オンライン

先日、オンライン飲み会をした。

そうなんだ。俺、ついにオンライン飲み会をしたんだ。スカイプで、ZOOMで、家に居ながら誰とでも飲める、あの!今、流行りの!オンライン飲み会!今までずっと指を咥えて眺めてた。ツイッターで見かけて、みんな楽しそうで、いいな、うらやましいなってずっと思ってた。でも、ごめんね。もう違う。もう過去の俺じゃない。何故ならオンライン飲み会に参加してしまったから。

オンライン飲み会に参加出来なかった俺は、もはや過去の俺。こんな感覚は今までもあったかもしれない。初めて自転車に乗れたとき。初めて1人で映画を観に行ったとき。初めて試合で勝ったとき。生きているとふと出会う、頭上でファンファーレが鳴る瞬間。そんな様々な出来事が積み重なって、沢山の挫折を味わって、ついに、30年以上かけて、ようやくオンライン飲み会に参加するまでに成長することが出来た。

お母さーん!俺、オンライン飲み会に参加したよ!

しかも誘われたんだ!滅多に誘われることなんてないのに!誘ってくれる人がいたんだよ。

思えば誘われることのない人生だった。基本的に友達がいないので、芝居の稽古が無い期間はほとんど人に会うことがない。稽古がある期間も、大体台本書きに追われているので飲みに行くことはあんまりない。特に稽古中盤はほんとに飲みに行かない。それでも仲良くなりたいから、とか、今日は上手く行って嬉しかったから、とか、ちょっと稽古場以外で話す機会が欲しいかもと思ったりして、飲みに行きたくなる夜もある。

そういうとき、誘うのは大体俺!そもそもうちの芝居出ない?って役者を誘ったのも俺!誘われることのない、誘ってばっかりの人生。俺のことを誘ってくれるのは、渋谷の怪しいマッサージ店のお姉さんくらいだ。誘われたのが嬉しくて、一回間違って付いて行ったことすらある。だって誘われたかったんだ。
役者の人たちは言う。「なんか主宰の人って誘いづらくて」「忙しいかと思って」「早く台本書いてくださいよ」。うん。最後のはごめんとしか言いようがないけど、俺だって主宰で作・演出の前に人間さ。いいんだよ。気軽に誘ってくれていいんだよ。山ちゃん飲みに行こうよって、山ちゃん一緒に遊ぼうよって、山ちゃん山ちゃん言ってくれたっていいんだ。しかし、そう言うと彼らは困ったような笑みを浮かべ、「あ、今日はちょっと」と言ってそそくさと帰るのだ。そして後日、しれっと他の人と飲んでる写真をツイッターにあげるのだ。悲しい。山ちゃん悲しいよ。

話がそれるけど、俺のことを山ちゃんと呼ぶ人は、現在この地球上に1人しかいない。切ない。

肝心のオンライン飲み会だけど、結構楽しかったです。サムゴーギャットモンテイプと唯一仲良くしてくれる劇団として有名な、guizillen佐藤さん夫妻と飲んだんだけど、久々に色々話せてテンション上がって飲み過ぎてしまい、年に2回あるかないかレベルの二日酔いになりました。起きてから二度吐くという経験を久々にした。外で飲むときはほろ酔いくらいにセーブするから、ここまで酔ったのはほんと久しぶり。

しかしオンライン飲みをすると、「ああ、今はまだ会えないんだな」という感覚が強くなっちゃって、逆にちょっと寂しくもなるね。イギリスで暮らしてたとき、日本に残ったじいちゃんばあちゃんと電話したときと似たような感じ。今はまだ会えないんだなあ。早く会いたいね。

読んで頂きありがとうございます。頂いたサポートは、主に台本を書く際に飲む栄養ドリンクに使わせて頂きます。