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【読書感想文】超自然の影響、日常に潜む異変を描く『宇宙の彼方の色 新訳クトゥルー神話コレクション 5 (星海社 e-FICTIONS)』

本書収録作より、「宇宙の彼方の色」を紹介。

1882年にアーカムの農夫ネイハム・ガードナーの井戸近くに落下した隕石を巡る物語の本書。ミスカトニック大学の教授たちが調査に赴き、隕石が示す不可思議な性質を明らかにしていきます。

この物語の見どころは、隕石が持つ不思議な力と、それが周囲の自然に及ぼす影響の描写です。隕石はビーカーに入れると消滅し、鉛の箱に保管されたかけらも消えてしまいます。また、隕石が雷雨によって何度も稲妻を引き寄せ、最終的には消滅するというエピソードは、自然現象と超自然的な要素が交錯するラヴクラフトの世界観を色濃く反映しています。

本書を読んで私は、ラヴクラフトの描く世界が非常にリアルでありながら、どこか超自然的な要素が絶妙に織り交ぜられている点に魅力を感じました。

隕石という非日常的な要素を通じて、日常の裏に潜む未知への恐れを描き出す本作。ラヴクラフトの短編小説の中でも特に、科学と超自然の境界を探るテーマが際立っています。

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