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カメラマンは「10年後になくなる職業」なのか
(この記事は2017年5月21日に写真事務所deltaphotoのサイト内のブログに記載した記事に追記・リライトをしたものです。サイトリニューアルのため引っ越しをしました)
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「コンテンツ」を作るのにイメージ写真の代わりにイラストで構成することも容易になりました。
10〜20年後、一般事務・弁護士・会計士など多くの仕事はAIの技術革新でなくなるリスクが高いと言われています。
スーパーのレジ係は無人レジの導入、ネイリストもプリンターの進化や自身でネイルをする人が増えていており、「なくなる職業」に入っているようです。
今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いという結論に至った
とある子ども向け写真館の話を聞くと、ひとりのスタッフが子どもの着付けとヘアメイクをして写真も撮り、おまけにレジも打っているというスタジオもあるのだそうです。
スタジオの写真撮影用の照明(ライティング)も場所ごとに事前に設置されており、撮影する人によってクオリティのムラが出ない、非常にシステマティックなものとなっていた。確かにこれで照明は一度セッティングすればいいだけで、構図や子どものあやし方も社内マニュアルで共有しておけば、同じクオリティの写真を量産できる。
カメラのデジタル化や高画素・高画質な携帯電話・スマートフォンの普及により、「写真撮影」という行為は身近になり、技術的にも、アマチュアでも勉強をすれば、きれいな写真が撮りやすくなった。
私自身はプロのカメラマンとして生計を立てているが、大勢の人が「きれいな写真」を撮りやすくなったのは、とても良い事だと思う。
テクノロジーの進歩で、人々の経済活動に変化が出るのは今に始まった事ではない。しかし「写真撮影」という技術が大衆化した今、プロカメラマンが窮地に立たされているのも現実。
では、我々カメラマンという職業は「10年後なくなる職業」なのだろうか。
もしくは、なくなることはないが、限りなく淘汰されていくのではないだろうか。
そうであれば、淘汰されれてしまうカメラマンはどのようなカメラマンなのだろうか。
と、ふと疑問を抱いたので、自分の考えをつらつらとまとめようと思います。
"10年前"のカメラマン事情
10年後を考える前に、10年前のカメラマン事情を私の知っている限りで書いていきたい。
(私は2006年から現在までカメラマンとして写真撮影を生業としてきたので、知らない部分もたくさんあったはずなので、「これは違うよ」という点がもしかしたらあるかもしれないです)
現在
デジタル一眼レフカメラの普及でカメラマンを目指しやすくなった。
高感度撮影など、デジタル一眼レフカメラのスペックは上がり、写真撮影のハードルが下がった。
専門学校を出たばかりでフリーになる人も多い。
「(経験のためには)安くてもやります」というカメラマンが多くなった(若いカメラマンが増えた)。
一定層のカメラマンのギャランティが減ってきた。
女性のカメラマンが増えてきた(以前のカメラマンは男性社会だった)。
高画質なスマートフォンの普及で「写真を撮る」ことが身近になった。
スナップマートのようなサービスでアマチュアでも写真の販売ができるようになった。
カリスマインスタグラマーが出張撮影で商品撮影をするサービスがリリースされる。
報道機関もTwitterの写真を番組に使うようになった。
ランサーズ、クラウドワークスなどネットワーク上で仕事の受発注が容易に行えるようになった(発注されるギャラは相場に比べて安いものが多いと言われる)。
「出張撮影」ブーム(主に子ども・カップル・家族向け、ギャラは安い)。
雑誌カメラマンの外注が減った(予算の関係で社内の編集部員が撮影するなど。廃刊も多い)。
カメラ機材が安くなった。
ミラーレスカメラで仕事をする人が出てきた。
PIXTAなどのストックフォトサービスが市民権を得て、ストックフォトで生計を立てるカメラマンやアマチュアの副業カメラマンなどが写真を投稿している。
