Twitterで「学生支援緊急給付金」を毎日検索して感じたこと

はじめに

 この記事は、情報工学を学ぶ大学院生が、毎日「緊急給付金」でTwitter検索をしたり、自分自身が申請をしたり、友人や兄弟の申請サポートをしたり、文科省に電話やメールをしたりして気づいたことをまとめたものです。

 結論としては、「福祉の難しさ」をただただ確認する作業となってしまいました。福祉や政策学の関係者にとっては当たり前のことばかりなのだと思いますが、それを学生にとって身近なテーマで確認できたことは、貴重な確認であったと思い、ここに記録を残しておくことにしました。

そもそも、なぜ学生に給付が必要なのか考える

この給付金は、

・家計から自立している学生は、
・コロナの影響でバイトが減少すると、
・学校を中退せざるを得ない状況が想定される

という考えに基づいて行われています。そのため、後述するように様々な要件で学生を選別し、「家計からの自立」「コロナによる影響」「学校中退の阻止が見込まれる」ということを確認したうえで給付されることが前提となった制度設計でした。

 一見妥当なお話に聞こえますが、そんなに単純な話でもありません。まず、コロナの影響で苦しいのは学生以外でも同じで、労働者向け、事業主向けにそれぞれ様々な制度が作られています。これら精度の詳細についてはここでは論じませんが、そもそも学生が苦しいのであれば学生以外も苦しいはずなので、基本的にはこの制度ではなく、労働者・事業主向けの一般的な制度により措置が講じられる方が自然です。この制度について考えるには、そもそも学生であるからこそ、(あえて言うならば社会人と比較した時に)支援が必要だという状況について考えるべきでしょう。

 さらに、上記パターン以外の学生についても支援の必要性について検討し、学生の中で上記を満たす学生が優先的に支援されるべきか否かについても、十分検討されなければなりません。

学生に支援が必要と考えられる理由

 まず、学生だけを抜き出して、特に支援をする必要があるのかという点について考えます。これについては文科省から特段の発表はないので、私の仮説です。少し考えてみると、以下のようなものが挙げられます。

1.新入生等、「これからバイト予定だった」人を救わねばならない
2.貯蓄が少ないために、他の制度の給付を待てない人が多い
3.最後の切り札である生活保護制度が使えない

 まず1.については、今回の制度において新入生はバイト予定の金額を書けばよいとされていることなどから、一定の配慮があることが読み取れます。仕事どころか内定すら持たずに生活をスタートさせる社会人はすくなくても、バイトは見つかるだろうという想定で一人暮らしを始める学生はたくさんいるという状況を考えれば、仕事が決まっていないけれども給付が必要で、全国民一律の給付以外にそれを叶える制度を作るのは難しい(作ったら働くつもりが全くない人がたくさん申請し、制度趣旨に合わない)と思われるので、学生向けの特別な制度で救済するというのはよくわかります。

 つづいて2.についてですが、全国民一律給付の10万円、(この制度より後の発表でしたが)労働者自らが申請できるようになる休業給付など別の制度の給付で十分に救済されるはずの人であっても、貯蓄が少なければそれを活用する前に息絶えてしまいます。そこで、簡易な審査で迅速に給付をしようと考えて制度を作ることを考えたのかもしれません。学生支援機構の給付・貸与型奨学金も申請延長や要件緩和、無利子化などありますがやはり初回振り込みは遅いですから、それまでの間はこの給付金で乗り切ってくださいというのは良い考えだと思います。

 最後に、私が最も大切なのは3.だと思います。世の中には様々なバックグラウンドや事情を持った人がいて、個々の事情など挙げればキリがありません。そのため、どんな制度でもある程度の利用者増や制度趣旨というものがあって、それに合う人に給付が行われます。当然、どうしても漏れてしまう人がいますが、そういう人はどうなるかというと、最後は生活保護制度によって救済されるというのが建前です。建前ですが…。
 しかし、生活保護制度は高等教育就学者の利用を認めていません。稼働能力があるのにそれを活用せず勉強するのはどうなのかとか、他の貧困家庭とのバランスとか、いろんな理由があるのでしょう。知りませんが…。 とにかく、最後の切り札が使えない以上、他の制度で零れ落ちる人が必ずいます。そのため、今回の制度では学校に大きな裁量を与え、とりあえず困っている人なら給付してよいということになっています。事には…なって…います…。 これは、正しく運用されればこの制度の大きな大きな存在意義だと思います。

