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降り落ちる雨は、黄金色#10

 休日だというのに、クリニックの待合室には色んな人が居た。サラリーマン風の人、綺麗な人や普通な人。私が行った時には独り言をぶつぶつ言う様な異常な人は居なかった。

 帽子を深く被り、 マスクをつけ待合室で名前を呼ばれるのを粛々と待ち、周囲に知っている人が居ないかと心配になった。もしメンタルクリニックに通っている事がバレたら学校で馬鹿にされてしまう。

 弱者は常に攻撃の対象にされる。私はその事を嫌になるくらい知っている。小学生の頃、授業中にゲロを吐いた男の子がいた。次の日からその子はずっと陰口を言われ続け、とうとう名前で呼ばれなくなった。しばらくすると透明人間扱いされ、学校に来なくなった。子供の世界は残酷だ。

 弱い者には容赦ない。誰も生贄になんてなりたくない。些細なきっかけで、ある日教室は生き地獄となる。みんな、それぞれの地獄を乗り越えて強くなった。強くなんてなりたくなかった。弱くても人を思いやれる人間の方がすてきだ。でも現実では、強くならきゃ教室で生き残れなかった。私達は日本生まれの地獄育ち。性格がこじらせてるやつらは、同じ地獄出身。

 私の順番が来たので診察所でお医者さんにありのままを訴えると、鬱病の初期症状と診断された。病名でカテゴライズされると安心する。見えない不安がようやく実体化したみたいだ。これなら闘いようがある。診断書を事務的に作成され処方薬をもらいに提携の薬局へ向かった。そこで薬剤師のおじさんから薬の説明を受けた。

つづく

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