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【読書感想文】幸せが約束された未亡人の物語『花の降る午後』

フレンチレストラン経営者・典子の日常とその周囲で繰り広げられる出来事を綴る本書。彼女の周りでは、平和そうなタイトルからは想像できないような、多国籍のギャングたちが巻き起こす騒動が絶えません。こうした背景もあり、初めて本を手に取る読者は、活劇や推理物語を期待してしまうかもしれません。

しかし、実際の物語の進行は、そうした予想とはやや異なる印象です。というのも、ギャングとの対立や立ち回りの部分は、主人公の典子ではなく彼女の身の回りにいる頼りになる男性たちが担当し事件解決してしまうからです。典子自身は、ギャングとの直接的な対立よりも、彼女の生活や恋愛、情事に関するエピソードに焦点が当てられています。そして、その中心には、彼女が心の中で燃え上がる画家との情熱的な恋愛の場面が主軸に置かれるのです。美しい容姿と聡明な頭脳を持つ典子は、多くの男性たちからの支援を受けながらも、自身の人生や恋をしっかりと生きる女性として描かれています。

さて、本作の舞台背景には阪神淡路大震災の後の神戸が選ばれており、その異国情緒溢れる雰囲気とストーリーの進行が独特の調和を醸し出しており、物語のアクセントとしては悪くありません。しかし、冒頭の騒動のような要素を期待して読むと、物語のテンポや焦点にやや驚くかもしれません。しかし、それを超えると、宮本輝氏の繊細な筆致と、人間の心の複雑さを巧みに描写する能力が、この作品の真骨頂となっています。

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