給付要件は適切だったか

 以上を踏まえ、今回日本人学生に設けられた6つの給付要件を検証します。外国人留学生についてもきちんと考えるべきですが、考慮すべき点も多く、読みにくくなるのであえて外して考えます。

1.家計からの自立要件としての「仕送りが多額でない(目安年額150万円以内)」
 この制度が「学業の継続」を最終目的としていることから、「遊びの為ではなくて、学費や生活費のためにアルバイトしていること」を証明させたかったのかなあと推察します。多くの学生は、

 学費+通学・学用品・実習などの費用+家賃+生活費 を、
 仕送り+奨学金+アルバイト+貯蓄の切り崩し で賄っている

という前提に立って、仕送り部分が多いならバイトが減っても大丈夫でしょうと考えられたのだと思います。私は、方向性としては間違っていなかったものの、150万円という数字が独り歩きした結果、おかしな条件として働いたケースが多かったのではないかと思います。ちょっと考えただけでも、次のような声が聞こえてきそうです。

・医学・薬学・獣医学関連など学費が高額だと、親から300万もらったとしても残額だけで大変な金額なのですが、基準額少なすぎませんか?
・国立の学費で大学の寮に住んでいる場合、150万だけあれば学費と寮費を支払った残額でも充分生活していけるのだから、基準額多すぎませんか?

これらの正反対の意見は両方とも正論でしょう。国がやっている他の奨学金制度には国公私立・通学区分別のルールがあるのですが、なぜかこの制度にはそういう記述がないのです。急いで作った制度とはいっても、もう少し配慮があってよかった点だと思います。

2.自宅外からの通学、または親と別生計で暮らしている
 実家で親と一緒に住んでいるのなら、とりあえず食べるものに困ったりはしないはずだとか、家賃負担は交通費負担よりも一般的に少ないなどと考えれば、理解できる気もしてきます。しかし、この条件についても様々な批判が聞こえてきます。

・親と同一生計だが、学費は自己負担で、家に生活費を入れている
・親の持家に住んでいるが、親からの仕送りはなく、家賃以外のすべてを支払っている
・親と仲が悪く、ほとんど家に帰っていない

これらは多数派ではないかもしれませんが、この制度が家賃保証ではなく学業継続のための給付金なので、この要件はそもそも必要だったのかなあと考えてしまいます。

 そもそも、年150万の仕送りと親との同居なら、同居の方が支援金額としては少ないというケースも地方ならかなりあることでしょう。同居の場合には要件1において一定額を仕送り金額に加算するという程度で十分だったのではないかと思ってなりません。

3.学費に占めるアルバイト収入の金額が多きいこと
 バイトが学業継続のために必要だったか否かを問うています。この制度の趣旨とかなり近い項目に思えます。しかし、条件1・2をよく考えるべきです。条件1・2を満たすのにこの条件を満たさない(=この条件が必要)のはどういうケースでしょうか?
 そして、この要件、目安金額が示されておらず、事務担当者向けのQ&Aでは実質的に「要件5を満たしていることと等価である」と言い切ってしまっています。Q&Aを素直に読むなら、この条件、実質意味などないのです。そんなことなら書かないで欲しかったです。

4.家庭からの追加給付が期待できないこと
 助けてくれる親がいるなら、親を頼れということでしょう。その確認として、親がコロナ関連の諸施策を活用した照明や、収入証明の提出を求めています。
 しかし、「金があること」は「その金で子どもの学業を支援すること」の最低要件かもしれませんが、十分条件ではありません。いくら所得があろうとも、20歳を超えた子どもに経済支援をするか否かなど、親の自由です。親が自由な意思で1円も支援してくれないからと言って、要件から漏れるというのは納得しがたいところです。
 学生としては何ともやるせないこの条件ですが、国としては「学費は基本的に親が払うもの」という前提を崩せない(崩すと他の制度への影響が大きすぎる)ため、この条件が入ったものと思われます。大変残念ですが、これを変えるには国立大学無償化等といった大きな大きな話になってしまうため、仕方なかったとも言えます。
 しかし、ここについても親の収入限度額等はありません。最後は自己申告&大学の判断となります。

