童話劇場 「よさく」
「よさく」
ある日、よさく というそれは美しく、孤高の黒めだかがいました。
ほかにも10匹のめだかがスイスイ泳ぎ、縄張り争いをし暮らしていました。
みんながスイスイ泳いでいる中、
よさくはいつも下の方に身体をはりつけて、地面の砂をつっついて、ごはんをさがしてました
他のメダカが飼い主さんからのごはんを上に上がってパクパク食べているときも、よさくは見向きもせず、
地面をエッサホイサ、ツンツンツン
壁をつっつき苔をムシャムシャ
ひたすら自分のごはんをさがしては食べているのでした。
その姿は野生そのものの、一匹狼のたくましい姿でした
ある日、他のメダカたちが病気でバタバタと死んでいきました。
毎日のようにめだかが姿を消していき、ついには、よさくと、他のメダカの3匹だけになってしまいました。
一匹は、
縄張り争いで位切り、
しゃくれたお口が特徴の赤めだか、よしおと
臆病ですばしっこい、背骨が曲がってるけど
可愛いお目々をした白メダカ、こじろうでした。
よしおはこじろうをいつもイジメて追いかけ、
こじろうはいつも物陰に隠れています。
よしおはごはんをバクバク食べ、この水槽我が物顔でドッシリ構えているのです。
こじろうはいつも周りの様子を伺い、欲も出さず自分をグッと堪える性分でした。
そんな小さい派閥の中、毎日よさくはそんな二人の様子は気にもせず壁の苔をパクパク、地面をつっつきムシャムシャごはんを食べて、一人で眠り、一人でスイスイと過ごしていました。
数ヶ月経って、3匹で居ることになれてきたのか、
いつの日かよさくと他のメダカたちがスイスイ一緒に泳ぐようになりました。
といっても、他のメダカたちが、よさくに付いていくような感じで、よさくは気まぐれだったので、よしおと仲良く泳いでいても、プイッと一人でどこかへ行ってしまうのです。
そんなある日、よさくが卵をたくさん生みました。
じつは、よさくは女の子でした
様子を見てみると、毎日よしおはいつもよさくの後ろを追いかけて
大好き大好きと一緒に泳ぎたかっているのです
こじろうもよしおがいないすきをねらって
よさくはこじろうとの卵もうみました
孤高の一匹狼のよさくが、二人のメダカにモテモテになったのです
よさくは、よしおとこじろうとのタマゴをたくさんたくさん産みました。
ある日、卵から小メダカちゃんがわらわらとたくさん産まれました
喜んだよしおたちは小メダカちゃんを出迎えて
嬉しい気持ちでいっぱいでした。
小メダカちゃんがスイスイ泳いでいると
よさくがガバッ!とすごい勢いで小メダカちゃんを食べてしまいました。
よさくは、小メダカちゃんをごはんと勘違いしてしまったのです
常にごはんを食べてないと気がすまないよさくは、
その後も小メダカちゃんをたくさん食べてしまいました。
よしおとこじろうは呆然として、
珍しく二人並んで、よさくの少し離れた場所で
その様子を見ていたのです。
こまった、よさくちゃん
くいしんぼう、よさくちゃん
おそらくよさくには悪気はないのです
母となった、よさくは、
どこまでも野性的で、自分に忠実な一人の魚だったのです
そんなよさくの非人道的な不意打ちからのがれた小メダカちゃんは、よりたくましく、そしてすばしっこく生き抜いたのでした。
子育てはしなかった、よさくでしたが、
そのおかげかたくましく育っていきました。
そんな小メダカの一人、
よさくソックリな黒色で、
よしおソックリな顔をもつ、
かげまるという名のめだかがいました
つづく
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