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「そこで何がしたいの?」ではなく「なぜ、そこなのか?」  笹本環境オフィス 幡野寛人さん


どうも、こんにちは。山梨移住計画の山村です。移住計画メンバーの自己紹介的記事が一回りしたところで、私も移住経験者へのインタビューを記事にしていこうと思います。

私がコアメンバーとして所属しているプランニング会社DEPOTは、<studio pellet>というシェアオフィスに拠点を構えています。その<studio pellet>を運営している【笹本環境オフィス】で働く幡野寛人さんも山梨移住の経験者。今回は、幡野寛人さんの移住ストーリーとここでの働きぶりをご紹介します。

2016年10月、幡野さんは東京から山梨に移住してきました。「移住するまで」の幡野さんはこちらの記事でたっぷりと語られているので、ここでは「移住してから何をしているか」ということに主に焦点を当てていきたいと思います。


23歳で山梨に移住するまで

群馬県沼田市で育ち、東京の大学に進学。その後、東京のOA機器会社で営業として活躍していた幡野さん。

土木業を営む実家は、幡野さんの弟が『継ぎたい』という意思を持っていたため、いつか自分はその弟のサポートをできたら・・・という思いからぼんやりと群馬へのUターンを考えていたそう。「東京へ出たのは、地元にUターンしたときに役立つ経験やスキルを積むため。」ということでした。

そんな幡野さんは社会人1年目、自身がいる環境に疑問を抱くようになりました。心身ともに疲れていた時、友人と今の悩みや将来の話をする機会があったのです。

その友人は定期的に山梨と東京を行き来するスタイルで仕事をしており、『今度一緒に山梨に行ってみる?』と誘われたそう。「それがとても新鮮に感じたし、その後の人生を変えるきっかけになった」と話してくれました。「それからは、山梨への興味がふつふつと湧いてきて、友人と山梨に行くまで待てず、気づいたらふるさと回帰支援センターで仕事と移住の相談をしていました(笑)」と、営業のフットワークで移住へと突き進んで行くのです。そして2016年10月、身延町の地域おこし協力隊として赴任、移住に至ります。


レールが敷かれていない道を行く

移住後の収入と仕事のことを伺うと「正直、収入は半分くらいになりましたけど、最低限生きていける保証はあったし、紹介されて会う人や協力隊の同期との肌感覚や居心地が心地よかったんです。なにより、身延町としての地域おこし協力隊の第一号だったので、役所の方と一緒にレールが敷かれていない道を手探りで進んでいくことへの楽しみのほうが大きかったですね。」と、当時の気持ちをイキイキと振り返ってくれました。


協力隊では、身延町特産の「あけぼの大豆」を使った地域おこしに邁進し「ソイコティー(SOYCOTEA)」を開発。任期終了後は、身延町に暮らし続けながら前述した笹本環境オフィスで、ペレットストーブの営業、設置、メンテナンスやカフェ・シェアスペースの運営の傍ら、ソイコティーの製造・販売を続けています。

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山梨という場所で変わった自分

笹本環境オフィスで働くようになって、幡野さんは「少し変わった」と自分で言います。「僕は過去、営業という役割を経験してきました。“商品を売る”ということには慣れていたのですが、ここでは一筋縄ではいきません。営業だけでなく設置、その後のメンテナンスまで一人でできなければなりませんし、紹介や縁でお仕事をいただくこともあります。信頼や永いお付き合いというものを意識するようになりましたね。東京の営業マン時代に持っていた角(カド)みたいなものが、山梨の人たちとの交流を経ていい感じに取れたような気がします。」

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ここで働き始めて8ヶ月(2021年6月末時点)。幡野さんのこれからの目標を語っていただきまました。「現場の仕事もこなし、カフェ・シェアスペースなど多彩な事業、そして多様で魅力的な人たちとのつながりを持つ笹本さん(代表)に憧れを持っています。そんな人になりたいなと思いつつ、いまは早く戦力になれることを目標としています。」

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自分という人生を成り立たせる「コラボ」

そして、今後のソイコティーはというと「自分とたくさんの人をつなげてくれたもの。だからソイコティーはコラボレーションをスタンスにしてずっと続けていきたいと思っています。それが自分の生き方を肯定し、成り立たせていくやり方だと確信しました。」と強く語ってくれました。今では、身延町内の「ゆば工房 五大」さんとコラボした“ソイショコ”、山梨市の桃農家「ラ・ペスカ」さんのミルクジェラートとコラボした“ソイコティーフラッペ”など次々に新商品を生み出し、幡野さんらしさを発揮しています。現在も新しい商品を企画しているそう。