5.アルバイト収入が前月比50%減少している
 この給付の趣旨そのものを問う条件です。これを外すことはできないでしょう。もともとアルバイト収入のなかった学生を排除する重要な要件だと考えられます。

6.他の施策の活用
 国の給付奨学金を活用すること、その条件を満たさない場合には無利子貸与の奨学金を活用しているか、申し込みをすることを条件としています。
 この給付はあくまで一時的ですが、コロナの影響はすぐには収まらないかもしれないという4月時点での判断だと思われます。前述の私が考えたこの制度の存在意義の2.にも当たる条件です。
 給付を受け取った後、安定して学業を継続してほしいという制度の趣旨としては納得できなくはないですが、単純な現金給付として考えた時にはかなりの不公平を生む条件でもありました。

・親の収入のせいで給付奨学金が使えず、ただでさえ困っていたのに、追い打ちを受けた。
・借り入れを回避するためにアルバイトをしている学生の努力はどうなるのか。
・給付奨学金制度がそもそも対象外となっている校種(大学院等)では、第一種奨学金限度額の活用がほぼ必須要件となってしまう。

そして、こればかりは仕方のない事ですが、学生が実際に申請手続きを行っている6月上旬現在、ほとんどのアルバイト先では再開のめどが立っています。そのため、4・5月の収入減少分が少しでもカバーされるのであれば、バイト収入の減少による影響の緩和という制度の趣旨を果たしていると考えられてしまうのです。長期的な視野に立って学業継続を考えるという元々の方針は、当初は予測しえなかった状況の変化によって必要性がかなり薄まりつつあります。


 ここまで、6つの条件について順に考えてきました。まとめると、次のような問題があります。

・居住地や校種、国公私立の別などによる経済状況の際はとても大きいが、それらを無視した制度設計のために受け取れない人がいる一方、趣旨に合わない給付も発生している。
・学生本人がどうすることもできない親の収入状況の為に条件6の給付奨学金を利用できないために受け取れない、もしくは条件4を根拠に選考上不利になってしまう場合がある。
・給付奨学金制度対象の要件設定にそもそも問題があるため、その影響がこの制度にも及んでしまい、受け取れない人、不公平な状況などを生んでいる。
・情勢の変化は速いが、制度は作ってから給付までに一定の時間がかかってしまうため、現状に合わない要件がある。


隠れた要件と、受け取れない学生

 ここまで、6つの条件を開設してきましたが、あまり表立って言われない条件が他にもあり、それによって給付金を受け取れない人というのが存在します。

1.校種の問題
 職業開発大学校、気象大学校、水産大学校…。日本には、大学とはちょっと違う「大学校」というものがあるのですが、これらの学校は制度の対象外です。また、ひとくくりに「専門学校」とは言っても、厳密には国の認可の有無によって対象になっている学校といない学校があります。制度上の種々の問題はあると思いますが、これらの対象外となる学校も、社会で意義を認められているわけです。今回、学校への給付ではなく学生への給付であること、一時的な緊急支援であることを考えれば、広く認められても良かったように思います。

2.書類準備期間の問題
 給付を受け取るための大切な要件は、「申請書類をそろえ、申請を提出すること」です。これはとても重要です。
 しかし、今回は緊急支援であり、申請期間は約10~15日程度で、この短さは他に類を見ないものです。決められた枠内で人数を推薦するという制度設計上、閉め切ってしまわなければなかなか推薦を提出できないので、あまり期限を長くすることも制度趣旨に逆行します。ほとんどの添付書類は「省略可」という配慮がなされていましたが、各学校での運用としてはやはりそろえることを要求してしまうのが自然でしょう。
 中でも、該当者にとって最も厄介かつ重要な書類は「非課税証明」です。親の非課税証明を10日以内に取得し、大学に郵送するというのは不可能ではないですが、かなりギリギリの日程になっています。これが間に合わず、20万円ではなく10万円であきらめたという学生もいるようです。例えば、1月以降に親が転居し、学生が親と別居し、学校が紙での提出を求めているケースなら以下のようなやり取りになります。

