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今日は何をたべようか。

夕飯に迷うときがある。朝はヨーグルトかグラノーラと決めているし、昼は結構行き当たりばったりだけど大体がそばかうどん。
なぜか朝から夜にかけて食事のグレードをあげたがる。

故に、いつも夕飯に迷う。

昼過ぎに映画を見たり、同僚と食事の話になった日、誰かと飲みに出かける日はあっさり決まるのに何もなく1人で食事をするとまあ決まらない。

スーパーに行けば思いつくだろう。と出かけてみると大半が好物の牛肉を無意識のうちに手に取ってしまうし、良い大人の年齢にもなってきたわけだし毎日毎日、同じ夕飯にたどり着くのもどうかと思うわけなんだが、今夜もまあ決まらない。

1年ほど前に、なんとなく寄った古本屋で購入した池波正太郎さんの食べ物日記を手に取ってみる。
この本は昭和43年1月1日から始まる365日の食日記で食事だけの日記だがそれだけでその日の出来事まで思い浮かぶといったとても粋な本なのだが。僕は食事に困ったときだけこの本を開き、同じ日に池波さんはなにを食べたのだろうと自分の食事のヒントを得るためだけに利用している。

今日は6月1日。本には

六月一日(土曜) 晴
PM、トヨ子と外出、毎日ビル屋上にて江戸城を撮る。神田へ、今村と出会い菓子をもらう。のち花ぶさ。
〔夕〕ビール、酒(三合)、ツキダシ、えんぺら洗い、あわび刺身(美、やわらかし)、ハモの野菜巻、小芋の炊合せ、茶漬け
(トヨ子)カレイのフグ造り、揚げしんじょ、カレイの煮つけ

と書かれている。このように大抵が全く参考にならない。この日はたまたまトヨ子さんの食事まで記されているのにも関わらず全く参考にならない。でもまだ運が良い方で天気しか書かれていない日なんてのもある。
この本を参考に食事を決めた日なんて、たまたまとんかつと記されていた1回だけしかない。
でもこの無駄が好きでいつもこの本に一度頼ってしまう。

話を戻して、今日の夕飯。
ひとり暮らしも長いこと10年近くしているのにレパートリーがいささか少ない独り身の男だなと、自分を哀れみながらもどんどん日が落ちることを気にして焦っている。

毎日違う食事で、しかも常に美味しいご飯をつくる母親は尊敬に値する。といつも感じているんだがどこからそんな発想が出てくるんだろう。母親ネットワークslackのワークスペース内で今日の夕飯についての#ナレッジチャンネルがあるに違いない。なんて少しふざけてみるけど依然として今日の夕飯が決まらない。

きっと僕には料理好きな奥さんが必要だし、毎日の夕飯を決めるよりも、毎日の夕飯を決めてくれる素敵な女性を見つけたほうが幸せになれると思う。

いつかそんな女性と出会うまでは、代わり映えのない男料理も悪くないかと今日も牛肉を焼くことにした。
六月一日(火)晴
PM、いつものように夕飯に迷う。散々遠回りをした末に何も考えず近くのスーパーへ向かう。
〔夕〕麦茶、生ハムのサラダ、冷奴(柚子胡椒が美)、牛肉、米、納豆

さあ、明日は何をたべようか。


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