10年前
プロカメラマンのフィルムからデジタルへの転換期。
デジタル化についていけないカメラマンが淘汰された。
一般の人が、携帯電話(ガラケー)で撮影した写真(写メ)が新聞の一面、テレビ放送に使われるようになった。
アマチュアが写真を売り買いすることは手軽ではなかった。
雑誌の景気が良かった。
当時のデジタル一眼レフカメラはまだ不十分で扱いにくかった。
当時のデジタル一眼レフカメラは画素数的に足りないため、フィルムで撮影するということもあった。
カメラマンは「職人の仕事」という雰囲気がまだ残っていた。
こうやって見てみると10年で随分と環境が変わってきた。特に、「写真で稼ぐ」にはプロカメラマンだけでなく、アマチュアの写真愛好家にも門戸が開かれた。
この数年で写真は格段に撮りやすくなった
カメラの技術進化で、きれいな写真は格段に撮りやすくなった。
今では一般的な家電量販店に行けば、「暗い場所でもきれいに撮れる」デジタル一眼レフカメラをその日に買うことはできるわけです。
しかしこれはあくまでも
きれいな写真を撮る
暗いところでも撮れる
高画質
といったあくまでもカメラのスペックに関する内容。
商業写真を撮影する場合には、
撮影現場のディレクションをどうするか
デザイナーさんとどのように調節するか
トンマナをどう合わせるか
クライアントさんの思いをどう形にするか
モデルをどうリラックスさせ、いい表情を引き出すか
照明の調整はどうするか
クライアントさんが求めた写真に近づけるには総合的にどうすればよいか
など、必要とされるスキルは多い。
影響力のある写真、クライアントさんの求める写真を撮れるようになるには、すぐに身につくテクニックではないと考えている。
ただ、
カメラはとても学びやすくなった
という現実もあります。
10年前に比べ、ライティングの技術をアマチュアカメラマンがYoutubeやブログ記事、書籍で学ぶことができるようになりました。
かくいう私もライティングや構図など写真撮影に関する全ての技術は独学です。撮影現場で他のカメラマンの撮影スタイルや出版物の写真を見ながら勉強してきました。
知人のプロカメラマンも、Youtubeでカメラ技術を会得したという人は何人かおり、つまり学ぶ意欲があれば、アマチュアカメラマンでも容易に技術を学べるようになったし、オンラインで授業が受けれるようなサービスも提供されています。
Youtubeで広告やCMのメイキング映像を見ているとライティングがチラッと映ることがあります。これを一時停止して、その広告写真がどのようなライティングで撮影したかひとつずつ盗んでいくこともできる(私はそうしていました)。
以前は、一流のカメラマンのアシスタントをしなければ得ることができなかった情報を、得ることができるようになったのです(もちろん直アシについたほうが得られる情報量は多いだろう)。
私が代表を務める写真事務所deltaphotoに連絡をいただくクライアントさんも、ECサイト事業で定期的な撮影がある場合はいずれは外注することなく、社内で撮影を回したいと考えているケースは多い。
つまり、カメラマンの敷居は事実として下がってきているのだと思う(ただそれは写真撮影を生業とするプロのカメラマンとは呼べない)。
「カメラマン兼務」が増える可能性
カメラも撮るし、デザインもするし、という人がこれから比率として増えていくのではないでしょうか。
写真を撮るデザイナー
写真を撮るアートディレクター
写真を撮るEC事業者(写真撮影を内製化しているEC事業者は多い)
写真を撮る結婚式の参列者
写真を撮る学校の先生(卒業アルバム)
その上、10年後、20年後よりカメラは進化して、デジタルネイティブ世代が写真を撮る仕事を目指すだろう。
影響力を持つカリスマインダスグラマーがスマートフォンで写真をプロカメラマンより高い料金で写真を撮るサービスが好調だという(WWD JAPAN「話題沸騰の“インスタグラマーによる撮影代行サービス” 仕事人を直撃」)
技術革新により、構図・センス・ディレクション能力があれば写真を撮れるようになっている。
例えば、デザイナーがカメラマンを兼務するというスタイルが主流となる時代が来る可能性は否定出来ないのだ。そうなると「ある程度撮れる」カメラマンは生き残りにくいのかもしれません。