1.学生が親に依頼
2.親が全住所地の市区町村に郵送で申請
3.親の手元に届く
4.親が学生あてに郵送
5.学生が学校宛に郵送

3.法律が守られていない職場
  給与明細の発行は、ほとんどのケースにおいて法律上の義務です。そのため、給与所得者として働いているのに給与明細がないケースというのは原則考慮しなくてよいのです。
 しかし、どこの世界にも法律を知らない人、知ってても守らない人というのはたくさんいます。申請期間も短く、休業中の勤務先も多いという状況の中、勤務先から給与明細の取得ができなかったために申請をあきらめたという学生もいるようです。
 通帳のコピーで代用できる場合が多いように思うのですが、条件に合わなければ諦めてしまう学生が多いようです…。

不公平な制度

 この制度には、各校ごとに予算額があります。予算を超えた場合、学校が独自の裁量によって優先順位をつけることになっています。Twitterには条件をほとんど満たさなかったけれども受け取れた、条件をすべて満たすけれども受け取れなかったという投稿がどちらも少なくありませんが、多くの場合、条件を満たしても受け取れなかった学生が生じる原因は申請や事務の過誤を除けばこの予算と思われます。
 そもそも、予算はどのようにして各学校に配分されたのかというと、既存の第一種(無利子)奨学金の利用者数を基にしたということです。その場合に考えられる偏りとして、次のようなものが考えられます。

・高校時代の成績で入学時の採用条件が決まるため、偏差値の低い学校では第一種奨学金の応募者が少なく、それによってこの制度の予算が少なくなっている可能性がある
・都市部の大学では自宅外通学者の割合が高く、それに伴ってこの制度の対象者の割合も高いと考えられる
・各大学からの掲示を確認し、必要書類をそろえて申請をするという一連の流れをこなす事務処理能力を持った学生の割合が高い、文系の学部、偏差値の高い学校では申請者が増えると考えられる

 各学校ごとの予算額等は非公表であるため確証を持ったことは何も言えませんが、もしも単純な計算で予算を配分しているとすれば、上記のような事情から予算額に余裕のある学校と、予算を大幅に超過する申請のあった学校が生じている可能性は十分に考えられます。
 各学校は、予算の範囲内であれば条件を満たさない学生であっても支援が必要だと思えば推薦できるという仕組みです。これはあらゆる事情を学校が斟酌し、柔軟な給付を実現する反面、学校ごとの偏りを生みやすい制度であるといえます。

仕送りが少なければ、バイトで生計を立てているといえるのか?

 制度が不公平であると主張する根拠の多くに、「給付金で旅行」「給付金でフィギュアを買う」「給付金でパチンコ行く」など、おおよそ文科省の想定とは異なるであろう使い方をするというツイートの存在が挙げられます。このような需給学生が生じる理由を考えるならば、今回の給付金がなかったとしても学業継続に問題はなかった人にまで給付されていることが要因と考えるのが自然です。例えば、以下のようなケースでしょう。

・前述のとおり、国立大学の格安の寮に入居し、親から仕送りを受けているようなケース(仕送り中心の生活)
・給付・貸与の奨学金によって学費や生活費を賄っており、バイト代は遊びの費用に使っていたケース(貸与奨学金なら国立の一般大学でMAX17.4万/月も借りられるので、将来の返済がつらいのを承知の上ならば十分にありうる)(奨学金中心の生活)
・この制度の申し込み以降に休業給付が確定したケース(制度が後から順次拡充されているため、高確率でありうる。また、その場合でも申請時点では虚偽でなかったため、給付金の返済義務はないと思われる)

 しかし、これらのケースに対して対処することは不可能と思われます。前述の通り基準を改めれば仕送り中心のケースには対処できたかもしれないものの、奨学金(借金の場合が多い)のケースを排除して給付しないことは、後の返済負担のことを考えれば逆に不公平を生んでしまうことにも繋がります。
 また、後から休業給付等がなされるケースにまで対処する場合、重複需給のチェックや返還手続き等がかなりの件数発生し、学校や支援機構の事務負担は相当のものとなります。迅速な給付というこの制度の大きな利点も失われてしまうことになるため、やはり申請時点での状況に基づき給付する方が望ましいと考えるべきでしょう。

10万円か、20万円か? 

 この制度で給付される金額は、

・住民税非課税世帯の場合:20万円
・その他:10万円

と決まっています。ここでいう「世帯」について、文科省は次のようなQ&Aを出しています。

Q:学生本人が住民税非課税であることの証明書を出せば20万円支給になりますか。
A:20万円支給となるのは、原則として学生の生計維持者(保護者等)が住民税非課税であることが必要になります。学生本人が住民税非課税であるからといって、20万円支給となるものではありません。

 これを読んで、親次第だと認識するのは早計です。「生計維持者」が誰になるかが重要だと書いてあります。保護者「等」です。
 上にも書きましたが、文科省では、「基本的には親が費用を負担し、不足分をアルバイトや奨学金で賄う」ということを前提に全ての制度を組み立てています。この前提に立って、上記文章も作られています。
 しかし、学生にお金を出してくれる親ばかりではないでしょう。学生本人が、自分の収入で学費・生活費などすべてをまかなっていて、親とは別居、仕送りは0といったようなケースであれば、どう考えても親は生計維持者とは言えないでしょう。このようなケースにおいて親の存在を根拠に給付金額に差異を設けることは、明らかに不平等です。「親が生きてるだけで損をするから死んでほしい」という発言はさすがに行きすぎかもしれませんが、そう言ってしまいたくなる切実な気持ちは理解できます。
 さらにダメ押しをしておきますと、この制度は大学院生も対象です。国は、生涯教育とか、職業能力開発とか言って、社会人経験者の大学院進学を後押しする政策も問っています(雇用保険からの補助等)。ということは、30とか40で、会社で長く働いてきたような学生も当然この制度の対象者です。それなのに、必ず親の収入というのは、おかしいのではないでしょうか?

 ということで、私は以下のように申請をして、ちゃんと20万円をうけとりました。この件は大学から文科省へ電話確認済みとのことです。

・私立理系大学院生
・大学の寮に入居
・実の両親2名とも会社員、父は非課税ではない
・親からの仕送りは0円
・自分の非課税証明を提出

申し送り事項には、以下を記載しました。

 私の実家は非課税世帯に該当しませんが、私自身は非課税者で、実家から援助を全く受けずに単独で成形を立てています。
 特に大学院生においては第一種奨学金の採用等においても両親の所得は考慮されず、20歳を超えて、さらには社会人経験後の入学をも前提となる中で両親の所得によって給付金額に差異が生まれることには大きな疑問を感じます。
 最終的に大学の判断となるものと承知しており、争いにくくて残念に感じているところですが、世帯の定義や範囲について十分な検討がなされることを期待します。
(国が直接審査するのであれば、赤字も承知の上で憲法違反を争いたいと思っていました。)

 例外として、20歳未満の学生については親権に服する状態にあり、民法上も強い扶養義務(生活保持義務)があるので、この主張は難しいかもしれません。それでも、まったく不可能というわけではないと思います。 

給付金額は足りないのか?

