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【読書感想文】現実か幻か、乱歩が描く心の迷宮『白昼夢』

江戸川乱歩の「白昼夢」は、日常の裏に隠された不思議な世界を描く物語。

物語は、晩春の暑い日の午後、主人公が街を歩いているところから始まります。彼が出会うのは、群集に囲まれた一人の男です。その男は、自分が犯した恐ろしい犯罪について話しています。男は、自分の浮気性の妻を殺害し、その遺体を水に漬けて屍蝋にしたと主張します。そして、その死体を自分の店の前に飾っていると言います。主人公がその店を訪れると、ガラスケースの中に人体模型が展示されていました。一見、ただの蝋細工の人形のように見えますが、よく見るとその中には人間の死体が隠されていたのでした。

この作品のテーマは、現実と幻想の境界線についての探求です。乱歩は、日常生活の中に潜む非日常的な恐怖を描き出し、私たちに現実の見方を問い直させます。また、人間の心理の暗部を掘り下げることで、普段意識しない心の奥底にある闇を浮かび上がらせます。

見どころは、乱歩特有の緻密な心理描写と、現実と非現実が交錯する独特の世界観です。主人公の心理状態が細かく描かれており、彼の恐怖や疑念を感じることができるでしょう。

乱歩の作品は、その独特な世界観と心理描写で多くの人を魅了してきましたが、「白昼夢」は特にその傾向が強い作品です。

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