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2021年7月の記事一覧
私の好きな短歌、その17
代田(しろた)掻く親にすがりて牛の仔(こ)の無理無体にし乳のまむとす
吉植庄亮、歌集『開墾』より(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p72)。
ユーモラスな歌だ。親牛が代を掻かされている最中にもかかわらず、無理やり仔牛が乳を飲もうとしている。「無理無体にし」がいい。仔牛の、ともかく乳が飲みたいという力強さが伝わってくる。分かりやすいが、将来、水田に牛を使っていたことを知らない人ばかりにな
私の好きな短歌、その18
一日(ひとひ)にて別るる吾子(あこ)のほころびを著(き)たるままにてつくろひやれり
三ヶ島佳子、歌集『三ヶ島葭子歌集』より(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p76)。
作者が肺病であるために、作者と離されて夫の実家で暮らしている子と一日だけ会ったのである。上二句が、置かれた状況を簡潔に表している。服を着たままで繕っている母子の睦まじい姿が、夕刻の空を背にした影絵のように浮かんでくる。別