 この制度に対して、「10万・20万ではたりない」という声も少なくありません。これに対しては、制度趣旨に照らして金額が適切であるか、よく検討されるべきだと思います。中途半端な金額を給付して、結局学生は退学してしまったということになれば、単なる税金の無駄遣いです。ここでは、私が最初に上げた給付の趣旨を前提に考えてみます、
 ①については、新入生が4・5月で学業をしながらいくら分アルバイトをするつもりだったのか?という点を考えるべきでしょう。東京の時給1000円前後を前提として10万円なら100時間、2か月=8.5週で考えると週に12時間分の給付、全国平均の900円で同様に計算すると週13時間分になります。確かに、もう少したくさん働ける・働いていたというケースはたくさんありそうです。逆に、20万で計算するとこの倍となるので、週24時間となります。この時間数のアルバイトはかなり辛そうです(例:平日4時間×4日+土曜8時間)。そう考えてみると、金額としては若干不足があったかどうかといった金額なので、非課税の不労所得としての10万円は、わたしとしては充分だったと思います(バイトをしない分自炊を頑張れることによる支出減、また政府からは別途10万円がいちりつきゅうふされていることも考慮できるでしょう)。
 ②として考えると、10万円あれば食費として2か月分が十分に賄えます。公共料金等は猶予制度がありますし、家賃などは多少滞納しても大丈夫(推奨はされませんが、それで追い出されることはないという意味)です。そう考えると、他の給付を待つために10万円というのも、妥当だと思います。唯一、4月なので教科書代等で出費がかさんだという意見はありそうですが、それはコロナの影響が本格化する3月分以前の給与(4月中旬支給分)での支払いという人が大半でしょう。

 私は割と頑張って探していたのですが、これ以上に「10万円ではたりない」という妥当な理由を見つけられていません。後出しではありますが、これを執筆している6月25日現在では、休業給付がなされないケースの救済は他の制度で担保されることに…は…なって…いるという前提に立てば。ですが。これ以上の給付を求めるなら、学生運動ではなく労働運動としてではないかと思うのです。

今後申請する学生に知ってほしい事

1.感染症の影響を受けて経済的に厳しいなら、とにかく申請する。
 6つの条件は、もちろん満たしているならそれに越したことはありません。ですが、この制度の対象は①6つの条件を満たす人と、②その他学校が必要と認める人です。②の記載があるのですから、まずはとにかく申請をすることにつきます。もしこれで支援を得られなかったとしても、少なくとも統計上の申請件数、却下の件数が増えます。これが積み重なれば、必ず後で意味を持ってきます。
 実際、第一次推薦締め切り日に、文科省は全ての学校から申請受付件数や受け付けたが予算不足で推薦できなかった学生の数を聴取しています。これらは必ず二次募集に反映されることでしょう。受け取りが遅れ、緊急支援としての意味合いは薄まりますが、後期分の学費の支払いなどに向けて、10万・20万はとてもおおきいきんがくでしょう。
 次の二次推薦で今回の支援は終わりですが、また冬になって流行が広がれば、再び自粛が求められたり、同様の給付が行われたりする可能性は十分に考えられます。申請には手間と費用が掛かりますが、一人でも多くの困窮学生が申請しておくことは、今回の給付の可否だけにとどまらない、大きな意味のある行動です。

2.書類はできるだけそろえる。揃わない場合でも、代わりになるものを考える
 学校は書類がない場合でも申請を受理し、学生へヒヤリングするなどすることが求められています。申請期間も短い制度なので、書類はそろわなくても仕方ないケースはたくさんあるでしょう。それでも、限られた枠の中で対象者を選ぶとき、書類がそろっている人が多少優先されるのは仕方ないでしょう。
 さらに、申し送り事項への記載すらもないのであれば、学校はわざわざ電話等してきてくれるとは限りません。まずはとにかく申請することが一番ですが、以下の添付書類について、提出できない場合にはその理由を必ず申し送り事項で記載するとともに、可能な限り代用となりそうな書類を添付すべきです。少し考えれば、本人へのヒヤリングよりも代用書類の方が証明能力が高い事はすぐにわかるはずです。学校担当者も、書類を一生懸命そろえようとしたことを考慮してくれるかもしれません。最後に審査しているのは、コンピュータではなく人間です。

・給与明細:勤務先で発行(法律上ほぼ義務)、なければ通帳の写し等を検討
・非課税証明:役所で発行、住民票上の同一世帯なら親の分も本人だけで発行可能、ない場合は、完璧ではないが源泉徴収票などで代用を検討、該当者は生活保護の需給証明などでも可
・通帳の写し:ネット銀行でも画面のプリントアウトを提出する
・小学生証:学校が必ず把握しているので、受給中の旨を申し送りで記載
・賃貸借契約書:再発行は難しい。紛失している場合には、家賃支払いの通帳やカードの写し、公共料金領収証などを検討

