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女ボス猿、ヤケイ(2023.04.05)

仕事が今日は休みだった妻。
まだ春休み中の長男を連れて、かの有名な高崎山に行ったそうだ。

高崎山は広大な猿の山だ。猿は檻に入れられているわけではけっしてなく、猿の生活の場へ人間がお邪魔するというスタイルだ。猿を手が届く距離で観察する事が出来て、股の間を猿がくぐり抜けて行くこともある。

あくまで猿の住処なので人間の方でも注意が必要で、食べ物など持っていようものなら一瞬で猿に奪われるし、猿の目をじっと見つめていると攻撃される事もある。まるで昔のヤンキーみたいだ。

かつて高崎山には「ベンツ」をいう伝説のボス猿がいた。私はこのベンツがすごく好きで、下手な人間なんかよりリスペクトしている。

そもそも猿なのにwikipediaに単独で項目があるというのが驚きだが、それほどベンツは猿界において伝説的存在なのだ。

ベンツは史上唯一2つの群れのボスとなった。また、一度失踪して復帰後、再びボスとして迎え入れられたという高いカリスマ性を誇っている。

そしてベンツには、たった一頭で200頭の猿を打ち負かしたという漫画みたいな武勇伝があり、その最期もまた失踪し、二度と現れなかったというミステリアスな部分も持ち合わせている。まさにレジェンドと言うに相応しい。

このベンツが姿を完全に消してから10年。今や世界にその名を轟かせるボス猿がいる。それが「ヤケイ」だ。

ヤケイは高崎山の、いや、猿界における史上初めての「女ボス猿」である。

このヤケイ、ものすごく攻撃的で上昇志向が強い。上記の記事にこんな記述があるのでご紹介したい。

21年4月ごろ、第4位のオスザルにヤケイが襲いかかりました。結果、第4位のオスザルが敗れたのですが、我々飼育員はそれで終わると思って見ていました。そうすると、瞬く間に第3位を襲ってねじ伏せ、その後、第2位にも襲いかかり、最終的には第1位にも攻撃を仕掛けました。上位のオスザル4頭がすべてヤケイから攻撃を受け、負けました。

 結果、この4頭のオスザルらがヤケイをトップとして認めることとなりました。5位以下のオスザルは襲われていませんが、自分たちの先輩が認めているため後輩たちは誰も文句が言えない状況になったのです。

メスザルが640頭のトップに君臨する「高崎山の変」(日経ビジネス)

ヤケイの激しい気質がよくわかる記述だ。猿界でも女性の社会進出が進んでいると言えるかもしれない。


さて、今日妻と長男は高崎山へ猿を見に行って、運良くこのヤケイを間近で見る事が出来たらしい。飼育員さんのヤケイに関するエピソードもいくつか披露されたとのこと。かなり印象的なエピソードがあったので、以下にご紹介する。

1.子ザルをボコボコにする
餌付けが行われているエサ場では定期的に餌が撒かれる。それで餌がこのヤケイの眼前に落ちた。それをたまたま近くにいた子ザルが取って食べたところ、これに激高したヤケイが子ザルをボコボコにしたらしい。

2.年老いたボス猿をボコボコにする
上記の子ザルがボコられるのを見かねた当時のボス猿。人間で言うところの100歳を超えており、だいぶご高齢であった。にもかかわらず身を呈して子ザルを庇ったところ、ヤケイはこのボス猿をもボコボコにして、結果、群れのボス猿となった。
(ちなみにこの歴史的瞬間に丁度カメラを回していた飼育員さん。一部始終が終わってから録画のボタンを押してなかった事に気づいたそうで、その事を今でも後悔しているらしい)

という、倫理もコンプラも秩序もへったくれもないヤケイ。毎度エサ場へやってくると場がピリッと凍り付くらしい。暴力と恐怖で猿たちを支配しているまさに独裁者だ。

しかしこのヤケイ、すごく恋多き猿のようで、流した浮名は数知れず、数々のオス猿とくっついては別れを繰り返している。その模様がテレビやyoutubeで取り上げられておりヤケイのまた違った一面が見れて面白い。

ちなみにこのヤケイ、娘がいるらしい。そしてこの娘というのが、虎の威を借る狐ならぬ、ヤケイの威を借る猿で、たいした実力もないのに周りの猿に威張り散らしているらしく、親の七光り状態だそう。人間にも似たようなのがたくさんいるよなぁと思う。


この先果たして下剋上はあるのか。ヤケイの恋の行方は?興味は尽きない。

私もたまには高崎山に足を運んでヤケイの御姿を拝んでみたいと思う。

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