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【読書感想文】黒魔術師の肖像画が、青年の運命を変える『ラヴクラフト全集 2 Kindle版』

本書の収録作より、ラブクラフト随一の長編である「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」を紹介します。

物語は、1928年のプロヴィデンスから始まります。若き好古家チャールズ・ウォードは、自分の先祖である18世紀の黒魔術師ジョゼフ・カーウィンに興味を持ち、その秘密を探り始めます。カーウィンは、不老不死の術や、異次元の存在を呼び出す術を持っていました。チャールズは、カーウィンの日記や肖像画を手がかりに、その術を再現しようとするのですが・・・

本作のテーマは、「過去の罪との対峙」だと思います。チャールズは、自分の先祖であるカーウィンの罪を知りながら、彼の術に魅了されてしまいます。そんなチャールズの過去の罪との対峙の物語であり、その過程で、人間の本質や歴史の闇に触れることになります。ラブクラフトは、カーウィンの術を科学的に説明しようとせず、神秘的なままにしています。これは、彼の作品の特徴であり、読者の想像力をかきたてる効果があります。カーウィンの術は、人間の理性や常識を超えた存在や現象を描いた、恐ろしい物語です。

この本を読んで、私はとても恐怖と興味を感じました。恐怖を感じたのは、カーウィンの術がもたらす恐ろしい結末や、彼の残酷な行為の描写がリアルであり、想像力をかきたてられたからです。カーウィンは、自分の肉体を変えたり、他人の肉体に入り込んだりすることができますが、それは同時に人間の尊厳や倫理を破壊するものでした。私は、カーウィンの術に魅せられながらも、その恐ろしさに心底震えてしまいました。

歴史とホラーの要素を巧みに織り交ぜた本作。読めばきっと、背筋が凍るようなスリルを味わえることでしょう。

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