靴を洗う(2023.12.04)
土曜の朝はたいてい子供らの上履きなどを洗うのだが、その時間が良い。
なぜなら、堂々と子供たちや妻が巻き起こす喧騒から距離を取って、黙々と靴を洗っていられるからだ。
妻も子供も俄然寝巻のままやっつけの朝ごはんを食べ、Eテレのアニメをはしごして、自由の翼を思い切り羽ばたかせ、縦横無尽に遊ぶ。騒ぐ。飛び回る。微笑ましい反面、やっぱりうるさい。
だから、私は私に与えられた仕事の一つである「靴洗い」を大義名分として洗面所に逃げ、靴を洗う。ちょっとチルみたいな音楽をかけて、一人で優雅にチルったりして。
しかも上履きというのは洗うと目に見えて汚れが落ち、どんどん白くなっていくので気持ちが良い。頭の中に残った眠気とかアルコールとか余計なものが靴の汚れと一緒に綺麗さっぱり消えていくような気がする。
私は静かなのが好きで、うるさいのが苦手だ。
今日寝かしつけの際、長男が連続的に鼻をかみ、長女が何かしらの苦情を言い、次男が「ウルトラマンはー!?ウルトラマンはー!?」とそれぞれにうるさかったので、「三者三様にうるせぇな!」と私は言った。三者三様にうるさいと私は思って、嫌になったのだ。
ああ、静かな今。本当に心地良い。ずっと前、九州の九重というところに登山に行った時、物音も風音も全くない、完全に無音という状態があった。あれはとても貴重な体験だった。日常には完全に無音などという状態はまずない。無音というのはきわめて非日常的な代物なのだ。
いつかまた誰もいないところで音のない世界を体験したいと思う。