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「研究開発の促進のために、株式上場による資金調達や企業間連携を行い、事業を成長させる中堅企業」(中小企業白書2021年度版より)

本日は、「第2部 危機を乗り越える力」「第1章中小企業の財務基盤と感染症の影響を踏まえた経営戦略」の続きです。
今回は、「研究開発の促進のために、株式上場による資金調達や企業間連携を行い、事業を成長させる中堅企業」の事例について紹介します。
以下、「中小企業白書2021年度版」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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事例 2-1-6:株式会社菊池製作所
「研究開発の促進のために、株式上場による資金調達や企業間連携を行い、事業を成長させる中堅企業」

・所在地:東京都八王子市 ・従業員数:344 名 ・資本金:13 億 300 万円
・事業内容:金属製品製造業

「下請」を続けることへの危機感から、更なる成長を目指す
東京都八王子市の株式会社菊池製作所は、金属及びプラスチック製品の試作及び量産の設計・製作・販売を手掛ける企業である。

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特に試作分野に強みを持ち、当初は計算機・電卓の試作を手掛けたが、特定の製品に固執することなく、デジタルカメラやスマートフォン、自動車関連に医療機器と、時代とともに新たな製品開発に携わるよう心掛けてきた。

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2000 年頃から同社の菊池功社長は、下請構造の中で生き続けることに危機感を感じ、自社製品の開発を検討していた。また、自社の今後の成長と発展のためには、自社製品開発のための積極的な設備投資に加えて、上場して社会的信頼を得ることで、社員が誇りとやりがいを持って働ける会社にすることも必要だと考えた。

社内の説得に苦慮するも、上場を通した資金調達が成長投資につながる好循環を形成
2004 年頃から株式上場を検討し、監査法人の確保などの上場のための体制づくりを始めた。そうした中、社内の管理部門からは、生産体制に何ら問題がないにもかかわらず、管理コストだけが増すのではないかと上場に対して否定的な反応もあった。これに対し、菊池社長は社内を説得し、トライアンドエラーで管理体制を構築していった。その結果、徐々に上場に向けた目的意識が社内で共有されていった。上場を果たすまでに、2008 年のリーマン・ショックの影響などにより二度上場を取り下げたが、外部コンサルタントとも連携しながら、管理部門担当者を中心に地道に検討を重ねた結果、2011 年 10 月に大阪証券取引所 JASDAQ 市場(スタンダード)へ上場した。当時の従業員数は 351 名で、資本金が1億 7,000 万円から3億 5,800 万円になったことにより、中小企業基本法上の中小企業の要件から外れ、いわゆる「中堅企業」となった。上場準備と並行して 2006 年にものづくりメカトロ研究所を設立し、産学連携による製品開発を進めてきたが、株式上場による資金調達により、研究開発にまい進できる環境を整えることができた。

スタートアップに出資をする新しい資金の流れで、事業規模を拡大
上場により調達した資金は、純アルミの鋳造を可能としたホットチャンバー式アルミダイキャストや、環境・エネルギー・医療分野で応用が期待できるマイクロポンプの自社開発、高速5軸のマシニングセンターを増やすなどの設備投資に用いられ、市場のニーズに対応した体制が構築できた。また、上場したことによる社会的信頼度も向上し、大学研究室とのサービス・サポート系のロボットなどの共同研究を後押ししている。さらに近年では、装着型作業アシストスーツやドローンなどを開発・製造・販売する大学発スタートアップを設立時から支援したほか、次々と大学発スタートアップに対して出資を実施。

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同社がスタートアップに対して資金面、技術面、販路など包括的に支援する「事業化プラットフォーム」構想を掲げ、グループ企業を増やす形で規模を拡大している。「高い成長志向を持ってこそ、事業の継続や発展が実現できる。感染症流行による環境の変化も踏まえると、今後は新しい製品を生み出していく創造力がより重要になる。そのためには、従来の縦の関係ではなく横の関係が重要。今後とも大学やスタートアップと連携して、時代の変化に合わせたプラットフォームを構築していきたい。」と菊池社長は語る。
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何のために株式を公開するのか。
考えさせられる事例でした。

株式公開は、成長のための設備投資など、その企業の未来のためでなければならないと思うのです。
上場が目的化し、創業者利益を得るために、というような論調もよく目にしますが、ちょっとずれていると思います。

上場後、MBOで非公開化する、という会社もあります。
赤字になっても迅速な経営判断をして改革する場合、その方が良い側面がありますね。

伍魚福は今のところ上場するつもりはありませんが、成長戦略を考える中では選択肢の一つとして考えたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan