タリン旧市街1

バルト海と地中海を結ぶ古代の夢を追いかけて(1/3)

バルト海。そこは、北の地中海である。古代、地中海を席巻したフェニキア人やギリシャ人は、地中海の東にあるエーゲ海やアドリア海を島伝いに航行した。一つの島が見えなくなると、次の島がみえてくる。古代ギリシャの詩人ホメロスのいう葡萄色の海は、こうして交易ルートとして重用された。それと同じ環境がバルト海にもある。

バルト海に面したバルト三国の一番北に位置するエストニア。そこの首都タリンは旧市街が世界遺産に指定されている。

ここは、昔ドイツはリューベックに本部を置いてバルト海一帯から現在のロシアに至る広範な商圏を我が物にした商人のギルド、ハンザ同盟にとっても重要な交易都市だった。ハンザ同盟は12世紀以降ルネサンス期に至るまで、北ヨーロッパの都市国家をつなぎ繁栄する。バルト海に面した地域や島には、そうした栄華を物語る都市があちこちにあり、タリンもその一つ。

街は船着き場から直接上がった丘に向かってあり、中央にはハンザ同盟の支部もあって、都市はリューベックの掟に従って運営されていた。そんな古都がそのまま保存されている。

ハンザ同盟が隆盛を極めるさらに前、このあたりはノルマン人、すなわちバイキングの交易ルートでもあった。彼らは巧みな操船術で西は現在のカナダ北部にあるニューファウンドランド島から、東はロシア奥地に至るまで、活動範囲を広げていた。彼らも地中海の海の民と同様、島を伝って移動する。


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