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「源氏物語」の知られざる魅力との出会い

山梨県立文学館で開催されていた特設展「それぞれの源氏物語」を取材させていただきました(特別に許可を得て、写真撮影をしています)。

私は、古典文学に対する知識がほとんどないので、はじめは文学館で開催されていた特設展に対して面白さを感じることができるのか不安な気持ちもありました。しかし、実際に行って説明を読んだり展示物を見たりしていると思っていたよりも興味の惹かれる部分が多くあったり新たな発見があったりして、高校の授業でこんなこと教わったな、などと考えながら楽しむことができました。


まず展示室に入ってすぐの場所にあったあいさつ文を読み、私はこんなにも多くの作家、それも有名な人ばかりが「源氏物語」の現代語訳や「源氏物語」をもとにした創作小説を手掛けていることに驚きました。

一つの文章からそんなにも現代語訳を書くことができるのか、とも思いましたが、古きの文章は一つの言葉から様々なニュアンスを受け取れる部分がある印象を持っているので、人によって受け取り方が異なるから多種多様な訳や創作小説などが作れたのかなと考えました。「源氏物語」は文学には多大な影響を与えたということは何度か聞いたことがあったけれど、美術にまで影響を与えていたことも新たな発見でした。

文章が美術にどのように影響を与えたのかとても気になります。 展示物を見進めていって目に留まったのは、本の表紙です。

単純に綺麗な表紙に惹かれてしまいました。本来の色がどのくらいの彩度だったのかは分かりませんが、100年以上前のものがこのように綺麗なまま残っていることがすごいと思いました。

それぞれの作家の第四帖「夕顔」の現代語訳が展示されていました。「夕顔」の説明としては、【源氏が五条あたりの檜垣の家の前で、夕顔の花を見つける場面】というようにありました。私が特に面白いと感じたのは、谷崎潤一郎と橋本治の現代語訳です。

この二つは一つのパネルに並べられていたのですが、同じ文章のはずなのに文章量が倍違うことが気になりました。よく読むと、橋本治は訳は塀や蔓草、夕顔などの表現がとても細かく描かれていました。一人一人の訳し方は異なるだろうとは思っていたけれど、ここまで差があるとは思っておらずとても興味深かったです。ほかの場面の訳も読みたくなってしまいました。

「源氏物語」が「THE TALE OF GENJI」として英訳が、しかも2度もされていることにも驚きました。

日本国内だけでなく世界にまで広まっている源氏物語も、その作者である紫式部も日本が誇るべきであるのだと感じました。

フランス恋愛小説のような源氏物語を描きます!」という印象的な見出しがありました。

古典文学とフランスという衝撃の組み合わせに思わず目が行ってしまいます。そもそもフランス恋愛小説とは?と思い、調べてみました。フランス文学の特徴として現実主義的なものが多く、情熱的というよりは理知的で形式の調和を尊重する傾向があるそうです。私の中ではどちらかというと情熱的なイメージがあったので、意外でした。ほかの国の文学に比べてより人間的で、さらに人の内面を追求しているため「恋愛小説」として書かれることが多いそうです。

今回の特設展を観覧して感じたのは、「源氏物語」とは多くの作家がその時代それぞれに合った訳をや創作物を手掛けて世に広めたいと思うほど魅力的な作品なのだなということです。

高校の授業だけでは知ることができなかった良さがまだまだたくさんあるのだと思うと、より源氏物語について知りたいという気持ちが深まりました。

残念ながら、特別展「それぞれの源氏物語」は終わってしまいましたが、「冬の常設展 期間限定公開コーナー『作家の肖像Ⅱ 芥川龍之介』」が、2024年3月3日まで開催されています。

また、山梨県立文学館には、山梨県出身・ゆかりの文学者の直筆原稿や書簡、愛用品、写真、著書などが多数展示されていて、特に、樋口一葉、芥川龍之介、飯田蛇笏、飯田龍太の資料は、質量ともに国内有数のコレクションとなっています。

最後になりましたが、貴重な取材の機会をくださった山梨県立文学館の皆様に感謝申し上げます。

文・写真:秋山美月(山梨県立大学国際政策学部国際コミュニケーション学科1年)

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