「猫を棄てる」


 村上春樹さんの「猫を棄てる」という本を読んだ。村上春樹さんが父親について(ほかにもあるけれど)語ったエッセイ的な文章だ。
 村上親子が猫を棄てに行ったのは、僕が幼少期から少年期・青年期を過ごした香櫨園浜だった。僕のルーツともいえる場所に、村上春樹さんが随分前に来ていたことに胸が熱くなった。村上春樹さんはその海で泳いでいたらしいが、僕も泳いでこっぴどく怒られた。僕が育っていたころにはもう海は汚く、まともな人が遊泳するような場所ではなかったからだ。
 夕食後にこの本を読みながら、流れてくる涼風に当たっている時間は至福のときだった。このように、人に至福の時を過ごさせるような文章を書きたいが、自分にはその才能も、その才能を引き出す努力をする才能もなさそうだ。勉強不足ということもある。これからも至福を感じながらもっと本を読み、自分の中から、だれかの胸を熱くさせるような文章を生み出せるような人になれたらいいなと思う。

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