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【読書感想文】カリブ海の謎!療養先で繰り広げられるマープル嬢の知恵と勇気の物語『カリブ海の秘密』

療養先で偶然にも殺人事件に巻き込まれてしまうという、ミス・マープルシリーズです。

前年に肺炎を患ったマープル嬢ですが、療養中とは程遠く元気な様子。それでも心配した甥の計らいで西インド諸島に療養で移された彼女は、砂浜とバンガローの間を行ったり来たりする毎日。

本作は、外国で発生した事件ということもあり、警察の捜査が描かれることがほとんどないのが目を引きます。この地においてミス・マープルの名声も届いていないようですね。

さてさて、この地で出会った退役軍人のパルグレイブ少佐という人物。ミス・マープルは、妻を殺した疑いのある男の話を少佐から聞かされました。少佐の話によると、なんでもその男は自殺を装って妻を2度も殺した可能性があるというのです。さらに、少佐はその人物の写真を持っていて、おもむろにミス・マープルにその写真を見せようとしたのですが、なぜか慌てて写真を隠して話題を変え始めました。結局、ミス・マープルは写真を見ることができませんでしたが、事件はその翌朝に起こります。なんと、自室でパルグレイブ少佐の死体が発見されたのです。当初は自殺と思われたこの事件、しかしマープル嬢は、前日の少佐の健康状態からして、病死したのではないかと思わずにはいられません。そして彼女は例の写真も気になっていました。そこで、ミス・マープルはある計画を思いつきます。少佐の遺体を確認した医師のグラハム博士に「昨日少佐に見せた写真を間違えて持ち帰ってしまった」と嘘をつき、病院にある少佐の遺品から写真を取り寄せてもらうことにしましたが・・・。

大富豪と仲良くなったり、予想外の展開があったりと、円熟期のマープル嬢の活躍に恥じない一冊。それだけに、どのキャラクターにも疑惑が尽きず、人間関係の詳細を追っていくだけでも大変でもあるので、シリーズの熟読者にお勧めしたい作品です。

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