世界初。人口800人の限界集落が「NFT」を発行する理由
存続か消滅か、岐路に立つ限界集落「山古志」
こんにちは。山古志(やまこし)住民会議の竹内と申します。私たちが暮らし、活動する山古志地域は、千年の歴史をもつ、新潟県の中山間地域にある小さな村です。平成の市町村合併を経て、現在は長岡市の一部となっています。冬は積雪量が3mになる豪雪地帯であり、平らなところがほぼない起伏の激しい地形、厳しい自然環境と共生してきた地域です。今では世界中に愛好家が増えている「錦鯉」発祥の地でもあります。
17年前、この地を中越大震災が襲いました。全村避難になるほど、壊滅的な被害をもたらし、「もうこの地に帰ってくることは出来ない…」と誰しもが思いました。しかし、私たちは「帰ろう山古志へ」というスローガンを掲げ、数年かけて再びこの地に戻ってきたのです。そのタイミングで、震災復興のために立ち上がった組織が、私たち「山古志住民会議」です。震災発生当時約2,200人いた地域住民は、今や約800人となり、高齢化率は55%をこえました。このままでは、山古志地域は消滅してしまいます。先人から受け継いできた「山古志」が今後も続いていくために、私たちはNFTという新しいテクノロジーを活用し、最後ともいえる挑戦に挑みます。
「デジタルアート×電子住民票」としてのNFT
NFTとは、「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略で、データ管理にブロックチェーン技術を活用することで取引履歴を改ざんすることができない仕組みを可能としています。そして、スマートコントラクトという技術を活用することで、デジタルデータに「唯一性を保証する証明書」のようなものを付帯できるようになったのがNFTです。さらにNFTは、その証明書の所有者を明らかにし、その所有者は自由にNFTを売買可能になります。結果的に、デジタルなアート作品が市場で簡単に売買が可能になり、何十億円で取引されるデジタルアートが生まれています。
長岡市公認で、私たち山古志地域が発行するNFTは、錦鯉をシンボルにしたデジタルアートであり、山古志地域の「電子住民票」の意味合いを兼ねたものです(0.03ETH / 10,000点を発行)。イメージの近いものとして、北欧の小国エストニアが2014年に世界で初めてローンチした「e-Residency(電子国民プログラム)」があります。エストニアの国民や居住者でなくても、オンライン登録すれば国内の一部のサービスを受けられる仕組みになっていて、現在の登録者数は現在8万人を超え、日本からは2500名以上のe-Resident(電子国民)が誕生しています。日本全体で人口減少が進む中、減りゆくパイの奪い合いをしたとて、山古志地域の人口が増えることはまずありません。必要なのは、定住人口にとらわれず人口をシェアし、エストニアが世界中から人材を集めたように、ローカルから世界に目を向けることです。デジタルアート文脈でNFTが過熱する今、すでにグローバルコンテンツでもある錦鯉をデジタルアートで表現しつつ、より社会的な文脈を付加することで、NFTおよび地方創生においても新たな一歩を踏み出すことになると、私たちは考えます。
NFTで、グローバルなデジタル関係人口を創出する
私たちが発行するNFTを、Colored Carpと名付けました。このNFTは、デジタルアート作品(コンピュータアルゴリズムによって生成されたジェネラティブアート)であり、山古志地域の電子住民票を兼ねています。現段階では、既存の住民票やマイナンバーとの接続はありませんが、山古志に共感してくださる仲間としての証です。
世界中からColored Carpを購入してくださった方々が、ブロックチェーン上に可視化されることで、グローバルなデジタル関係人口が生まれ、NFTの販売益をベースに山古志地域に必要なプロジェクトや課題解決を独自財源で押し進めることが可能になります。例えば、山古志地域をフィールドに世界中の子どもや大人がアクセスできる教育プログラムの立ち上げ、大小さまざまな地域課題を解決するためのファンドの設立、空き家や遊休施設を活用したスタートアップの誘致など、積極的に投資を行っていく予定です。同時に、山古志地域を存続させるためのアイデアや事業プランをリアルタイムで、NFTホルダーであるデジタル住民専用のコミュニティチャット内(Discordを使用)で展開し、メンバーからの意見の集約、投票など、可能な限り民主的な手法を取り入れた地域づくりを目指します。近い将来、Colored Carpを持つ方が滞在できるレジデンスの建設や特別な体験提供など、デジタル住民向けにリアル空間でも楽しめる価値づくりにも注力します。
長岡市の人口は約27万人、一方、その長岡市の一部となった山古志地域(旧山古志村)は約800人です。一般的に言われることですが、行政における27万人と800人のモノサシは大きく異なります。人口、予算規模が小さい側にとって、編入合併のメリットがあった一方で、行政機能の縮小や予算執行における優先順位のギャップなどデメリットも当然生まれます。そういった観点で、現状の自治体区分に関係なく、エリアごとに関係人口を創出すると同時に独自財源を確保できることは、過疎地の未来に光を当てることになるのです。
「800人+10,000人」の新しいクニづくり
中越大震災、長岡市への編入を経て、歩んできた17年。多くの課題に直面し、都度挑戦をしてきました。ずっと、新たな山古志をつくろうとしてきていたのだと思います。私たちは、この地に住む住民だけで山古志をつくることをやめ、地域住民800人+10,000人のグローバルなデジタル住民による独自の自治圏をつくりたいと考えています。中山間地域に位置し、過疎の最先端とも言えるような地でありながらも、錦鯉を接点に、世界とつながっていた山古志。価値があるものには、国境や物理的制約は関係ないと言うことを私たちの先輩は教えてくれました。これからの山古志をつくる私たちは、Colored Carpを接点に、より世界に開かれた仮想国家「山古志」づくりを目指します。世界初の試みです。10,000人のデジタル住民の知恵、ネットワーク、資源が集まり、現実の社会に関係なく、独自の財源、独自のガバナンスを構築し、持続可能な「山古志」が誕生します。自然資源や錦鯉、牛の角突きをはじめとする独自の文化を保持し続けるリアルと、物理的な制約をこえて無限に広がる仮想空間の組み合わせで、山古志住民とデジタル住民による共有財産を育んでいく挑戦がスタートしました。
プロジェクトチームの紹介
本プロジェクトは、山古志の未来への挑戦に共感してくださったチームで進めています。一見、無謀な挑戦にも思える構想を楽しみ、地域を知り、知恵と力を出してくれる彼らは、デジタル住民の先駆者のように感じます。未来について夢を語り、ともにアクションできることに、心から感謝しています。次なる、デジタル住民として参画をご検討いただける方は、Colored Carpオフィシャルウェブやtwitterにアクセスください。お会いできるのを楽しみにしております。
〇 山古志住民会議 代表 竹内春華
〇 プロジェクトアドバイザー Social Sculptor 林篤志
〇 プロジェクトアドバイザー / 技術支援 株式会社TART CEO 高瀬俊明
〇 Generative Artist Okazz
〇 オフィシャルパートナー 新潟県長岡市