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降り落ちる雨は、黄金色#8

 佳代が学校に来なくなってから、私は本当に独りぼっちになった。学校で話相手の居ない私は、笑い方を忘れてしまった。過度の緊張で、顔の表情がピクピクする。手汗が止まらない。

 ご飯を食べる箸が何も進まない。お母さんの作ったお弁当には、特売で買った冷凍食品がたっぷりと詰まっていた。 何も食べたくない。今日はバナナ一本だけで十分だ。

私はお弁当の中身を、誰にも見つからない様にこっそりと捨てた。野良犬でもいたらいいのに、辺りを見渡しても猫の子一匹といない。これでは生態系に良くない。資源の無駄使いだ。私は要らぬ罪悪感を抱えてしまった。最悪だ。

 それから、移動教室に行くのも帰るのも全て独りでこなした。周囲の会話がノイズに聞こえる。私の体からは孤独の匂いが醸し出ている。そんな、独りぼっちの私を見て嘲笑う声が聞こえる。マジで心が削られる。悔しさのあまり、歯を噛み締めたせいで、口の中が切れて血の味がする。私はこの味を一生忘れない。

今に見ていろ。

 クラスで友人が沢山いて、明るい子はデカイ声で話す権利を持っているかの様だ。それに引き換え私の様におとなしくて、地味な子は目立たない様に遠慮し小声で生きている。

 何も持ってない子が大声で喋ったら、あいつらは正義を振りかざし集団で攻撃してくる。 マイノリティは潰されるのだ。教室内ではそんな暗黙のルールが出来ている。

むかし、テレビでシン・ゴジラの映画をみた。ゴジラは日本に上陸しただけなのに、集団でボコボにされて可愛そうだった。彼は上陸する場所を間違えたのだ。誰もいない無人島に上陸したならよかったのに、私も同じだ。此処にも、居場所なんてなかった。

 見えない重りが、肩の辺りにずっと乗っているようだ。 悪意に満ちた周波数を受信して反吐が出そう。教室の空気が濁ってく。十代特有の焦燥感が集まって、身動きがとれない。窒息しそうな毎日だ。お前ら全員大嫌い。
この日から私は鬱になった。

つづく

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