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サプライズ義両親(2023.07.07)

夕方、仕事から帰ると駐車場にイレギュラーな車が停まっている。

妻が幼稚園のお迎えに行ってくれたので、私は職場から直接自宅へ帰ったのだが、その見慣れた車が停まっているのを見て、弛緩し切っていた意識が再び少し緊張する。

「げ、じぃじとばぁばが来てる」

義両親はたまにこれがある。サプライズだかなんだか知らないが、連絡もなしに唐突にいらっしゃるのだ。可愛い孫をびっくりさせようという意図であろうが、私や妻は予定が狂うので、少し「んがぐぐ・・!」となる。あれだ、今はやってないが、昔サザエさんが次回予告でやってたような、あんな感じだ。(詳しくは以下の動画で)

家へ入ると動物にもみくちゃにされるムツゴロウさんが如く孫に囲まれてご満悦な義両親。私はきちんと「こんばんは!お世話になります!」とできる営業マンみたいに挨拶する。しかし義両親にとっての孫、すなわち私の子供たちはまるで知らない人が部屋に入ってきたみたいに、私には一瞥もくれない。見ようともしない。そらいいよ。義両親は君らが何しでかそうが一切怒らないんだから。無限に優しいんだから。

そして義両親が持ってきたお菓子でもってお菓子パーティーに興じる我が長女と次男。彼らは今まさに幸福の絶頂にあった。瞳孔がなんかいつもより大きくなっているようで、多分何等かの脳内物質が分泌されているであろう事は想像に難くない。

義父、義母、そして長女、次男が占拠するソファ付近は時空が歪んで見えた。明らかにそこだけ重力と気圧が違っていた。私や妻はというと、そんなピースフルな雰囲気とは無縁で殺伐として、頭の中でいかにこの想定外の事態を収束させるかを考え、とにかく今出来る事をやろう必死になっていた。

そんな妻、よせば良いのに今更後戻りできなかったのであろうか、懸命にしお焼きそばを作っていた。しかしそんな妻の頑張りをよそにお菓子パーティーに夢中な長女、そして次男。

「そげお菓子食べたらご飯はいらんやねぇか(訳:そんなにお菓子食べたらご飯が食べれないんじゃないの?)」という義父。「いやいや、その大量のお菓子を今この夕飯前に持ってきたのは他ならぬお父さんお母さんあなた方ではないですか」とは言えぬ私。「あんたらがそのお菓子もってきたんやないかーい!」と陽気にツッこむことさえできない。

突如降って湧いたじぃじばぁばの来訪とお菓子パーティーに我を忘れる長女と次男。しかし長男はいつものペースを崩さない。「水の中のいきもの迷路」みたいな本を一人黙々と読んでいる。さすが我が息子と言うしかない。おまえにはまた本を買ってやろう。

しかし義父と義母、しっかりお土産を持ってきてくださっており、先日その美味しさに舌鼓を打ったアジフライや、新鮮な刺身(2パックも!)、ナスやキュウリの野菜、そして子供たちにとって必要不可欠な牛乳を6パックも持参して頂き、私はもはやぐうの音も出ない。ようこそ我が家へお越し頂き誠にありがとうございます!

しかも刺身には今回いつものカンパチのみならず、マグロの赤身が入っていた。このマグロの赤身が赤身特有の匂いが全然なく、まるでトロのごとく下の上で柔らかくとろけるようで得も言われぬ美味であった。本当すみませんお父さんお母さん。

そんな義両親に原価50円足らずのしお焼きそばとなんちゃっておでんを「余りそうだから」という理由で強引に食べさせる妻。もう暗くなるから帰るっつってんのに、目的のためなら少しくらいの犠牲も厭わないのか、妻。

そうしたすったもんだの末、ようやく帰って行った義両親。冷蔵庫の中には食べきれなかった刺身と大量の牛乳、そして野菜やお菓子が残されていた。

思いがけぬサプライズに上機嫌な子供たち。その後も眠るまで概ね機嫌が良かった。恐るべしじぃじとばぁばである。

本当言うと、「よっしゃ!それじゃこれからじぃじとばぁばの家にみんな来るか!」っつって子供ら全員連れて行ってくれれば良いのにといつも思う。もしそれが叶うなら8年ぶりくらいに妻と二人で焼き鳥屋とかに行きたいと思うが、それはまたいつかの夢だなぁ。


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