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「感情豊かなシンプル」を体感せよ!

みなさん、こんにちは。
あっという間に暑い夏に向けて心の準備をはじめる時期となりましたね。

今回、わたしは山梨県立美術館で開催されている「フランソワ・ポンポン展ー動物を愛した彫刻家」を見に行ってきました。この日は、涼しげな風とともに 時折シャワーのような細やかな雨がさらさらと降り注ぐ気持ちの良い天気でした。

美術館へ続く道

まずは、フランソワ・ポンポンの代表的な作品である《シロクマ》の彫刻をご紹介します。とても愛らしいです。

《シロクマ》 1923-1933年 白色大理石 群馬県立館林美術館蔵

展示は、作品だけでなく、年表やポンポン自身の経歴などについての説明も掲示されていました。
今回は、特別な許可を得て、撮影しています。上の《シロクマ》のみ、どなたでも撮影できます

彫刻家ロダンに学んだポンポン

解説文によると、ポンポンは《考える人》で知られる彫刻家、ロダンに弟子入りしていました。ロダンのもとで共に学んだ彫刻家ブランクーシとポンポンとの関係が説明されていました。

ポンポンの彫刻家人生がよくわかる解説

ポンポンの彫刻家人生と共に作品を見ていくうちに、ポンポンはこだわりが強く、愛情深い性格なのかもしれないということを感じ取ることができました。

シンプルなフォルムの動物彫刻で名を知られているポンポンですが、はじめから単純なフォルムの動物彫刻を作っていたわけではありませんでした。
下の写真はまだつるんとしたシルエットを確立する前のポンポンの作品です。

《ほろほろ鳥の頭》1910-1914年 石膏 群馬県立館林美術館蔵

表面はざらっとした印象で、本物の動物に近い造形だと感じることができると思います。

フォルムの単純化

フォルムの単純化には、ある彫刻家の助手として同行したキュイ=サン=フィアクルという村へ毎年訪れるようになり動物を観察する機会が増えたポンポン自身の生活が関係していました。
ある日、朝光のもと10メートル離れたガチョウのシルエットに美しい輪郭線を発見したことがひとつのきっかけだったそうです。
展示には実際にガチョウの彫刻があったので、すこし遠くから鑑賞してみました。

《鵞鳥》1926年 石膏 群馬県立館林美術館蔵

頭から尻尾にかけての輪郭がなめらかで、気持ちの良い美しい曲線です。
このガチョウが実際に自然の中、朝光に照らされている様子を想像したら、さらに楽しめました。

これは黒豹の彫刻です。

《大黒豹》1930-1931年 ブロンズ 群馬県立館林美術館蔵

シルエットはシンプルですが、ツヤの出ている箇所や繊細にほどこされた色付けによって、動物のリアルな質感や骨格を感じることができます。

ポンポンの愛情と観察

動物の彫刻ではありませんが、ポンポンが晩年に製作したある少年の彫刻もありました。

《アンリ・デシャン》1932年 油土 群馬県立館林美術館蔵

この少年はキュイ=サン=フィアクルの村長の孫だそうです。頬の膨らみ、口元、小さな顎の形 すべてが繊細かつ生き生きと表現されています。
この作品からは、ポンポンのこの少年に対する愛情が溢れんばかりに感じられ、とても感動しました。

今回は一部の作品を紹介しましたが、このほかの作品もみなさんにも一度は見てほしいと思う作品ばかりでした。

わたしは今回フランソワポンポン展を見て、ポンポンのシンプルかつ緻密な彫刻のスタイルは、対象への強い愛情と愛があるからこその深い観察が生み出したものではないかと感じました。

みなさんも、フランソワ・ポンポンの「感情豊かなシンプル」をぜひその目で体感してみてください!

フランソワ・ポンポン展ー動物を愛した彫刻家」は、山梨県立美術館で2022年6月12日まで開催されています。

文・写真:田口綾乃(山梨県立大学国際政策学部1年)

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