サンクトペテルブルク1

ドストエフスキーとグリニッジ・ヴィレッジのサモワール(2/3)

おっと、そういえばニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあるカフェレジオというイタリア系のカフェの奥には、なぜか大きなサモワールがあった。あのカフェでエスプレッソを飲みながらよく知人と話をしたものだ。

そのカフェからほんの2分も歩けばワシントンスクエアに至る。スクエアではストリートパフォーマンスの前に人だかりができ、木陰ではチェスに興じる男達が。そんな広場の角にはとても枝振りのいい楡の木が。その木のニックネームはハンギングエルム。19世紀にそこで公開の絞首刑が行われていたことからその名がついたが、今ではその事実を知る人は少ない。

今、東京に住んで、サンクトペテルブルクとニューヨークという、一見何の関連もないこの二つの街でのことを思い出し、心の中の透明な線で繋いでみる。ニューヨークに住んでいた頃の友人と久しぶりに連絡がとれ、先週東京で再会したことが、私を刺激したのかもしれない。

その男は、サクソフォーンプレイヤーになろうとニューヨークに渡り、夢半ばでふと手にしたカメラに惹かれ、街の写真をとるも、それもまた生活の糧を稼ぐまでにはいたらず、そのままハワイに渡った。しかし、今では日本からハワイを訪れる新郎新婦の記念写真をとって見事に生活をしている。

そんな彼と「ニューヨーク歴史物語」という一冊の本を造ったことがあった。本の中ではニューヨークの歴史上の蘊蓄を語り、彼の写真とありし日のニューヨークを映した古写真を沢山ちりばめた。

ロシアや東欧から流れてきたユダヤ系移民の貧しくも逞しく生きる姿を捉えたジェイコブ・リッツの写真は特に印象的だ。彼こそは、フォトジャーナリズムの先駆けといってもいい。

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