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ZINE 通じて出会う

2022年7月24日(日)10:30~14:00にZINEフェスティバルが山梨県立文学館で開催されます。山梨県立大学国際政策学部の大村ゼミを中心に学生の作ったZINEが展示されます。無料で持ち帰ることも可能です。ぜひ、イベントにお越しください。

また特設展「文芸雑誌からZINEへ」(2022年7月16日〜8月28日)では昨年のZINEフェスティバルの様子も紹介されています。

こちらは昨年のZINEフェスティバルの様子を紹介した学生のエッセイ(『トート』第2巻第3号より)になります。ZINEとは何だろう?と興味のある方は、ぜひご覧ください。

皆さんはZINEというものをご存じだろうか。ZINEとは作者の思いがつづられた簡易的な雑誌のようなもので、テーマは自由に決められ、作成方法も使う紙も自由だ。とにかく自由に自分が表現したいことが詰まったもの、それがZINEである。2021年12月4日、私は山梨県立文学館のZINEフェスティバルに山梨県立大学から参加した。ZINEフェスティバルは文学館を訪れた人に自分のZINEを配布し、ZINEというものに少しでも興味を持ってもらうという趣旨で開催された。
 文学館2階のロビー、暖かい光が差し込むその場所に個性的なセーターを着た私たちは集まり、準備に入る。「個性的なセーター?」と疑問に思った方もいるだろう。当日のドレスコードは「個性的なセーター」であった。ナンバーワンに輝いた個性的なセーターは、バービー人形とツリーが縫い付けられたセーターである。前年のクリスマスに作ったというどこにも売っていない完全ハンドメイドのセーターだ。写真を一緒に撮影してほしいととても人気で、いろいろな人に囲まれていた。そのほかにもエルモやピノキオといったキャラクターのセーターなども見られた。ZINEの配布会が始まる前から会場は和気あいあいとした雰囲気だった。このロビーには配布用ZINEやタイの大学から送られてきた展示用のZINE、そしてワークショップの参加者が作成したZINEの他、ブックスタグラムという、みんなの好きな本、おすすめの本とともに撮影したチェキが飾られていた。紹介されている本は学術書から小説、漫画などいろいろあり、私も面白い本をたくさん発見した。個性的なのはセーターだけでなく、各自が作成したZINEもとても個性的であった。小説やライフスタイル、コレクションや食べ物などジャンルは様々で約20種類ほどが並んだ。自分で小説を書いた方や、自身のイラストを紹介する方もいて、それぞれの特技や思いが垣間見える作品となっていた。ちなみに私は日ごろからカフェに行くことが好きという理由から、山梨県のカフェを題材にしたZINEを作成した。自分が実際に行っておいしかった、おしゃれだったおすすめのカフェを掲載している。そのZINEの名は「#カフェ活」。写真も自分が実際に撮影したもので、おすすめポイントも書いてある。山梨ならではの桃などのフルーツをまるごと使用したパフェが人気の夏季にしか営業されないカフェ、「桃農家カフェ ラぺスカ」やおいしいオムライスが有名なお店の「こくりや」。さらにはビーガン専門のカフェである「nakamise café-pot.」など山梨には魅力的なカフェがある。幸いこのZINEはたくさんの方に手に取っていただき、好評の声もいただいた。友人にも写真の撮り方を褒めてもらえて、自分の自信へとつながった。他にもとても魅力的なZINEはたくさんあり、なかでも「食べ物」ブースに飾られていたZINEを紹介していきたい。
 「食べ物」のブースには山梨のカフェ、中学校時代の給食、アイスクリームといった計4つのZINEが並べられていた。4つとも表紙から気になるものばかりである。アイスクリームのZINEでは7つのアイスクリームのイラストと、それぞれのアイスは何味なのかが描かれていた。説明書きが一切なく、読者は名前と形で好みを発見していく。個人的においしそうだと思ったものは、スイカ味のアイスである。真っ赤なアイスの内部にはチョコチップ、さらにワッフルコーンが描かれ、視覚的に味覚を刺激する。あのアイスの記憶は帰るときまで消えず、実際この日帰りにアイスを買って帰った。スイカ味のアイスが食べたかったが、季節の関係で売っていなかったため、ワッフルコーンのついたソフトクリームを選んだ。私と同じく山梨のカフェを紹介している方もいた。彼女はおすすめのカフェを6軒紹介していたのだが、何よりも驚いたのは、すべて手書きであったことだ。すべてのお店のロゴや、メニューなどとても丁寧に描かれており、配色も完璧だった。各カフェの特徴やおすすめメニューを紹介していた。当日彼女に話しかけてみたところ、彼女の一番のおすすめは、昭和町にある「タノカンダ珈琲」だという。私はそこには一度も訪れたことがない。「タノカンダ珈琲」は米農家が営んでいるらしく、看板メニューの米粉のたい焼きは特に絶品だという。たい焼きが大好きな私にとって、行かない理由はない。他にもおすすめのカフェを聞けばよかったと後悔するほど、お店の選択がとても好みであった。次にすべてのZINEの中で個人的に一番面白いと感じたものは、「給食の思い出」である。このZINEは作者が中学生のときに出た印象的な給食を6つ、レアと、美味度の5段階評価で紹介し、最後には番外編としてあまりおいしくなかった給食一つが紹介されている。王道のカレーはもちろん、給食ならではの牛乳などが紹介されていた。私が一番気になったメニューはキムタクご飯である。読者の皆さんはご存じだろうか、某男性俳優は全く関係ないのだという。キムチとたくあんが混ぜられたご飯で、旨味と酸味が絶妙にマッチしているのだという。私の出身地域では出たことがない気がする。一度は食べてみたかったなあ、と思う。また番外編も面白かった。みなさんは「シンデレラサラダ」を聞いたことはあるだろうか。サラダの中にみかんが入っているらしい。作者によればシンデレラサラダの味はだれも褒めないという。どんなものなのか非常に興味がわく。ここまで食べ物のZINEの話をしてきたが、この通り、面白いものばかりとおわかりいただけたと思う。ほかのブースでも面白いものや綺麗なものなどがあった。
 今回参加したのは山梨県立大学の在学生だけでなく、現在他県に住む卒業生も参加した。今回初めて他学年のゼミ生と顔を合わせてみて、実際に短時間話してみてもこの人はどういう人なのかは、印象でしか残らない。しかし、ZINEをみると何に興味があるのか、この人はどんな人なのかがもう少しわかった気がする。冒頭で述べたが、ZINEは形式が何も定まっていない。そのため、その人の人となりが自然に表れる。私は食べ物のZINEを作った人とZINEについて話すことで、少し仲良くなれた気がする。このように、ZINEを通じ、共通の趣味や関心、人となりがわかり、人との新しい関係性が作られていった。今回のZINEフェスティバルはこの目的も実はあったのではないだろうか、と勝手に解釈してしまった。それほど、ZINEという作品には魅力がたくさん詰まっているのだ。実際にこの記事を読んでくれた人にも自分の好きなジャンルで、好きなスタイルでZINEを作ってもらいたい。自分の趣味や好きなものに手で触れ、冊子として共有できるのだ。この記事を通して少しでもZINEに興味をわいてくれたらうれしい。

文・写真:久保田 智史(国際政策学部国際コミュニケーション学科3年)