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無罪モラトリアム

 十代の頃に好きだった音楽をまた聞いている。椎名林檎の「無罪モラトリアム」エレキギターの歪んだ音やせつない歌詞に熱狂した。

高校生の時、周りのクラスメイトは、みんなB'zとかミスチルを聞いていた。当時はインターネットもISDNの時代だったのでネットもできず、好きなことを話せる友達がずっと欲しかった。

 椎名林檎の情報は、ラジオやテレビ、音楽雑誌と限られていた。だから、雑誌の写真を切り抜いてクリアファイルに保管してずっと眺めていた。雑誌のインタビューで椎名林檎がビートルズの中では「ホワイトアルバム」が好きだと答えていた。それから、椎名林檎のルーツになった音楽を片っ端から聞いて満足していた。それは図書室の貸出カードで目にした憧れの先輩が読んでいる本を、背伸びして読む様な行為だった。難しくて分からなくても、背伸びしてる自分に陶酔した。

 三十代になりまた椎名林檎を聞いている。音楽があれば何も食べなくてもいい位、熱狂していた昔の自分に会えた。
それにしても、無罪の紙持ってるおじさんのなんとも言えないこの表情すてき。

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