【読書感想文】家じゅうをめちゃくちゃにされても、チュウチュウおくさんは立ち向かう『ピーターラビットシリーズ ⑧ のねずみチュウチュウ奥さんのおはなし』
手に取った瞬間から、ポター独特の緻密で繊細な挿し絵に酔いしれてしまいます。整理整頓が趣味で、いつも綺麗な家に住んでいるチュウチュウ奥さんの穴に、ゴミムシやクモ、そしてよく分からない訪問者が次々と上りこんできます。状況が手に負えなくなり、チュウチュウ奥さんは2週間かけて家じゅうを片付け直すことになります。
肝心のあらすじは、端折ってネタバレといきましょう。いつもと変わらぬ朝を迎えたチュウチュウ奥さんの家に、まずゴミムシが上りこんできます。ついで、勝手なしぐさと独り言を言うクモが雨宿りでやってきて…。そんな無茶苦茶な出来事に翻弄されながらも、チュウチュウ奥さんは懸命に粘り強く掃除を続けることになります。
本作のテーマは、「秩序と混沌の対立」ではないでしょうか。チュウチュウ奥さんの細かい作法と礼節は、混乱と無作法に翻弄されながらも、最終的に秩序を取り戻すのです。これは、人生における困難に喩えられているのかもしれません。
見どころは、やはり出来事の滑稽さと、そこに隠された深遠な意味です。動物たちの言動から、人間社会の縮図が滲み出ているように思えてくるのです。平凡な日常がいつの間にか混乱に陥り、諦めずに粘り強く前に進む。その姿に、無邪気な笑いを交えながらも、人間らしい生き様を重ね合わせてしまったのです。
総評として、本作は間違いなくポター作品の最高峰と評価できるでしょう。ユーモアと哲理が見事に融合され、読み手に豊かな読後感を残してくれます。ポターの筆致は、いつ見ても新鮮な驚きと発見があり、飽きるということは決してありません。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?