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中小企業の財務基盤・収益構造の多様性(中小企業白書2021年度版より)

本日は、「第2部 危機を乗り越える力」「第1章中小企業の財務基盤と感染症の影響を踏まえた経営戦略」の続きです。
今回は、中小企業の財務基盤・収益構造の多様性について紹介します。
以下、「中小企業白書2021年度版」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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2.中小企業の財務基盤・収益構造の多様性
前項では、平均的な中小企業像で見ると、財務の安全性、収益性共に改善傾向にあったことを確認したが、一方、中小企業の財務基盤・収益構造は、規模や業態によって多種多様である。本項では(株)東京商工リサーチの保有する「財務情報ファイル」も活用しながら、中小企業の各種財務指標の分布について分析する(注)。
(注) 「法人企業統計調査年報」による分析と(株)東京商工リサーチ「財務情報ファイル」による分析では、対象となる中小企業の範囲が異なる点には留意が必要。
第 2-1-7 図は、中規模企業について、業種別に財務の安全性を表す自己資本比率及び借入金依存度(2019 年度時点)の平均値を見たものである。

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自己資本比率を見ると、宿泊業、飲食サービス業では低く、製造業や情報通信業では高くなっている。

第 2-1-8 図は、業種別に自己資本比率(2019 年時点)の分布を見たものである。

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宿泊業や飲食サービス業では債務超過の企業の割合が高いことから、自己資本比率の平均値を押し下げている可能性がある。2019 年版中小企業白書(注)では、2007 年度から 2016年度の中小企業の自己資本比率の推移について分析しており、リーマン・ショック以降、中小企業の間でも、利益を確保し自己資本比率を改善できている企業と、そうでない企業の二極化が進んでいる可能性について言及しており、堅調に収益を確保してきた企業とそうでない企業での格差が大きくなっている可能性もある。
(注)2019 年版中小企業白書第1部第3章第2節

第 2-1-9 図は、業種別に収益性を表す売上高経常利益率(2019 年度時点)の平均値について見たものである。

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宿泊業、飲食サービス業では低く、建設業や情報通信業では高くなっている。

第 2-1-10 図は、業種別に売上高経常利益率(2019 年時点)の分布について見たものである。

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宿泊業や生活関連サービス業、飲食サービス業では赤字企業の割合が多い一方、卸売業や小売業では5%以上の高い利益率を確保できている企業の割合が低くなっているなど、ここでも業種の特性に応じた分布の違いが見られる。

第 2-1-11 図は、業種別に売上高の減少への耐性を示す損益分岐点比率(2019 年度時点)の平均値について見たものである。

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宿泊業や飲食サービス業では高く、卸売業や建設業では低いことが分かる。すなわち、宿泊業や飲食サービス業は売上高の減少への耐性が低く、卸売業や建設業は高いということが分かる。

第 2-1-12 図は、業種別に損益分岐点比率(2019 年時点)の分布について見たものである。

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製造業や卸売業では 90%未満の企業の割合が特に高く、赤字に転落しにくい傾向にあると推察される。また、宿泊業や娯楽業では 100%以上(赤字)の企業も多い一方で、90%未満の割合が半数を超えており、業種の中でのばらつきも見られる。

以上、ここでは中小企業の財務基盤・収益構造の多様性について、業種の観点から確認した。財務の安全性や収益性の水準を向上させるのは、業態により難易度が異なるものの、財務基盤が特に弱い状態が続くことは、繰り返し訪れる事業環境の変化を乗り越える上で課題となり得る。業態の近い他社と比較して、自社の財務基盤・収益構造がどのような状態にあるのかを把握しておくことが重要である。
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東京商工リサーチの持っている財務データなどを用いた分析です。
財務省の法人企業統計調査年報によると、2019年度の業種別自己資本比率は次の通りです。
<自己資本比率が低い順>
宿泊業、飲食サービス業
小売業
卸売業
建設業
生活関連サービス業、娯楽業
運輸業、郵便業
全産業(除く金融保険業)
製造業
情報通信業
となります。

東京商工リサーチのデータによる2019年の業種別自己資本比率の分布を見ると、宿泊業、飲食サービス業、建設業ではおよそ2割の中小企業が債務超過となっています。

売上高経常利益率の低いのも宿泊業、飲食サービス業となっており、自己資本比率の低さ、債務超過の割合の高さ、利益率の低さの三重苦の状態と言えます。
そこへのこのコロナ禍なので、苦しい企業が多いのも道理です。
国の補償が飲食業に向けて行われているのもこのような背景がありそうです。

環境の変化に迅速に対応するためには、財務の安全性や収益性を高めておかねばなりません。日々の積み重ねの結果ですが、十分な自己資本比率を保っておきたいです。

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