3.一部の条件を満たしていなくても、あきらめてはいけない
 私が見かけたケースに、「4月に休業したが、たまっていた有給休暇を申請したために収入が減っておらず、申請をあきらめた」というものがありました。おそらく、5月分の給与明細は申請締め切り後の6月中旬以降の発行になるのでしょう。
 ただ、このような場合、店舗の休業告知、シフト表、業務連絡のLINE等で今月分の収入減少は十分に証明されていると考えるべきでしょう。よほど意地悪な担当者でなければ、事情を書いておけば認めてくれるのではないでしょうか。また、給与明細に有給休暇残日数の記載があるなら、最新と一つ前のものを提出すれば今回の収入が一時的な手段であることも伝わるはずです。
 この制度の提出書類は省略可能で、任意書類の提出も可能です。申し送り事項の記載もできます。しつこいようですが、まずは申請してほしかったと思いました。この方が二次推薦で救済されることを願っています。

4.申請を却下するのは、実は難しいと心得る
 この制度には学校ごとに予算配分があるため、もし予算以上の申請があるのであれば、優先順位をつけて給付を行うほかありません。
 しかし、もし次の二次推薦においてその学校の予算に余裕があったならば、どうでしょうか。多少要件を満たしていない申請書があった時、その申請はどうなるでしょうか。
 答えはもちろんわかりませんが、私の予測は「ほぼ全員給付される」です。なぜなら、この制度の対象者は①6つの条件を満たす学生と、②その他学校が支援を要すると認める学生となっているからです。申請された学生が②に該当しないと言い切れない限り、学校は推薦をすることになるのです。
 本人が「支援が必要だ」と言って申請しているのですから、「あなたには支援が必要ないはずだ」と学校側が根拠をもって言い返さない限り、原則としては推薦されるはずなのです。予算額や次回の配分方法が分からないので何とも言えませんが、「まずはとにかく申請書を出しておく」ことが非常に重要である理由の一つは、この条件②の存在なのです。
 このことは行政のあらゆる制度に共通なので、ぜひ多くの人に知ってほしいと思います。申請を却下するというのは、相手にとって意外とハードルが高い場合があるのです。

文科省の対応の問題

 この制度の設計上の問題についてはここまでかなりの時数を使って述べてきましたが、問題点は運用の方にもあります。

1.ウェブフォームで問い合わせをしても応答がない
 文科省のHPには、ウェブ上で問い合わせを送信できるフォームがあります。また、ある日からこの給付金のページに問い合わせ用のメールアドレスも掲載されるようになりました。
 しかし、これらの手段で問い合わせを行っても、返信が全く来ません。私も、友人も、ツイッター上で出会った方も、それぞれ一週間以上返信を受け取っていないのです。申請期間がこれだけ短い制度なのですから、問い合わせが殺到している状況はお察しするものの、人員を割いてきちんと問い合わせに応答して頂きたいものです。
 学生からの問い合わせは学校へということになっていますが、学校がいつも正しい対応をするとは限りません。学校の対応に疑問を持った時、その苦情を解決するための窓口としての文科省は非常に重要な存在になりうるはずです。

2.電話で問い合わせをすると、「ご意見承り窓口」へ回される
 これはあくまで私が一度だけ試した時の体験ですが、文科省代表に電話して電話交換にこの制度についての問い合わせであることを伝えると、ご意見承り窓口に回されます。制度をまともにわかっていない係員が、なんと私たちと同じホームページを見ながら解凍してきます。これでは、わざわざ電話している意味がありません。少し面倒なことを聞くと、こちらの話をさえぎって「では、○○について聞きたいという事でよろしいですね?」と威圧的な態度に豹変し始めます。意見や苦情の内容を詳細に聞くことすらありません。しぶしぶ上席に確認はしてくれますが、それがいったい誰なのかは謎でした。もうそれ以上会話をする気にもなりませんでした…。

3.情報公開の問題
 この制度、情報の公開が圧倒的に不足しています。一次推薦の予算額やその決定プロセスについての情報は、非常に重要なものですが全く公開されていません。また、予備費からの支出であるからか、根拠となる法令も見つかりません。
 これは、最終的に情報公開請求をしないとダメかもしれないですね…。

