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人的資本開示とは何か?(事業との関係①)

はじめに

HRBrainにおいて、とある従業員エンゲージメントサーベイを企画・設計し、分析サポートのマネージャーをしています。多くの企業様と人的資本についてお話をする中での関係性について整理していきたいと思います。
そして「人的資本開示=サーベイ」「人的資本開示=ラーニングシステム」のような支離滅裂なことではなく、どうすれば人的資本開示という機運を用いて企業成長を実現するのかについて考えていきます。

人的資本開示元年

2022年は人的資本開示元年といっても良い年だったと思います。多くの人事担当者は人的資本開示開示はどうすればいいかを悩み、HRに関する企業がこぞって人的資本開示に自社のサービスは効果がありますと喧伝していました。
そのような動きが顕在化したのは、米国証券取引委員会(SEC)による人的資本開示の義務化やISO30414という人的資本にかかる認証資格が生まれたことが大きい。
そして直近特に大きな関心を得ているのは、金融庁から大手4000社に対して有価証券報告書に従業員満足度や研修費用などの記載を義務化するという方針が打ち出されたことだと思います。

人的資本開示と事業との関係について

「人的資本開示」で人事のほとんどが読んでいるであろうものとして、
内閣官房による「人的資本可視化指針」が挙げられる。人的資本開示に求められる基準やその基準を達成するためのプロセスについて説明している。
もし読まれたことがなければ読んでみてほしいです。
https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf

その中で人的資本がどのような形で業績に関連するのかについてROICやROEなどの財務指標と紐づけながら検討が行われている。開示のコンサル支援をしている身からすれば非常に分かりやすいものであるが、人事をやられていた方にパッと読んで理解しろというにはあまりに酷な内容になっていると思う。

もっと簡単に人的資本が企業の売り上げにどのように影響を及ぼすのかについて整理していきたいと思います。

人的資本で業績が上がるとは何か?

人的資本が高まることによってどのように業績(売上・利益)が高まっていくのか。2つの高まり方があると思っています。

①人的資本が直接的に業績に影響を与える
従業員がエンゲージメント高く・スキルも高い状態で顧客へのアプローチをすることによって、他社よりも優れたサービスを提供することができるため、売り上げが改善するという流れ。

②人的資本が間接的に業績に影響を与える
従業員がエンゲージメント高く・スキルも高い状態でビジネスを行うことによりビジネスの仕組みがブラッシュアップされたり、ノウハウが蓄積されるようになることによって、ビジネス自体の価値が高まるという流れ。

これら二つのどちらのアプローチであったとしても、売り上げを増加させることができる。しかし利益が増えるかどうかに関しては、人的資本への投資のROI(投資対効果)に大きく依存します。そのためその投資対効果を適切に計測し、本質的な人事施策を行う必要があるというのは当然の論理かと思います。

価値と利益の相関(+)

人的資本への投資を考えるポイント

では人的資本投資はどこにするべきなんですか?という質問がこういう話をするといただくのですが、正直答えというものは存在していません。

先ほどROI(投資対効果)という話をしましたが、この”効果”というものを適切に捉える必要があります。これをただ「業績」とだけで捉えると人的資本経営・人的資本開示は一瞬で意味のない、むしろ悪影響の大きい施策となります。
なぜなら本来は「長期的な企業成長(サステナビリティ)」を実現するために行う「人的資本経営」が目先の業績と相関があるかどうかで測定されてしまっては、本末転倒になってしまうからです。

人材版伊藤レポートに「As Is-To Beギャップの定量把握(現状-あるべき姿の差分を数値で把握すること)」と記載がされていましたが、何をするにもここからがスタートです。経営として事業として、人的資本の理想状態を描き、KPI化すること。その実現に向けてどれほど効果があるのか、ROI(投資対効果)として測定をするべき要素になります。

「人的資本開示に取り組め」と指示するだけの経営者では人的資本開示が実現されることはありません。「人的資本可視化指針」にもありますが、人的資本開示はトップ・コミットメントが非常に重要な要素になります。
小手先の人的資本開示では全く事業に影響はありません。人材を成果を創出するための「投資対象」として捉えて、最も求めるべき「効果」を定義することが第一歩です。

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