カメラに携わる労働人口自体は増えるかもしれない。しかし「カメラ一本の専門職」の人口が増えるとは到底思えないのである。純粋に撮影業務だけの専門カメラマンは減る傾向にあるだろう。正社員が増えるかもしれないが、彼らは実は専業ではない事が多い。
企業が社運をかけた大きなプロジェクトの撮影のみ外部のカメラマンを使うことになるかもしれない。そこで指名されるのは、大手制作会社や広告代理店に指名される「一流カメラマン」だけ。
つまりそれまで外注されていた「小さな撮影」は全て社内でまかなわれるようになるだろう。クリエイティブではない撮影はプロに発注できなくなる。
「ある程度のカメラマン」は淘汰される
カメラマンにも撮影対象によって様々なジャンルがある。
広告
報道(写真記者、週刊誌カメラマン)
グラビア
ブライダル
家族写真(七五三など)
どのジャンルでも一流と呼ばれるようになるには並大抵のことではない。
しかしどのジャンルでも「ある程度のカメラマン」であれば、淘汰されかねない。だからこそ、「提案して、撮って、影響力を持つカメラマン」にならなければいけない。
プロのカメラマンである以上、技術を持っているのは当たり前です。ただ、「技術」だけでであると、アマチュアのカメラマンや様々な業務と兼務するカメラマンが、追いついてくるかもしれないという話は前述の通り。
これからは例えば企業の商業撮影ならば、担当さんの考えるものを形として照明を組み、素早く提案する力が必要になる。
自分の写真を使うことで、企業の利益になるということをアピールする必要がある。今まで以上に
マーケティング
営業
コンピュータなどのスキル
も必要とされることだと思う。
「昔は良かった」昔話にすがるカメラマンは生き残れない
「昔は良かった」と昔話をするフィルム世代のカメラマンが思いの外多い。
私は、3年ほど前では雑誌取材関係をメインとしたカメラマンとしていたが、そのときによく聞いていたセリフです。
「昔は良かった」のは当たり前である。フィルム全盛期の写真撮影という技術は、その場で確認もできず失敗がつきもの、今のような高感度フィルムもなければピント合わせもマニュアル。「確実性」が求められたわけだし、素人が手を出しにくい世界であった。
写真撮影という技術が大衆化した今、値段が下がるのは需要と供給のバランスを考えても当然のことなのです。
過去にすがりつくカメラマンは生き残ることは出来ないし、これからはより厳しい世界になる。
「これからどうするか」がキーワードになるのではないだろうか。
カメラマンという職業は10年後なくなるのか
業務として写真を撮ることはなくならないだろうし、各種コンテンツを成り立たせる素材として写真はなくてはならないもののままだと思う。特に、多メディアにより、よりオリジナリティのある高品質な写真は求められるようになると思う。
私は、カメラマンという職業は無くならないと考えている。
しかし、今まで以上に競争は激しくなり、カメラ以外のあらゆる技術を身につけないと生き残れないだろうし、名指しで「あなたに撮られたい」「この写真事務所に撮られたい」と指名してもらえるようになるかどうかというところが、生き残りの分かれ道ではないでしょうか。
ただ、今以上にカメラマンに求められるクオリティは上がり続け、今までカメラマンとして活動できていた人たちが10年後太刀打ちできない…ということは多くあるはずである。
私の周りでも、写真集を出したりしている名のしれたカメラマンでも「仕事が少ないから」と言ってフリーカメラマンを辞め、サラリーマンとなる人も出てきている。
そして、カメラマンを目指す人はなぜか「お金持ちになれる」と思っている人が多い。確かに超一流のカメラマンはそうだろうが、多くの私の諸先輩方が「お金持ちになりたければカメラマンをすぐに辞めたほうがいい」というように、写真で稼ぐのは並大抵のことではない。
そして、この「売れっ子カメラマン」との二極化はさらに深まるとも考えている。だからこそ我々プロのカメラマンは、日々カメラの技術だけではなく様々なものを勉強する姿勢を崩してしまってはいけないのだと思う。
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