4.推薦基準は学校の自由で、原則非公表
 この制度、給付対象の選出は各学校が行い、その時に優先順位をどうつけるかというのも学校の自由です。(成績、所得、出席状況etc...)。そして、この基準が非公表であるがために、自分が不採用になった場合にその理由がわからないばかりか、それが正当であるか否かさえも判断できません。異議申し立て等の機会の保証すらないものと思われます(未確認)。
 税金を原資とする給付において、このような対応でよいものなのでしょうか。文系の方、この点についてはどなたか議論してほしいと思います。

5.HPが突然書き換わる問題
 本制度の詳細を知るほぼ唯一の情報源が、文科省のHPです。ここに掲載されている資料は非常に重要です。
 このページ、トップには更新履歴のような表示があるのですが、実はここには表示されていない更新が複数回行われています。確認されたい方は、学生向け・学校担当者向けの各資料をダウンロードし、ファイル名を確認してみてください。更新日と会わない日付になっている者が複数あります。
 学生と学校との間で「どこの資料の何ページに何と書いてある」かというやり取りを行っている場合、非常に困ります。更新するのであればきちんと更新履歴を示して行うべきです。

今後、給付が必要になる人々

 この制度は、今回一度きりのものです。緊急支援です。しかし、私は後期分の学費が支払えない人が相当数生じることを今から心配しています。

 その理由は、授業期間の後ろ倒しによる夏休みの短縮です。これまで収入があまり減少していないとしても、8月にアルバイトをたくさんいれて後期分の学費を稼ぐつもりであったという人はたくさんいると想定されます。
 4・5月は各学校もスケジュールを数週間ずつ徐々に後ろ倒しする状況で、仮に店舗が休業していなかったとしても追加のシフトを入れることは難しかったと思われます。そのため、幸い収入は減ってもいないため給付を受け取っていないものの、夏の収入源が今からほぼ確定しているという学生が相当数いるのではないかと心配になります。
 この点については学生間で必要性を調査し、場合によっては声を上げて追加の給付等を求める運動が必要かもしれません。

おわりに

 ここまでかなりの時数をお読みいただいた方、ありがとうございました。改めて自分の文章力のなさと漢字変換のひどさを痛感している筆者であります。

 私はここまで批判のようなことを書きましたが、この制度はとても画期的であったと思っています。予備費の活用により迅速に給付が決まったことは評価されるべきでしょう。また、学校の裁量という乱暴な審査には賛否両論あるものの、ここまで迅速に給付を行うには他に手段はなかったように思います。また、福祉系精度を作ると必ず生じる制度の谷間も埋めやすい制度となっている点も非常に興味深いものです。様々な問題点についても、急いで作った制度ですので、ある程度は仕方ないと割り切るべきだと思います。細かな基準についても、根拠を考えて金額を決めるには時間がかかるということだったのかもしれません。

 しかし、だからと言って何でも許されるわけではありません。多少遅くなったとしても、6つの条件を満たしていたにもかかわらず受け取れなかった学生についてはきちんと救済されるべきでしょう。迅速性は失われますが、平等な支給を保証してほしいと思います。それが保証されていると発表されれば、困窮学生は一時的に生活福祉資金を借り入れる等の緊急対応をとることもできるのです。二次推薦が落ち着いた後でも構わないので、文科省または学生支援機構が直接申請を受け付ける等検討し、それを速やかに周知してほしいと思います。

 また、Twitterを見ろとまでは言いませんが、支給基準についての問題点についてはどなたかが気づいていただき、二次推薦時に修正されることを願っています。

 殺到する問い合わせなどについては、毎日Q&Aを更新する等、積極的に問い合わせを減らす取り組みも必要だったように思います。ファイルの更新や問い合わせへの対応などについては平時から研修等して、整えてほしいと思います。

 この記事をきっかけに一人でも多くの学生が給付を受け取れること、さらに制度が事後に正しく検証され、万一同様の給付が再び行われるときにむけてのノウハウが蓄積されること、制度について批判する方々と意見を交換し、よりよい制度について考えるきっかけとなることを願っています。



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