デジタル村民のススメ / 限界集落とNFTとDAO
転換期を迎えた限界集落
“人口800人の限界集落がNFTを発行した”
“「デジタルアート×電子住民票」としてのNFT”
2021年末、急速に高まるNFTブームに便乗し、思いつきでNFTを発行したわけでもなく、消滅の危機に瀕した私たち「山古志村」にとって、それはごく自然な流れでした。
17年前、全村避難となった中越地震、行政区としての山古志村がなくなった市町村合併などを経験しながら、ありとあらゆる「村おこし」をやってきました。大震災からの復旧復興の感謝の想いを届けようと、地域の魅力の発信やインターン・地域おこし協力隊等の外部人材の受け入れ、地域資源を活用したイベントや体験コンテンツなどの受け皿をつくり、多くの方が山古志村に関わってくださいました。
それでも、人口は減りつづけました。
年々、人影が少なくなる限界集落を肌で感じながらも、私たちに芽生えたのは「変えてはならないもの、変わらなくてはならないものがある」という気づきでした。
一般的な地方創生と逆行する考え方かもしれませんが、山古志を存続させるために、有名な観光地を目指したり、大規模な産業や農業を振興し、多くの人に来訪してもらいたいという気持ちはありません。
山古志なりの暮らしや文化、アイデンティティに共感する人々を世界中から探し、山古志を守り、共につくっていく仲間をただ増やしたかったのです。
世界で初めて、限界集落が発行した電子住民票を兼ねた10,000点のNFTは、「800人+10,000人」の新しいクニ作り宣言です。
それは、山あいの小さな村「山古志」の価値を真正面から問うことであり、存続か消滅か岐路に立つ私たちにとって、最後の挑戦とも言えます。
はじめてのことに戸惑いながらも、試行錯誤の末、NFTの第一弾セールを実行し、約350人ものデジタル村民が誕生しました。各種メディアにも取り上げていただき、またデジタル村民の約40%の方は、はじめてのNFT購入体験であったことなど、山古志村の未来に対する期待と想像をこえる反響をいただきました。
一方で、この取り組みの本質に共感し、自律的に動き、参画したいというデジタル村民の気持ちに、応えられるような仕組みづくりはどういったものなのか、私たちは新たな課題にぶつかったのです。
村からDAOへ、その葛藤
NFTを発行してしばらくして、NFTホルダーであるデジタル村民が、山古志の仲間として、より自律的にアクションできるよう、一部の予算執行権限を渡すことを決めました。
まず、最初の取り組みとして、「山古志デジタル村民総選挙」と称し、第一弾セールの売り上げの約30%(約3ETH)を活動予算とし、山古志地域を存続させるためのプロジェクトプランをデジタル村民より募集。公開ディスカッションを経て投票することにより、デジタル村民同士が協働して地域づくりを目指すことを示しました。
総選挙をきっかけに、NFTホルダーであるデジタル村民専用のコミュニティチャット内(Discordを使用)に、リアル山古志住民が少しずつ参加していく現象が起きました。そこで私たちは、総選挙はもとよりリアルとデジタル双方でこのプロジェクトを盛り上げていきたい考えをデジタル村民に伝え、「山古志住民に対するNFTの無償配布を問う投票」を実施(結果は、賛成100%、反対0%)。日々、ウォレットやDiscordの使い方をレクチャーしながら、NFTを保有するリアル山古志住民が少しずつ増え、現在では高齢化率56%にもなる限界集落のNFT所有率は1.67%となっています。この投票結果は、リアル村民とデジタル村民の融合を後押しするものとなりました。
今後、総選挙によって選ばれたプロジェクトプランを実施していくなかで、さらにリアルとデジタルの融合を加速させていきたいという想いの反面、山古志のリアルとデジタル村民コミュニティの接続についての難しさ、葛藤のようなものは感じています。
これまで地域づくりは、あくまでも、山古志に住む住民が主体となっておこなってきたのですから。
しかし、今回の取り組みを進める中で、本企画の立案者である山古志住民会議という団体自体が、そもそもDAOのような存在であったことに気づきました。
地位や立場、年齢や性別に関係なく、「想い」に共感した山古志地域内外のメンバーがあつまり、情報共有・検討・相談・試作をし、それをもとに自らの持ち場(役割)に持ち帰って実践していく。震災以降、地域の合意形成の場であり、議論の場であり、学びの場として、あり続けてきました。お互いに、仲間として認めあい、信頼関係を築いていく過程の葛藤や嬉しさ、気づきも体感し合ってきたこの経験が山古志にはあるからこそ、デジタルとリアルの融合に挑戦できるのです。かつての限界集落は、世界に開かれたDAOに向けて小さな一歩を踏み出しています。
私たちはどこに向かうのか
今日、私たちはNFTの第二弾セールとして、Generative patterns "NISHIKIGOI"を発表します。
このNFTに込めた電子住民票の意味合いは、仲良しごっこではない「仲間」としての証です。私たちは、国や性別、地位、物理的制約に関係なく、自分自身の想いや信念ともいえるモノの帰属先を自らが選択できるということが、この山古志の取り組みによって明らかになるのではないかと思っています。いわば、宗教のように、どこに居住していてもかわらず自分自身を形成するひとつとして、自らの帰属先のコミュニティやそこに対するアクション、集う仲間、共通する想いや信念が証として可視化できるようになる未来は、そう遠くはないのではないでしょうか。
その証となるものが、NishikigoiNFTです。
このnoteを書いている私も、山古志にとっては、多くのデジタル村民同様、ヨソモノです。
中越地震をきっかけに山古志に関わり、今年で16年。ヨソモノである人間が、今や地域の住民組織「山古志住民会議」の代表をさせてもらっています。
山古志には、外部からの人やモノ、情報、技術を受け入れ、自分たちなりの咀嚼・ジャッジをし、アップデートしてきたという土壌があり、これは1000年といわれる歴史の中で、中越地震も含めて何度も繰り返されてきたであろうアップデートの賜物なのでしょう。
厳しい環境での切実な暮らしの反面、厳しさを受け入れ、ここで暮らすことを楽しむ工夫を文化として育んできた山古志。風土・土質・水質、先人達の気質など様々な条件から生まれた錦鯉が、この地で誕生して約100年。今や世界とつながる、生きる共有財産となりました。
山古志で錦鯉が誕生し、世界とつながりながら文化を育んできた過程のように、ヨソモノである「デジタル村民」と「リアル住民」との融合は、葛藤を抱え、摩擦をおこしながらも、100年先まで続く新たな文化を築くきっかけなのではないでしょうか。
正直、ヨソモノである私が「山古志」を語ることに、おこがましさを感じ葛藤することはあります。でもきっと、遠慮することはないのだと思います。おこがましく思うこと、遠慮する事の方が無礼だと、彼らは言うのですから。5年、10年先には、リアル山古志住民とともに、同じスピリットをもつデジタル住民が世界中にいることを、私たち山古志村は目指しています。
次なる、デジタル村民として参画をご検討いただける方は、オフィシャルウェブやtwitterにアクセスください。お会いできるのを楽しみにしております。
<オフィシャルウェブ>
<Generative patterns "NISHIKIGOI” by raf >
<Colored Carp by Okazz>
<デジタル村民の方がまとめて下さった、Nishikigoi NFTの購入方法>