万華鏡を覗くような体験を山梨で
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万華鏡を覗くような体験を山梨で

みなさん、こんにちは。

突然ですが、みなさんは「写真」ときいて何を思い浮かべますか。みなさんの撮る写真には何が写っていますか。そこにはどのようなメッセージを込めていますか。

今回、私は山梨県甲府市貢川にある山梨県立美術館で「蜷川実花展―虚構と現実の間にー」にお邪魔しました。

美術館の入口にある大きな看板をみて「まるで絵をみているみたい」だと、そう思いました。

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1. 「Theater」

このブースでは、3本の短編動画を見ることができます。その中でも、「TOKYO NOIR」というタイトルの映像に惹かれました。魚の群れが泳いでいる映像と人々が行き交う通勤ラッシュの映像が二重に映し出されるものをみて、もやもやとする感情を抱きました。

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東京に住んでいたころには人込みに紛れることが日常でしたが、山梨に来てからはそのような日々を過ごしていなかったからでしょうか、俯瞰で見ると異様な光景に思えました。

行き交う人々の映像が流れた後には、人の口元と目元が交互に映し出されたり、魚の目元と人の目元を交互に映し出したり、その後にそれらの写真を0.3秒ほどの短い間隔で映像にすることで、目まぐるしく回る世界を表現しているように思いました。

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「UNTITLED」という映像にも、言葉では言い表すことが難しい感情を抱きました。これは、クラゲと花がメインの映像でした。花は動物や、虫、人間と異なり、自らの意思では動きません。しかし、生きているクラゲを用いて花とクラゲの映像を重ねることによって、「花にも命があり、生きている」ということを訴えているのではないかと思いました。

2. 「PLANT A TREE」

「目黒川の桜」ときいて、どのようなイメージを持つでしょうか。東京にある目黒川は毎年多くの人が花見の場として利用する大人気のスポットです。

私は目黒川の桜に「夜桜」のイメージを持っています。そのため、暗い空間に桜の写真がライトアップされている演出に、夜桜を見に来た気分になりました。

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その一方で、少しだけ寂しいような、悲しい気分にもなりました。なぜなら、展示されているものは散って川面を流れる桜の写真だったからです。

公園などに咲く木々の足元には、散って地面がピンク色になる景色が残ります。しかし、花びらが川の流れにのって消えてしまえば、ここで咲いていたという事実が流されてしまうのではないだろうかと、そう思いました。

3. 「うつくしい日々 The days were beautiful.」

建築中の建物、電信柱、屋上、葉の緑、などの日常に潜んでいる特別でもなんでもない写真と共に、彼女から彼女の父の死に対する言葉が添えられています。四方に貼られた写真とメッセージには、読み始めのスタートが印されておらず、端から一周して読んでみたもののメッセージはバラバラに配置されていると感じました。

しかし、私は下記のようなメッセージが込められていると思いました。

・日常の至る所に父の存在があり、その存在は特別ではなく当たり前であったこと。
・父の存在を失う日は、何気ない日常の中で起こること。
・生まれることと死ぬことが一直線上にあること。

「Self-image」のコーナーでは、展示されている写真が全て白黒でした。そして、複数ある写真の中に、どこかの家の廊下が写し出されていたものがありました。しかし、その写真の手前には左手がアップで写っていました。写真自体に色味がなかったからという理由もあるかもしれませんが、その写真に反射した自分を見て自分がその写真の先に行くことを禁止されているように思えました。

残念ながら「うつくしい日々 The days were beautiful」と「Self-image」は肖像権の関係で撮影が許可されなかったため、写真はありません。

4. 「桜 SAKURA」

先程お話したものとは異なりますが、ふたたび桜のお話です。

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ここのブースでは、残念に思った点が一つあります。それは天井です。桜を見る際には、背の高い木の枝先にある花を見上げています。そのため、展示ブースでも自然と上方に桜を探してしまう自分がいました。それだけ四方と足元にある桜の写真に夢中になっていたのだと思います。みなさんにも思わず頭上に桜を探してしまうほどの衝撃を体験してほしいと思います。

蜷川さんは桜が好きで、日本の桜のほとんどがクローンであることに文明の宿命を見てとるのだそうです。正直にいいますと、桜がクローンであることの何が問題なのか私にはわかりませんでした。肉眼でさえもクローンと本物を見分けることはできないと思ったからです。さらにいえば、写真に残すとなるとより区別をつける必要がないと思いました。

しかしながら、全ての作品を見終わってみて蜷川さんが懸念している点についてほんの一部だけ理解できたような気がします。

5. 「終わりに」

見学した数時間は、誰かの見ていた風景や誰かの今を覗き見ているような不思議な時間でした。

製作者である蜷川実花さんにしか作品の持つ意図や、作品に潜んでいる真意はわかりません。

しかし、
ただ美しいものが見たい人
日常を大切にしている人
写真を撮ることが好きな人
強く生きたいと願う人
他人の価値観に興味がある人
何かの答えを探している人
目の前の現実に違和感を覚える人

そう思っているすべての人に、おすすめしたい展示会です。

上記に当てはまらない人でも、展示物から感じる何かが必ずあるのではないかと思っています。ぜひ一度、山梨県立美術館へ足を運んでみて下さい。みなさんが何を感じ、考えたのか、共有していただけたら嬉しいです。

「蜷川実花展―虚構と現実の間にー」は2021年7月10日(土)〜8月29日(日)まで山梨県立美術館で開催しています(8月22日まで臨時休業中です)。

文・写真:河崎葵(山梨県立大学国際政策学部3年)

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