼女たちがどのように成長し、周囲との関係を深めていくのかが物語の重要なテーマとなっています。

このラジオ局を通じて、主人公たちはさまざまな課題に直面します。
彼女たちは、ただ放送をするだけでなく、自分の気持ちを正直に言葉にすることの難しさ、そしてそれをリスナーに伝えるための工夫を学んでいくのです。
さらに、ラジオを通じて繋がる不思議な縁や、思いがけない人々との交流も描かれており、それが物語をより一層魅力的なものにしています​


ラジオを通じて何が描かれているの?

『きみの声をとどけたい』で大きな役割を果たすのは「ラジオ」というメディアです。
ラジオは、スマートフォンやSNSが当たり前になった現代では、少し古臭いものと感じるかもしれません。
しかし、だからこそ本書では、ラジオを通じたコミュニケーションの価値が改めて浮き彫りにされます。声だけで思いを伝えるラジオは、文字だけでやり取りするSNSとは違い、その場の感情やニュアンスがよりダイレクトに伝わる手段です。

なぎさたちが選んだこの「声を届ける」という手段は、彼女たちの心の変化や成長を象徴しています。
声だけで自分の気持ちを伝えることで、彼女たちは自身の中にある感情を再確認し、時にはそれをリスナーに伝え切れないもどかしさに悩むこともあります。
しかし、その過程を通じて、彼女たちは自分の言葉に責任を持ち、相手に「届く」コミュニケーションを学んでいくのです。ラジオというシンプルな手段だからこそ、彼女たちの成長がより鮮明に描かれているのだと思います


また、ラジオを通じて広がる人々との交流や繋がりも、本書の重要な要素です。
なぎさたちは、自分たちの番組を聴いてくれるリスナーがいることで、初めて自分たちの存在や思いが認められることに気づきます。
その過程で、彼女たちは友情や家族の絆、そして他者との共感の大切さを学んでいくのです。
このラジオの放送を通じて、登場人物たちがどのように成長し、変わっていくのかが、この物語の大きな見どころの一つです。

なぜこの本が中学生におすすめなの?

本書は、特に中学生から高校生の読者に強くおすすめしたい作品です。理由の一つは、登場人物たちが直面する悩みや葛藤が、まさにこの年代の読者に共感されやすいものだからです。
友達関係や自己表現の難しさ、家族との関わり方など、多くのティーンエイジャーが抱える問題がリアルに描かれており、読者自身が登場人物たちと同じように悩み、成長していく姿に共感できることでしょう。

さらに、ラジオを通じて自分たちの思いを発信するという設定は、SNSや動画投稿サイトに慣れ親しんでいる現代の若者にとっても新鮮なテーマです。ラジオというメディアを通して、彼女たちが感じる「声を届ける」ことの難しさや喜びを共有することで、読者もまた、自分自身の声やメッセージをどう発信するべきか考えるきっかけになるでしょう


この物語を通じて、若者たちは「自分の声を届けること」の重要性や責任を学び、成長していきます。
それは、日常の中での自己表現やコミュニケーションにも通じるテーマです。
読者がこの本を通して、自分自身を表現することの大切さを学び、周囲とのコミュニケーションに対する意識を高めることができると感じました。

どんなメッセージが込められているの?

『きみの声をとどけたい』には、主人公たちがラジオを通して学んでいく「自分の声を相手に届ける」という強いメッセージが込められています。私たちは日常的に言葉や声を使ってコミュニケーションをしていますが、その一方で、本当に相手に届くメッセージを伝えることは意外と難しいものです。
特にSNSやメールのようなテキストベースのコミュニケーションが主流の現代では、その難しさがより一層感じられるのではないでしょうか。

なぎさたちも、ラジオという手段を通じて自分の声を届けようとしますが、最初は思うようにいかないことも多いです。
自分の気持ちを言葉にすること、そしてそれを相手に正しく伝えることの難しさに直面しながら、彼女たちは徐々に成長していきます。
この過程を通じて、登場人物たちは「声を届けること」の意味を理解し、相手の気持ちを考えるようになっていきます。

読者にとっても、この「声を届けること」のテーマは非常に重要であり、共感できる部分です。
私たちは日常の中で、つい自己中心的に発言してしまうこともありますが、この物語を通して、相手の立場や気持ちを考え、丁寧にコミュニケーションを取ることの大切さを改めて感じさせられます。

また、「声を届ける」という行為は、自己表現の一環でもあります。自分が何を思っているのか、どんな意見を持っているのかを伝えることは、他者と繋がるための重要な手段です。
主人公たちは、ラジオを通じて自分たちの声を届けることで、リスナーと心を通わせ、共感を得る喜びを感じます。
このプロセスは、現代の私たちが感じる自己表現の難しさや、共感を得ることの大切さを再確認させてくれます。特に中学生や高校生にとって、この「声を届ける」というテーマは、自分自身を表現することに対する勇気を与えてくれるものです


まとめ:心温まるストーリーに感動!

『きみの声をとどけたい』は、青春の中での友情や成長、自己表現の大切さを描いた心温まるストーリーです。
海辺の小さな町を舞台に、ラジオという古風なメディアを通して高校生たちが成長していく姿が、読者の心に響きます。
石川学が描くキャラクターたちは、等身大の悩みや葛藤を抱えながら、自分の声を相手に届けることに奮闘します。

この物語は、読者に「自分の声を届けること」の大切さを教えてくれます。特に現代の若者にとって、SNSやテキストコミュニケーションが主流の中で、ラジオというシンプルな手段を通じて「声」の持つ力を再発見できるのは、とても新鮮な体験となるでしょう。
読者は、主人公たちと共に成長し、ラジオを通じて築かれる絆や心の交流に感動すること間違いありません。

この本は、青春の輝きと共に、自分の声を信じて発信する勇気を与えてくれます。
10代の読者だけでなく、大人もまた、忘れかけていた「声を届けること」の喜びや、その重要性を感じることができるでしょう。
ぜひ、この心温まる物語を手に取り、なぎさたちと一緒に「声を届ける」旅に出てみてください


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