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【読書感想文】異種文明の出会い、未知の可能性を探る『ネアンデルタール・パララックス 1 ホミニッド―原人―』

物語の幕開けは、ポンターという名のネアンデルタール人物理学者が住む、平行世界の風景から。彼の宇宙では、ネアンデルタール人が進化の頂点に立ち、クロマニョン人は遥か昔に絶滅するという歴史をたどっています。そして冒頭、量子コンピュータの実験中のアクシデントが、ポンターを我々の世界へと転送してしまいます。そんなポンターとカナダの研究者ルイーズとの出会いが、本作のストーリーです。

ルイーズとポンターの出会いは、言葉の壁を超えた科学と好奇心の勝利を象徴しています。意識不明の状態で現れたポンターと、徐々に意思疎通を図るルイーズ。二人はお互いの世界を理解し合うようになります。その過程でポンターの社会構造や法廷の様式など、ネアンデルタール人の文化についても深く知ることになるのです。

特に印象的なのは、ポンターの友人アディカーが彼の無実を証明するために法廷に立つシーンです。このエピソードは、異なる文化間の正義と法の解釈の違いを浮き彫りにする象徴的な場面でもありました。

また、ポンターがなぜ私たちの世界に転送されたのか、ネアンデルタール人の絶滅の理由など、本作の物語には解き明かされるべき謎がたくさんあります。これらの伏線で、今後の展開への期待が、いやおうにも高まるんですよね。

総評として、この物語の魅力は、異なる人種や文化を超えた交流と、科学的な探求を通じて、ネアンデルタール人と現代人の違いだけでなく、共通する人間性にも光を当てている点だと思います。異世界の生物が突如現れたことで、科学コミュニティや一般社会にどのような影響を及ぼすのか、ルイーズとポンターの関係がどのように進展していくのか、こうした要素がストーリーに奥深さを与えているのではないでしょうか。


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