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好きなことを続けていくための働き方

「とはいえ、今はソイコティーだけで食べていくことはできないし、大量生産・大量受注をしたいわけではないので、笹本環境オフィスでベースの生計を立てさせていただきながらソイコティーに関わり続けています。これを受け入れてくれた笹本さんには本当に感謝していますし、ソイコティーとのいい意味での適度な距離感を取れているのはありがたいと感じています。」

ソイコティーに関わり続けることができているのも、大好きな身延町に暮らし続けていくことができるのも笹本環境オフィスで働けているおかげだと。そんな彼は「今後は周りの人を巻き込んで、身延の若い人たちが好きなことを好きな町でできるような環境と未来を、どんな形であれ実現したい。」と語ります。

最初は漠然としていた移住への想い。移住した先で「これがやりたい!」ということも別になかった。しかし、今の彼は「これがやりたい!」という情熱に溢れている。それは彼が「なぜ、そこなのか?」という問いに明確な答えがあるからだ。これが明確であれば「やりたいこと」なんて自ずと溢れてくる。そう感じた。


彼が答える「なぜ、そこ(身延町)なのか?」

それは『身延町が大好きだから。』

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幡野寛人|笹本環境オフィス/roastery SOYCOTEA DAYS

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地域で信頼を得るためには本業で貢献する 〜笹本貴之さんインタビュー〜

ここまで幡野さんの移住後の挑戦と暮らしについてお伝えしてきました。ここからはそんな幡野さんの挑戦を受け入れ、一緒に働く<笹本環境オフィス>代表の笹本貴之さんに山梨での仕事について話していただきました。笹本環境オフィスは山梨県内を商圏にペレットストーブの販売、設置、メンテナンスを行う傍ら、カフェ事業を営んでいます。

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山村:山梨で仕事を得ていく上で、大切なことって何だと思いますか?


笹本さん:まず、山梨という市場を信頼することだと思うよ。そして山梨で信頼されること。山梨に限らず、地方で仕事をする場合、その地域の規模だとか、そこの客層だとか、自社の商品やサービスの売り先として考えると不安になってしまう。でも、地域で仕事をすることって、その地域をより良いところにしたい、という想いがあるからだよね。自分の地域に不安があるからって、東京の市場ばかりに売っていたら、そもそも山梨で仕事する意味がある? 自分の地域で目も向けられていないものを、いくら全国に売って儲けたって、山梨で信頼される会社にはなれないよ。まずは私自身がこの山梨の人々を信じて、互いに理解しあって、少しずつ信頼関係を築いていくこと、それ自体が山梨という地域で仕事をすることの意味だと思うよ。


山村:『信頼』ですか?


笹本さん:そう。つまり『山梨の人を対象に、山梨で仕事をする』ということ。そしてその信頼というのは、本業を通して得ていくものだ、と私は思っている。


山村:なるほど。どうしてそう思われたのですか?


笹本さん:私は過去、イベントやボランティアを通して地域づくり活動に関わってきたけれど、どうやら、それでは『山梨で生きていくという覚悟』が地域の人には伝わらないということがわかったんだよね。「ところで何屋さんなの?何をしている人なの?」とよく聞かれてね。私の方も本業と地域貢献は区別していたから多くを語らないわけ。これじゃあ本音を語らない人間関係みたいで、だめだよね。だから今は、この山梨という商圏の中で、ペレットストーブという暖房機器を売ることを本業にして、その本業を通して地域貢献しているわけです。


山村:そういうことなんですね。幡野さんも覚悟をもって移住してきたと思いますし、どこか通じるところがありそうだな、と思いました。


笹本さん:そうなんだよね。幡野くんも、山梨へ移住してきて、地域の資源でソイコティーを開発して、自分の焙煎所をつくって、山梨の方と結婚されて・・・。『山梨で生きていく覚悟』が感じられた。デスクワークだけじゃなく現場での仕事も好きそうだったから、自分から(笹本環境オフィスで働くことを)提案してみた、というのが経緯だね。


山村:幡野さんは笹本さんの考えを体現していた人材だったということですね。そんな、幡野さんという人材を得た今、笹本環境オフィスとしてやっていきたいことってありますか?


笹本さん:個々のお客様の満足度を上げるということや、お付き合いを太く、濃くするということ。それは一人ではできなかったし、彼と紡いでいきたいね。それはストーブを売ったあとの対応・サポートやコミュニケーションをもっと密にしていくことで実現できると思っているし、それを通して、また地域での信頼を積み重ねていきたいと思っています。


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笹本貴之|笹本環境オフィス

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●笹本環境オフィス
Instagram:@studiopellet_official
Home page:http://office-sasamoto.net

●roastery SOYCOTEA DAYS
twitter:@soycotea
Online shop:https://soycotea.thebase.in/


取材:山村翔平  撮影:鈴木啓太


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