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【読書感想文】運命に立ち向かう少女の決意『レーエンデ国物語』

異世界ファンタジーの魅力を充分に詰め込んだ冒険譚です。物語の舞台となるのは西ディコンセ大陸の聖イジョルニ帝国。主人公のユリアは母を亡くし、結婚だけが人生の目的とされる環境から脱出するために旅に出ます。

旅の道中で呪われた地と呼ばれるレーエンデにたどり着いたユリアは、琥珀色の目を持つ無口な射手トリスタンと出会います。そして、レーエンデの不思議な生き物や植物、美しい景色に魅了され、そこに暮らす森の民と共に生活を始めるのです。

本作の見どころは、ユリアの成長です。政略結婚で親族の意のままに生きていた少女が自分の意志で行動し、友人を作り、仕事を覚え、恋を経験していく様子が丁寧に描かれています。例えば、ユリアが初めて森の民の仕事を手伝う場面では、慣れない作業に戸惑いながらも懸命に取り組む姿が印象的でした。

しかし、平和な日々は長くは続きません。建国の始祖の予言書をめぐる争いが勃発し、レーエンデの存続が危ぶまれる事態となるのです。ユリアは自らの意思で大きな戦いに身を投じていき、その決断と行動は彼女の成長を如実に物語っています。

本書を読んで感じたのは、自分の生き方を選択することの大切さでした。ユリアは周囲の期待に応えるだけの人生から、自分の意志で行動する人生へと転換します。その過程で多くの困難に直面するものの、それらを乗り越えることで自分らしさを見出していきます。

また、本書では多様性の尊重というテーマも垣間見えると感じました。レーエンデの森の民は帝国の人々とは異なる文化や価値観を持っているものの、ユリアはそれらを受け入れ、理解しようと努めます。この姿勢が最終的に帝国とレーエンデの対立を解決する鍵となっていくのです。

総評として、本書は、自分の道を切り開く勇気、多様性を受け入れる寛容さ、そして平和のために行動する決意を読み終わった後も心に残す作品となっています。

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