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【読書感想文】深海の怪物との契約で不死と富を得たインスマスの住民たち。彼らの秘密とは?『ラヴクラフト全集 1 Kindle版』

ラヴクラフト全集に収録されている短編より、彼の代表作の一つである「インスマウスの影」を紹介します。

主人公の青年が訪れたインスマウスの町。この町は、かつては栄えていましたが、今は廃墟と化しています。ホテルの人の話によると、住民たちは、ダゴンとの契約によって不死と富を手に入れましたが、その代償として、魚のような姿に変化してしまったのだそう。主人公は、インスマウスの秘密を知ってしまい、住民たちの狂信的な追跡を受けます。命からがら逃げ出した主人公は、インスマウスの真実を世間に知らしめるために、新聞社に記事を持ち込みますが、誰も彼の話を信じてくれません。

本書のテーマは、人間の知性の限界と、未知なる存在への恐怖だと思います。主人公は、インスマウスの真実を知ることで、自分の知っている世界が崩壊することを体験します。彼は、人間の理性や道徳が通用しない、深海の怪物や海底都市の存在に直面し、その恐ろしさに打ちのめされてしまいました。そんな、人間の傲慢さと無力さを露呈する作品だと言えます。

私は、本書を読んで、ラブクラフトの描くインスマウスの住民たちの風貌や行動に、非常に不気味で気持ち悪いものを感じました。特に、主人公が祭壇に縛られたときに、深潜者や旧支配者が現れるシーンは、衝撃的でした。また、主人公がインスマウスから逃げ出した後も、住民たちが彼を追いかけてくるところなど、絶望的な展開にも衝撃を受けました。

本書は、インスマウスの住民たちの秘密や、ダゴンとの契約の内容など、クトゥルフ神話の世界観が見事に描かれています。また、主人公の心理描写や、恐怖の雰囲気の演出も巧みです。きっと、読んだ後には、インスマウスの影が忘れられなくなるに違いありません。

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